iPS細胞に関する報道への記者説明およびコメントについて | 再生医療が描く未来 -iPS細胞とES細胞-

iPS細胞に関する報道への記者説明およびコメントについて

毎日新聞社が11日付けで、「バイエル薬品(大阪市)神戸リサーチセンターの研究チームが昨春、ヒトの「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を作製していたことが分かった」と報じた。

これに対しての本学のコメントは以下のとおりである。

・iPS細胞の研究開発については、研究者間、企業間での研究開発競争が現におこなわれているわけであり、今回、報道のあったバイエル薬品以外でも研究開発をおこなっている企業等が世界中で多数あることは予想されている。また、本学でも複数の企業が着手していることを承知している。さらに、研究開発の結果、新たな手法等でiPS細胞の作製がおこなわれていることも考えられることであり、それにより企業は直ちに新しい技術として特許出願しているのも常識である。

・しかしながら、それらの研究開発は、いずれも山中伸弥教授らによるiPS細胞の第1出願に基づく京都大学からの発表を受け、研究に着手していると考えている。今回の報道もその中のひとつの事例であると認識をしている。本学として、それらについて一喜一憂することなく、iPS細胞の研究推進と一日も早い実用化に向けた取り組みに全力を注いでいくことが重要と考えている。

・なお、今回の報道の中で、京都大学 山中教授らが成功したのは、過去の発言などから昨年7月としているが、そのような発表は、行ってはいない。
(京都大学ニュースリリース)

http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_news/documents/080411_1.htm


iPS細胞:基本技術出願済み…バイエル先行で京大見解
ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を、バイエル薬品の研究グループが京都大の山中伸弥教授より先に作成し、作成技術に関する特許も出願済みとみられることに関し、京大は11日、マウスのiPS細胞作成後の05年に山中教授が出願した特許が、ヒトのiPS細胞作成でも基本となる技術を含むため、大きな問題は生じないとの見解を示した。

仮に同社など民間企業が基本技術以外で特許を取得しても、高額な特許料設定は困難だとみているという。特許料が高額になればiPS細胞で治療を受ける患者の負担が増すと心配されている。

会見した松本紘・京大副学長は、山中教授が特許出願済みの技術は、iPS細胞の作成に関連する多くの技術のうち、ヒトの細胞作成にも必要不可欠な基本部分だとの見方を強調した。そして、個人や企業が単独で関連技術すべての特許を押さえるのは無理だが、基本部分以外で特許を取得した企業も、作成の際は京大側の意向を無視できず「法外な特許料にはしづらいだろう」と述べた。ただ特許審査の結果次第で、ヒト細胞作成には山中教授の特許が適用されない可能性もあるという。

京大iPS細胞研究センターの中畑龍俊副センター長は「山中教授は、普通の細胞を(さまざまな細胞に変化できる)未分化の細胞に戻す部分の特許を取得している。そこが一番大事だ」と話した。
(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/science/news/20080412k0000m040094000c.html


バイエル株:iPS細胞報道で上昇し一時、ストップ高
11日の東京株式市場で、バイエル薬品(大阪市)の研究チームが人工多能性幹細胞(iPS細胞)を先行して作成したという報道を受け、バイエル薬品の親会社で、1部上場している独バイエルの株は買い注文が殺到。一時、制限値幅の上限(ストップ高)となり、4日終値比1160円高の9370円を付けた。11日の終値は同1140円高の9350円。バイエル株は、7~10日の取引では値がつかなかった。
(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/science/news/20080412k0000m020076000c.html


iPS細胞 京大、特許の優位性に自信
京都大は11日、バイエル薬品(大阪市)がヒトの万能細胞(iPS細胞)を最初に作った可能性が出てきたことを受けて記者会見した。山中伸弥教授らが06年、世界に先駆けてマウスのiPS細胞づくりを発表し、その前段階でヒトの万能細胞作りも視野に入れた基本特許を出願していることを強調。「他の研究に惑わされることなく、実用化に向けた研究を進める」と、出願した特許に優位性があると主張した。

京都大によると、iPS細胞研究に関する特許は現在、2件が公開されている。このうち基本特許になるとみられるマウスのiPS細胞作製にからむ特許は、05年の出願。体細胞が万能細胞となるように細胞を初期化する因子(遺伝子)を対象とした。製造方法や作り出される細胞も含まれる。当時は、マウスのiPS細胞が作製された段階で、ヒトでの成功はまだだったが、ヒトも視野に入れる工夫を盛り込んだ。

松本紘・京都大理事(研究担当)は記者会見で「iPS細胞を現在研究している機関は、山中教授らの発表を受けて研究をスタートした。世界で初めて第一出願した山中教授の成果に基づくもので、今回(バイエル薬品)もその一つ。今後の取り組みへの影響はない」と話した。
(朝日新聞)
http://www.asahi.com/science/update/0411/OSK200804110086.html


