iPS細胞からの生殖細胞分化誘導 | 再生医療が描く未来 -iPS細胞とES細胞-

iPS細胞からの生殖細胞分化誘導

ES細胞やiPS細胞からの体外での生殖細胞分化誘導は、ヒトでは倫理的に研究が難しい生殖細胞形成の有用なモデルとなり得、また、生殖細胞を作れない患者さんに対する究極の不妊治療の手段となり得ます。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のAmander T Clarkらのグループにより、ヒトES細胞およびヒトiPS細胞からの始原生殖細胞(PGC)分化を、ヒト胎児生殖腺間質細胞と共培養することで促進したという論文が報告されました。

iPS細胞からのin vitro 生殖細胞分化誘導は、論文としては、マウス・ヒト関わらず、これが最初の報告だと思います。(マウスでは「Oct4によるヒト神経幹細胞からのiPS細胞樹立 」が1番乗りだと思います。)


STEM CELLS Published Online: 22 Jan 2009
Derivation of Primordial Germ Cells From Human Embryonic and Induced Pluripotent Stem Cells Is Significantly Improved By Co-Culture With Human Fetal Gonadal Cells
Tae Sub Park, Zoran Galic, Anne E. Conway, Anne Lindgren, Benjamin J. Van Handel, Mattias Magnusson, Laura Richter, Michael A. Teitell, Hanna K. A. Mikkola, William E. Lowry, Kathrin Plath, Amander T Clark
http://www3.interscience.wiley.com/journal/121658203/abstract


Clarkらはまず、生殖細胞マーカーとしてよく用いられるVASAと共発現する細胞表面マーカーを同定するために、妊娠第一三半期ヒト胎児の移動期およびその後のPGCにおけるc-KIT, PLAP(胎盤性アルカリフォスファターゼ。未分化ES細胞マーカーであるTNAP(組織非特異的アルカリフォスファターゼ)とは異なる。), SSEA1の発現を調べました。

すると、妊娠5-9週の移動中のすべてのPGCおよび集合した初期のPGCにおいて、VASAとcKITが両方発現していることが分かりました。

また、移動中のVASAポジティブ細胞はPLAPポジティブであるが、PLAPポジティブ細胞のうち少数はVASAネガティブであり、妊娠9週目にはPLAPの発現は見られなくなることが分かりました。

さらに、SSEA1は妊娠5-9週においてVASAと共発現し、セルトリ細胞マーカーであるAMHと発現パターンは似てはいるが、その発現は互いに排他的であり、また、妊娠7週目におけるフローサイトメトリーによりSSEA1を発現する細胞はcKITを共発現していることも分かりました。


次に、ヒト胎児生殖腺間質細胞(以降hFGS細胞と表記)を初代培養して株化し、生殖細胞分化誘導に対する効果を調べました。

なお、この細胞株の遺伝子発現を調べたところ、ライディッヒ細胞マーカーであるCYP19を高発現しており、大部分がライディッヒ細胞由来であることが分かりましたが、セルトリ細胞マーカーであるSRY, AMHも低レベルで発現していました。(生殖細胞マーカーが発現していないことも確認しています。)

ヒトES細胞を、1)マトリゲルコート上、2)hFGS細胞との共培養、3)マトリゲルコート上+hFGS細胞コンディションメディウムの3条件で3日間分化誘導し、cKIT/SSEA1/VASAトリプルポジティブ細胞(未分化ヒトES細胞中にも1%より少ないが存在する)の数を比較しました。

すると、マトリゲルコート上で培養した区では、1-2倍の増加が見られたが、依然として1%より少ないのに対して、hFGS細胞と共培養した場合は、14-19倍の2-4%まで増えることが分かりました。

また、コンディションメディウムを用いた場合ではこのような効果が見られなかったことから、細胞間接着がこの効果に重要であることが示唆されました。

さらに、ヒト胎盤間質細胞、ヒト肝臓間質細胞でも試したところ、これらの細胞でも同様に生殖細胞分化誘導に対する効果が見られましたが、その効率はhFGS細胞を用いた場合が最も高率でした。

