2014W杯 敗者たちの戦いは終わらない「真の王者トーナメント」 | picture of player

2014W杯 敗者たちの戦いは終わらない「真の王者トーナメント」

ブラジルアマゾン某所



「やあ、君も来たのかい?」
「ああ、こんなエキサイティングなトーナメントがあるなんて聞いちゃ、ね」
「エキサイティングか・・・。ずいぶんと君も物好きだ」
「はは、でもそうじゃないか? W杯の敗者だけをアマゾンの奥地に集めてトーナメントをするだなんて聞いたこともない」
「当たり前さ、こんなことどうやって公表できるんだ」
「そうだな。大会の方式もイカれてる。勝ったチームはここから脱出して、負けたチームは残り続けなきゃならないなんて」
「これはW杯出場国に課せられた義務のようなものさ。第9回のメキシコ大会から開かれている。最後まで残ったチームを我々は『真の王者』と呼んでいる」
「ちなみに前回の真の王者はどこだったんだ?」
「フランスさ。内紛を起こして監督は雲隠れ、選手はボイコットで結局1試合もせずにこのアマゾンに残り続けた」
「なんてひどい・・・」
「彼らはだいぶポーカーがうまくなっていたね」
「トーナメント表を見せてくれよ。大会はどこまで進んでいるんだ?」
「もうベスト4が終わったところだ」
「もうそんなに!!状況はどうなっているんだ!」
「まあじっくり1試合ずつ説明してやるよ」



・A組4位カメルーン対B組3位スペイン
「これは普通にスペインが勝った」
「まあそうだろうな」
「0-3だ。ソングの出場停止が痛かったな」
「スペインの得点は?」
「トーレスが2点、シルバが1点だ。それもトーレスのアシスト」
「さすが、こういうところでは活躍するんだな」
「帰らせるのがもったいない働きだったよ」
「エトーは?」
「怪我だとか言って帰ってしまった」
「大統領令はどうしたんだ」


・C組4位日本対D組3位イタリア
「イタリアが2-4で勝った」
「妥当だな」
「日本もよく攻めたんだがね。地力の差だな」
「しかし2点も決められたのか」
「ピルロとブッフォンが怠慢としか言えないプレーをしていたからね。彼らはイタリアに帰りたくなかったようだね」
「ああ、イタリアには負けたことよりも怒っている女が少なくとも2人いるだろうからね」
「そうだ、キエッリーニの歯型は消えていたよ」
「ちなみにスアレスはこっちだったら出れてたのか?」
「馬鹿言わないでくれ、こっちしか出れないに決まってる」


・E組4位ホンジュラス対F組3位ボスニア・ヘルツェゴビナ
「ボスニアが0-3で勝った。完勝だったな」
「ホンジュラスは弱いな」
「おそらく今大会最弱だっただろう。ただ、それよりもボスニアのスタメンがよかった」
「どういうことだ?」
「売り込む先がないからね。監督の甥っ子や監督に移籍金が入ってくる選手をスタメンで出さなくてすむ」
「なるほど、ベストメンバーが組めたのか」
「監督のスシッチはまだアマゾンに残るようだね。選手たちがあの木に縛りつけていった」
「大きな蚊に何箇所も刺されているようだぞ」
「適切な罰だと思うよ。もう少し様子を見てみようじゃないか」


・G組4位ガーナ対H組3位ロシア
「これはいい試合だった。0-0で延長でも決着がつかず、PKでロシアの勝ちだ。またギャンが外した」
「カペッロもほっとしただろうね」
「年報11億がいていい場所じゃないからな。ガーナは主力の追放が痛かった」
「ムンタリとボアテンクかい?」
「それもそうだが、大会前にアイェウ兄弟も追放になった。アッピアー監督曰く、名前が呼びづらいからだそうだ」
「GKのクワラセイは呼びにくくないのか・・・」
「ほら、文化、違うから」