京大「一喜一憂せぬ」バイエル薬品のヒトiPS細胞めぐり
バイエル薬品の研究チームが、京都大の山中伸弥教授に先駆けてヒトiPS細胞を作製し特許を申請した可能性があることについて、京大の松本紘副学長は11日、山中教授がマウスで世界初のiPS細胞を作製した際の特許出願があらゆるiPS細胞の研究開発の基本になるとの認識を示し、「一喜一憂することなく、研究を進めたい」と話した。

松本副学長らによると、京大は2005年に「動物の体細胞を初期化する遺伝子を含む因子と因子を用いたiPS細胞の作製法」を内容とした国際特許を世界に先駆けて出願した。各国での出願は京大が今年6月まで優先権を持っており、近く欧米など約三十カ国で申請する。

「iPS細胞に関する本質」についての特許なので、特定の企業に特許を独占される危険性は低い。しかし、人のiPS細胞については、京大より先に出願されていて認められた場合は、医療応用に必要な特許権が発生する可能性もある。

松本副学長は「バイエル薬品を含む複数の企業が作製に着手していたことも承知しているが、特許については(出願から1年半は未公開なので)出てみないと分からない」という。

競争の激化に備え「特定の企業の特許によって患者が高い治療費を払うことがないよう、実用化に向けた研究に全力を注ぐとともに、企業と共同で知財を管理する体制も検討する」としている。
(京都新聞)
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008041100181&genre=G1&area=K00


iPS細胞で京大が会見、特許の優位性を強調
バイエル薬品(大阪市)が昨春、人の新型万能細胞(iPS細胞)の作製に成功していたことについて、京都大は11日、記者会見を開いた。

中畑龍俊・iPS細胞研究センター副センター長は「山中伸弥教授は動物の種類を限定せず、iPS細胞を作ること自体を発明した」と、特許の優位性を強調した。

特許庁の調査では、今年2月末までに公開されたiPS細胞に関する特許出願は、山中教授と京大がそれぞれ申請した2件だけ。松本紘・副学長は「知的財産が一部に独占され、国民が不利益を受けないようにしたい」と話した。

特許出願は、特許庁に出した後、1年半過ぎると無条件で公開される。申請から30か月以内に翻訳文を提出すれば、海外でも同じ日に申請したことになる。米国だけは出願順でなく、発明した時期で決まる。
(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080412-OYT1T00001.htm?from=navr


バイエル社も、ヒトiPS作成=山中教授より先行か-「影響ない」と京大
外資系製薬会社バイエル薬品(大阪市)の研究チームが、京都大の山中伸弥教授らのチームより先に、新たな万能細胞と期待されるヒト人工多能性幹(iPS)細胞を作成し、特許を出願している可能性があることが11日、分かった。一企業が特許を取得した場合、関連技術が抑えられ、日本の医療への応用に影響が出る恐れもある。
山中教授らは2006年8月、マウスiPS細胞を作成したと発表し、特許を出願しており、京大側は「iPS細胞の本質に関する特許の出願は世界で初めて」と主張。ヒトiPS細胞に関する特許の帰すうは認可する側の判断だとした。
作成したのは、昨年12月に閉鎖されたバイエル社神戸リサーチセンターの桜田一洋センター長ら。論文は今年1月にオランダの科学誌「ステム・セル・リサーチ」(電子版)に掲載された。
同社によると、日本法人としては特許出願をしておらず、ドイツのバイエルが出願しているかどうかは不明という。山中教授らは06年12月、マウスiPS細胞の特許を出願したが、まだ権利化されていない。ヒトiPS細胞については昨年11月に、山中教授らが作成に成功したと発表している。一方、桜田センター長らによるヒトiPS細胞の作成時期は明らかにされていないが、センターの実質的な研究が昨年10月に終わったことなどから、山中教授らより先行している可能性がある。同日記者会見した松本紘京大副学長は「バイエル社を含め、複数企業が研究に着手していることは承知しており、特許出願していても当然だろう」と述べ、影響はないとした。 
(時事通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080411-00000188-jij-soci



ヒトiPS細胞:バイエル薬品先に作成 山中教授抜く 」および「ヒトの万能細胞作製、バイエル薬品が先行の可能性 」の続報です。

まぁ要するに、京大の見解は、山中先生は動物種を限定していないiPS細胞作製法の基本特許を出願しているので、仮に関連特許を抑えられたとしても、患者さんが莫大な特許料を払わなければならないというような状況にはならないだろうから、そこまで心配する必要はないといったところでしょうか。