3つのヒトES細胞株をhFGS細胞と7日間共培養した後に、SSEA1/cKIT/VASAおよびPLAP/SSEA1/VASAトリプルポジティブ細胞の数を調べたところ、いずれの株でも共培養前には1%もなかったトリプルポジティブ細胞が6-10%見られるようになることも確認しました。

また、この際、培養時間を14日間に延ばすと20%まで増えるものの、21日間まで延ばしてもそれ以上は増えないことも分かりました。


次に、分化誘導7日目のcKIT/SSEA1ダブルポジティブおよびネガティブ細胞の遺伝子発現をマイクロアレイで調べたところ、VASAと同様、生殖細胞マーカーであるPRDM1, DPPA3, DAZLがダブルポジティブ細胞で発現している一方、複数のHOX遺伝子が抑制されていることも分かりました。


次に、インプリンティング遺伝子の発現調節領域におけるDNAメチル化を調べました。

2つのヒトES細胞株(HSF-1, HSF-6)におけるH19, PEG1, SNRPNのDMR(異なってDNAメチル化を受けている領域のこと)について調べたところ、7日間の分化誘導後、DNAメチル化の減少が見られました。

(HSF-1のPEG1に関しては、未分化状態の時で95.7%、分化誘導後でも97.7%DNAメチル化が入っており、これを除く)


最後に、ヒトiPS細胞(OCT4, SOX2, KLF4, c-MYCで誘導したもの)でも同様のことが言えるかを調べています。

まず、ヒトiPS細胞を7日間分化誘導すると、SSEA1/cKIT/VASAおよびPLAP/SSEA1/VASAトリプルポジティブ細胞が8-10%現れたことから、ヒトES細胞の場合と変わらないことを示しました。

次に、上記と同様にインプリンティング遺伝子のDMRにおけるDNAメチル化を調べたところ、ヒトiPS細胞のPEG1とSNRPNでは、由来となった体細胞と同じメチル化パターンを維持していたものの、H19では、リプログラミングの間に高メチル化状態に変化してしまっている(55.4%→92.6%)ことが分かりました。

このヒトiPS細胞を7日間分化誘導すると、生殖細胞マーカーネガティブの体細胞分画ではDNAメチル化の変化が10%より小さかったのに対し、生殖細胞分画では、ES細胞の場合と同様、高メチル化状態にあった遺伝子(この場合はH19)に関してはメチル化の減少が見られず、PEG1でメチル化の減少(-17.5%)が見られましたが、SNRPNではほとんど変わりませんでした。

ヒトES細胞におけるPEG1、ヒトiPS細胞におけるH19での高メチル化は、おそらく培養中に起きた異常であろうと考察しています。

また、ヒトiPS細胞の分化誘導の際に、SNRPNでインプリントの消去が見られなかったのは、使用したヒトiPS細胞において、なにかしらのエピジェネティックなリプログラミングの異常が起こっているせいではないかと考察しています。





正直、最後のインプリンティングの解析の部分、詰めが甘くて物足りないですね。

ちょっと信用できないかも。。

PGCに分化させるとインプリンティングが消去される点については、おそらくPGC自身が持つ能力だと思うので、体外で比較的簡単に再現できるとは思う(というか、Stella-GFPとかで、しっかりインプリンティングが消去されている細胞を選抜すればよい)のですが、問題は、その後の減数分裂の「正確な」進行と、インプリンティングの再構成を体外でどうやったらうまいこと再現できるのか?という点が、体外で卵や精子を作りたい際での大きな問題点になるのではと思っています。





(10年9月24日追加)

滋賀医科大学の今村公紀先生、野瀬俊明先生らのグループにより、成体肝細胞由来マウスiPS細胞からMvhの発現を指標に生殖細胞と推定される細胞を誘導したという論文が発表されました。


Mol Reprod Dev. 2010 Sep;77(9):802-11.