・B組4位オーストラリア対A組3位クロアチア
「ここは順当にクロアチアが勝った。1-3だ」
「内容はよかったのか?」
「互角だったね。ただ、レフェリーが2本PKをプレゼントしてくれた」
「もしかして、そのレフェリーは・・・?」
「ああ、開幕戦のあのジャパニーズさ」
「彼もこのアマゾンで木に縛りつけられるのは嫌だったんだな」
「オーストラリア人に縛られてるがね」


・D組4位イングランド対C組3位コートジボワール
「これはいい試合だった。イングランドはジェラードのミドルで先制したんだが、でもコートジボワールが2点叩き込んで1-2だった。もちろん、決めたのはドログバだ」
「このカードがこっちで見れたなんて!もっと早く来るべきだった!」
「実際いい試合だったが、監督がよくなかったね、イングランドは。『ドログバ対策は万全』と言っていたようだしね」
「イギリス人の自虐ジョークは本当に理解できないな」
「自分たちでもジョークだか本気だかもうわからなくなってるみたいだ」
「悲しいな、不況が長いせいだろう」


・F組4位イラン対E組3位エクアドル
「退屈なカードだった。0-0でPK。PKでも両者外しまくって結局イランが勝った」
「カウンターチーム同士だからね」
「それにしても限度があるだろう!あのイランのグーチャンなんちゃらはなぜ接触の度にマオ・アサダのように回転するんだ!」
「アサダをリスペクトしてるんじゃないのか?」
「イランにスケートリンクがあるとでもいうのかい、きみは」
「テヘランに去年できたらしいぞ」
「おお、クレイジー」


・H組4位韓国対G組3位ポルトガル
「これは普通にポルトガルが勝った。0-3だった。ロナウドのハットトリックだ」
「バロンドールの面目躍如というところだね」
「実際、彼はほっとしていたようだよ。あのFWのエデルと組まなくてよくなったから」
「彼は出ていなかったのかい?」
「当然だね。間違いに気づくのはいつも終わってからだよ」
「ペペは出ていたのかい?」
「もちろん。彼は韓国人を追いかけ回していたよ。正直、韓国のFWは気の毒だった」
「帰って助かるよ」
「一人だけ残ると言ったんだがね、何するかわからないから飛行機に押し込んだよ」



準々決勝

・A組4位カメルーン対C組4位日本
「1-3で日本が競り勝った」
「カメルーンはなかなか勝てないな」
「ソングが出場停止から戻ってきたんだがね、またこの試合でヨシダにエルボーを決めてしまった」
「ああ・・・」
「まあそれがなくても日本は勝っただろうがね。彼らは3-4-3をやったんだ」
「ザッケローニの十八番だな」
「まあぎこちなかったがね、やっぱり監督のやる気が違った」
「好きなことをやるべきだよな、監督は」


・E組4位ホンジュラス対G組4位ガーナ
「ここはガーナが勝ち切った。0-2だ」
「もう追放者は出てないのかい?」
「ああ、でもギャンは1本PKを外している」
「ホンジュラスはそれでも負けたのか・・・」
「彼らのラフプレーが逆にガーナに火をつけたようだね」
「フランスに同じことをして、ひどい結果になったじゃないか」
「人は中々学べないものだよ」


・B組4位オーストラリア対D組4位イングランド
「ここはサプライズがあった。オーストラリアが1-0で勝ったんだ」
「なんだって!番狂わせじゃないか!」
「いや、でも実際内容でもオーストラリアがよかったよ。彼らは若くてよく走る」
「イングランドも若いんだが・・・」
「ジェラードは年をとっているよ。彼の代わりはいないんだ。彼は人工呼吸器をつけながら走っていた」
「それはさすがにジョークだろう?」
「イングランド流のね。そういえば足を脱臼して『彼のワールドカップが終わった』と言われたフィジコがこの試合から復帰したんだ」
「それもジョークかい?」
「びっくりすることにジョークじゃないんだ。彼は松葉杖をついてこのアマゾンに現れたんだ、1人で・・・」