Induction of primordial germ cells from mouse induced pluripotent stem cells derived from adult hepatocytes.
Imamura M, Aoi T, Tokumasu A, Mise N, Abe K, Yamanaka S, Noce T.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20722049?dopt=Abstract


今村先生、野瀬先生らはまず、Oct4-GFP(delta PE promoter)とMvh-RFPの二つのレポーターを持つトランスジェニックマウスの雄から肝細胞を単離、レトロウイルスベクターを用いてOct4, Sox2, Klf4の3転写因子を導入し、Oct4-GFPの発現を指標にiPS細胞を樹立、多能性関連遺伝子であるNanog, ECAT1, Oct4, Sox2, Klf4, Stellaが、ES細胞や生殖系列に寄与できるNanog-iPS細胞と同等に発現していること、Mvh-RFP蛍光では検出できないレベルでしかMvh転写産物が発現していないこと、NanogおよびMvhのプロモーター領域が脱メチル化されている(Mvhは部分的)ことを示しました。

次に、12株のiPS細胞株について、フィーダー/LIFフリーでの培養および胚様体(EB)形成によりin vitroでの生殖細胞分化能を検証しました。

まず、LIF非存在下でゼラチンコートプレート上にiPS細胞をまいたところ、Mvh-RFP陽性細胞の出現がいくつかのiPS細胞株で見られることが分かりました。

iPS細胞株323B6の場合、弱いMvh-RFP陽性細胞がd3で最初に現れ、d10以降に、Oct4-GFP陽性/Mvh-RFP陽性およびOct4-GFP陰性/Mvh-RFP陽性推定生殖細胞によって囲まれるOct4-GFP陽性/Mvh-RFP陰性細胞塊が見られるようになりました。

それに対し、EBとして10%FBS培地で培養したところ、Mvh-RFP陽性細胞はほとんど現れないことが分かり、内因性Mvhの有意な発現上昇も見られないことも確認されました。

しかし、少なくとも3つのiPS細胞株(323A24, A31, B15)では、その頻度は非常に低いものの、球状のOct4-GFP陰性/Mvh-RFP陽性細胞がEB中に形成されることも分かりました。

(なお、これらはいつもEBの外側に現れ、培養中に培地中に放出されたとのこと。)

これらのスクリーニングの結果、Mvh-GFP細胞が最も高頻度に現れたことから、以降の解析ではiPS細胞株332B6を用いました。


次に、以前の研究から、BMP4を産生するM15細胞と共培養することにより、ES細胞からのMvh陽性PGC様細胞の分化を促進できることが示されていたことから、iPS細胞をM15-BMP4細胞と共培養させてみましたが、ES細胞の場合よりも効率が悪いことが分かり、分化支持活性を向上させるために、M15-BMP4細胞に、レトロウイルスを用いてGDNF, 膜結合型SCF, EGFトランスジーンを導入したところ、この細胞(M15-4GF細胞と命名)は、マイトマイシン処理してLIF非存在下でiPS細胞と培養すると、Mvh-RFP陽性細胞の出現を促進できることが示されました。

そこで、M15-4GF細胞の存在、非存在下に分けて、modified 10% FBS medium(m-10% FBS、10% FBS, NEAA, L-glutamine, sodium pyruvate, 2-mercaptoethanol, PS入りのDMEM)もしくはneurobasal medium(NBM、B27, L-glutamine, PS入りのneurobasal medium)を用いてiPS細胞を浮遊培養したところ、NBM中では約d7で少数のMvh-RFP陽性細胞が現れるのに対し、m-10% FBS中では現れないことが分かりました。