・E組3位エクアドル対H組4位韓国
「エクアドルの自滅だった。オウンゴールとミスがらみの偶然で1-2で韓国が勝った」
「ついてないな」
「往々にしてトーナメントはそういうことで決まるのさ」
「実力が足りなかったのかい?」
「そうでもない。よく『運を引き寄せるには実力がないと』というが、それは嘘だ。圧倒的な実力差がない限り、不運で負けることは常にありうる」
「確かにね。でも勝っても負けてもたいてい運のせいにはしないだろう?」
「みんな理由を欲しがるんだ。勝者には英雄が、敗者には戦犯が必要だからね」
「じゃあ、あの木に縛りつけられてるのは?」
「ホン・ミョンボ監督だ。グループリーグ敗退からずっと縛り付けられている」
「勝ったのに!それに、彼は火中の栗を拾った英雄じゃないか!」
「そんな過去のことはみんな忘れるんだよ。あとでほどいてきてあげよう」



準決勝

・A組4位カメルーン対E組4位ホンジュラス

「今大会最低の試合だった。両者2人ずつ退場、最終的には9人対9人で試合をやっていた」
「ベースボールの?」
「たちの悪いことにフットボールだ。結局ホンジュラスが勝ったよ。終了間際の得点で0-1だ」
「実力差はあったのかい?」
「9人になって実力もくそもないよ。何がなんだかわからないうちにパラシオスの兄だか弟だかがゴールをねじ込んだのさ」
「カメルーンはこれで決勝か・・・」
「また揉めていたようだね。勝利給ならぬ敗北給がどうとかこうとか」
「乗る飛行機もないのにな」



・D組4位イングランド対E組3位エクアドル
「なんとエクアドルが勝った」
「本当か、スコアは?」
「1-2だ。景気よく攻めるイングランドがパスカットされたところをカウンターで2発だ」
「おお、なんてことだ、イングランドはどうしたんだい?」
「ジェラードが壊れてしまった」
「ああ、ついに・・・誰が代わりを務めてるんだ?」
「ランパードがやっていたんだが、彼もハムストリングをやってしまった。最終的にはミルナーとルーニーが中盤の底に並んでいた」
「どういうことなんだ・・・?」
「わからない。本当にわからないんだ。なぜこうなったのか、我々も、そして彼らにもわからないだろうよ」



決勝

・A組4位カメルーン対D組4位イングランド
「さあ、決勝だ。ここからは一緒に見ようじゃないか」
「ようやく試合を見れる。お、イングランドが入ってきたね」
「すごいメンバーだ。右サイドバックにミルナー、中盤センターにルーニーとウィルシャーがいるぞ!!」
「なんてこった・・・こんな布陣誰にも思いつかないぞ・・・」
「さあ、次はカメルーンが入ってくるぞ・・・おや?」
「どうした?何かおかしなことでも?」
「いや、見慣れない選手がいると思わないか? あの9番だ」
「カメルーンの9番はエトーで離脱したはずじゃなかったかい?」
「そうだ。いないはずなんだ。じゃあ、私が見ているあいつは何者だ?」
「確かに少し色が白いな。ちょっと双眼鏡を貸してくれよ・・・ああ!!」
「どうしたんだ?」
「あれは・・・あれは・・・スアレス!」
「あのウルグアイの噛みつき男か?」
「間違いない!!日に焼けて色黒になっているんですぐにはわからなかったが、歯に血がついてる!!」
「なんてこった!これはどうなるんだ?」
「さすがに止めるだろ・・・いや、国歌斉唱が始まったぞ・・・おい、スアレスも歌ってるけど、彼は一体何を歌ってるんだ? ああ、終わった、次は握手が始まった。でも誰も気づきそうにもない。おいおい、チェルシーでのエトーのチームメイト・ケーヒルとも抱擁してるぞ!君の目は節穴か、ケーヒル!」
「なんてことだ、なんてことだ・・・」
「ピッチに散って行った・・・始まるらしい。笛が鳴ったぞ」
「クレイジーだ、こんなクレイジーなことが・・・」
「はははは!真の王者決定戦にふさわしいじゃないか!!」
「ああ!!!!ルーニーが首元を押さえてうずくまったぞ!!」




to be 絶対に続かない