また、d21に、Mvh-RFP陽性細胞は細胞凝集塊の中で細胞塊を形成し、これらはM15-4GFの存在に関わらず見られるが、M15-4GFを用いた場合の方がより大きく成長することが分かり、フィーダー/LIFフリー培養の場合と異なり、ほとんどのMvh-RFP陽性細胞はOct4-GFPと共発現しているようでした。


次に、上記の4つの培養条件で培養した細胞凝集塊全体について、RT-PCR解析を行いました。

まず、分化前に発現していた未分化細胞マーカーであるERasは、m-10% FBSでは発現が維持されていたのに対し、NBMでは抑制されていることが分かりました。

また、Fgf5は、m-10% FBSでのみ有意に発現上昇しており、エピブラストへの分化が示唆されました。

移動期前・移動期のPGCマーカーであるBlimp1は、ERasと同様、NBMで発現降下していました。

内因性Mvhは、分化により発現上昇し、m-10% FBSと比べNBMでより高い発現を示し、Mvh-RFP発現と一致しました。

減数分裂前および減数分裂マーカーであるMiliとStra8の発現は、NBMで明らかに誘導される一方、他のマーカーであるMeisetzの発現は、NBMよりもm-10% FBSでわずかに高いことが分かりました。

また、Dmc1の発現は、m-10% FBSでは抑制されるが、NBMでは上昇すること、Sycp1およびHoxA4の発現は、Dazlと同様な様式で分化培養により誘導され、m-10% FBSでは、M15-4GF細胞存在下の方が非存在下よりもわずかに高く、m-10% FBSよりもNBMの方が高いことが分かりました。

これらに対し、後期減数分裂マーカーであるMiwi, CREM, transition protein 1 and 2(TP1, TP2), protamine 1(prtm1)の発現は、4ついずれの培養条件下においても検出されませんでした。

また、メス生殖細胞マーカーであるZp1, Zp3の発現も見られませんでしたが、Gdf9の発現はいずれの培養条件下でも誘導され、Meisetzの発現と同様、NBMよりもm-10% FBSの方がわずかに高いことが分かりました。


次に、ES細胞では、精子形成細胞と同様、Mvhのプロモーター領域が低メチル化状態にあるのに対し、iPS細胞では、Mvhのプロモーター領域が部分的にしか脱メチル化されていなかったことから、ダイレクトリプログラミング間のMvh遺伝子座の不十分な脱メチル化が生殖系列への分化を難しくしているのではと考え、iPS細胞間でのMvhプロモーターのDNAメチル化状態を調べたところ、調べた全てのiPS細胞株において、Mvhプロモーターは部分的な脱メチル化を示し、細胞株間において有意差は見られませんでした。

そこで、以前に報告されたジャームライントランスミッションできるiPS細胞株とできないiPS細胞株についても調べてみたところ、いくつかのiPS細胞株(20D17, 99-2)は低メチル化を示した一方、高メチル化を示すもの(99-3, 103C1)もあるが、これらの全てはジャームラインに寄与できることが示されたものでした。

また、MvhプロモーターのDNAメチル化状態は、iPS細胞の起源とは関係ないことも示されました。

これらより、Mvhプロモーターのメチル化とジャームライン寄与は相関しないことが示唆されました。





推定生殖細胞をソーティングして、インプリンティングに変化が出ているか調べているのかとか、移植して定着できるのかとか気になりますねぇ。。





(11年3月14日追加)

スタンフォード大学のRenee A. Reijo Peraらのグループにより、ヒトiPS細胞から生殖細胞を分化誘導し、ヒトES細胞と比較、~5%のヒトiPS細胞がBMPによる誘導後PGCに分化すること、生殖細胞特異的レポーターを発現するPGCは内因性の生殖細胞特異的タンパク質およびmRNAを発現していること、DAZ gene family遺伝子の強制発現により、iPS細胞から広範なシナプトネマ構造を持つ減数分裂細胞およびACROSINを発現する減数分裂後の半数体細胞が出現することを示した論文が発表されました。


Hum Mol Genet. 2010 Dec 23. [Epub ahead of print]

Human germ cell differentiation from fetal- and adult-derived induced pluripotent stem cells.
Panula S, Medrano JV, Kee K, Bergström R, Nguyen HN, Byers B, Wilson KD, Wu JC, Simon C, Hovatta O, Reijo Pera RA.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21131292?dopt=Abstract


Peraらは、成人線維芽細胞にOCT3/4, SOX2, KLF4, c-MYCを導入することで自前で作製したiPS細胞株(iHUF4、normal 46:XY karyotype)および胎児線維芽細胞にOCT3/4, SOX2, NANOG, LIN28を導入して作製されたiPS細胞株(iPS(IMR90)、normal 46:XX karyotype)に加え、2つのヒトES細胞株(H9、46:XXおよびHSF1、46:XY)を用い、まずBMPs(BMP-4, -7, -8b)で生殖細胞を誘導できるか調べたところ、分化誘導後14日目にはコロニー形態が変化し、生殖細胞特異的タンパク質であるVASAおよびDAZLの発現上昇が見られ、d7およびd14においてそれらのタンパク質は全ての細胞株間で同レベルの発現を示すこと、未分化iHUF4細胞においてもVASAおよびDAZLの低レベルの発現が検出されること、未分化iPS(IMR90)の1サンプルでもVASA発現が見られることも分かりました。

次に、定量RT-PCR解析を分化誘導d0, 7, 14で行い、未分化iPS細胞における多能性マーカーの内因性および外来性のトータルの発現はES細胞と比べ有意に高いが、d14では同レベルに減少することを示しました。

また、分化中、全ての細胞株が内胚葉(GATA6)、中胚葉(ACTC)、外胚葉(NCAM1)および栄養外胚葉(KRT7)のマーカー発現を示し、生殖細胞マーカー(IFITM1, PELOTA, PRDM1A)の発現についても、全ての細胞株で多少の差はあるが同様なレベルでの発現を示すことが分かりました。

なお、未分化の状態でも、iPS(IMR90)がIFITM1を、両方のiPS細胞がPELOTAをES細胞よりも高発現している一方、PRDM1AはiHUF4で他の細胞株よりも低発現しており、RNAレベルでVASAが全ての細胞株で低発現していました。


次に、生殖細胞分化効率を比較するために、VASA:GFPレポーターをそれぞれの細胞株に導入し、分化後d7でGFP陽性細胞の率をFACSで調べたところ、H9およびHSF1は同様(それぞれ2.28%, 2.39%)だったのに対し、iPS(IMR90)およびiHUF4では2倍以上(それぞれ4.85%, 5.27%)の効率を示すことが分かりました。

(未分化状態でのベースラインは同等。それぞれ0.64%, 0.75%, 0.49%, 0.78%)

なお、ウェスタン解析では同様の発現を示したことから、VASAの発現レベルは同様であるが、生殖細胞の数が異なることが示唆されました。

また、VASA:GFP陽性細胞をソーティング後に免疫染色を行い、確かにVASA陽性であること、GFP陰性集団ではVASA陽性細胞が検出できないこと、GFP陽性細胞は陰性細胞よりも生殖細胞マーカー(GCNF, IFITM1, STELLAR, PELOTA、iHUF4ではDMC1とPRDM1Aも)が有意に高発現していること、OCT3/4およびNANOGも発現しており、iHUF4由来GFP陽性細胞ではOCT3/4が有意に高発現、NANOGは両細胞株ともにGFP陰性細胞で発現していること、解析したその他の細胞系列マーカー全てがGFP陰性集団でのみ濃縮されていることが示されました。


次に、同グループが以前に発表した論文

Nature. 2009 Nov 12;462(7270):222-5. Epub 2009 Oct 28.

Human DAZL, DAZ and BOULE genes modulate primordial germ-cell and haploid gamete formation.
Kee K, Angeles VT, Flores M, Nguyen HN, Reijo Pera RA.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19865085

の手法に従い、DAZ gene family遺伝子の強制発現により減数分裂を誘導できるか調べました。

遺伝子導入後、d14まで異なるタイムポイントで細胞を回収し、SCP3およびCENP-Aで共免疫染色を行ったところ、大部分の細胞ではSCP3が検出できないが、全ての細胞株で一部の細胞が点状のSCP3染色(meiotic prophase Iのleptotene)もしくは伸長したSCP3染色(meiotic prophase Iのzygotene, pachytene, diplotene)を示し、SCP3染色はCENP-AおよびDAPI染色と重複することが示されました。

なお、iPS(IMR90)は、H9およびHSF1と同様な点状SCP3染色率(それぞれ7.13%, 9.36%, 7.88%)を示し、HSF1と同様な伸長SCP3染色率(それぞれ4.63%, 4.13%)を示したのに対し、iHUF4は高い点状SCP3染色率(20.86%)を示す一方、伸長SCP3染色率はH9と同等(それぞれ1.23%, 0.75%)であることが分かりました。

さらに、未分化状態およびBMPsによる分化誘導後d14までについてもSCP3染色を調べたところ、驚いたことに、未分化HSF1およびiHUF4(それぞれ19.5%, 23.38%)を含む全ての多能性幹細胞株で比較的高い点状染色率が見られ、未分化iPS(IMR90)およびiHUF4の両方で伸長SCP3染色は顕著にまれであることが示されました。

これらの未分化状態でのSCP3染色が自発的に分化した細胞の存在によるものなのか調べるために、手作業で最も未分化なヒトES細胞似た形態を示す部分と分化細胞を含む部分を分けて再解析したところ、点状のSCP3染色が減り(H9: 2.5%, HSF1: 5%, iPS(IMR90): 1.5%, iHUF4: 3%)、伸長SCP3発現は検出できなくなることが分かりました。

また、BMPsのみの誘導により、点状染色がわずかに増える(H9: 6.3%%, HSF1: 18%, iPS(IMR90): 4.8%, iHUF4: 10.4%)が、伸長SCP3染色は見られないことも示しました。

さらに、両方のiPS細胞株では未分化状態でもまれに伸長染色が見られたのに対し、ES細胞株では見られないこと、H9, HSF1, iPS(IMR90)の核は異なる長さおよび厚さの複数のSCP3陽性stringが見られるが、iHUF4の核は異なるパターンを示し、少数の厚いSPC3陽性複合体を持つことが分かりました。

(これらよりiHUF4は減数分裂第一分裂の初期に停止していることが示唆される。)


次に、DAZ gene familyの強制発現が減数分裂の完了と半数体細胞の作製を促進できるのかを調べるために、遺伝子導入後d14にDNA content analysisを行ったところ、全ての細胞株で同レベルの少数の細胞(H9: 1.6%, HSF1: 1.66%, iPS(IMR90): 1.5%, iHUF4: 1.96%)が1Nであると判定された一方、遺伝子導入していないHSF1でも同様な数(1.34%)が1Nであると判定されました。

また、ソートした1N細胞において16番染色体をプローブとしたFISHを行い、全ての細胞株で、1N集団中に16番染色体を1コピーのみ持つ細胞が検出できること(H9: 19%, HSF1: 21%, iPS(IMR90): 14%, iHUF4: 13%)を示しました。

なお、遺伝子導入していないHSF1細胞では1コピーのみを持つ細胞が検出できないことも示し、DAZ genesの強制発現で減数分裂が誘導されたことを確認しました。

最後に、1N細胞の同じ集団をACROSIN染色で解析し、全ての細胞株(XXのH9, iPS(IMR90)を含む)でACROSINの核周辺の局在が見られ、ソートした1N細胞の35-72%がACROSIN陽性であることを示しています。





なんかデータがすっきりしない論文ですね。。未分化細胞残存のコンタミも気になるところです。。