■南米選手権まとめ■ 進むも地獄、引くも地獄 | picture of player

■南米選手権まとめ■ 進むも地獄、引くも地獄


さて、震災前から決まっていた南米選手権参加だが、工藤さんが内幕について書いてるね。

経緯をまとめるとこんな感じ?

・震災の後、小倉JFA会長が南米に辞退を申し入れ「まじ、無理っす」→南米サッカー連盟会長レオス氏が了承「いや、そりゃ無理だよな。つうか、放射能うつるからくんな。」→アルゼンチンのグロンドーナサッカー協会会長が再考を要請「何言ってんだ!やろうぜ!欧州組のことは心配すんなってばよ、俺がタンゴのリズムでなんとかするぜ!俺に金も入るし!」→小倉会長、FIFAと交渉「なんとかなんないっすかね?」


上の経緯の通り、二転、三転している。参加、不参加様々な意見があるだろうが、ちょっとこの参加について、整理をしてみたいと思う。以下、極端な場合わけをしているので、注意。


■参加

①フル代表

○阻害要因
・J1との日程重複
・別大陸大会なので、欧州所属選手の出場義務なし
・欧州組の休暇があぼーん

○メリット
・本気の場での代表の強化
・震災で落ちた日本イメージの回復(対外向け)
・震災で漂う沈滞ムードの払拭(対内向け)
・グロンドーナご満悦

○デメリット
・優勝、残留を争うJ1チームに影響力が大きい
・拘束力のない欧州所属選手を強制徴収することによる、欧州クラブとの関係悪化
・長期的なスパンでの選手の摩耗

まず、フル代表での参加だが、これは望みが薄そう。優勝争い&残留争いのチームから無差別に引き抜いた場合、リーグの公平性が保たれない可能性が高い。たとえば、日本代表レギュラーで優勝争いに絡んできそうなのが、G大阪の遠藤。それと、鹿島の岩政、伊野波などもこれに該当する。また、残留争いチームはもっとシビア。たとえば、前田がいるかいないかで、磐田は残留・降格が決まる可能性がある。彼らがいるといないとでは、それぞれのクラブは別チームになってしまう。これで逸優勝・降格などしてしまったら、「責任者を呼べ!」というレベル。
また、欧州組にも問題はあり、デメリットにあげた欧州クラブとの関係悪化(ただし、これはFIFAの決断にもよる)がある。また、休みがなくなることによる、長期の性能劣化も見逃せない。たとえば、この冬移籍した岡崎なんかは、去年の1月からロクに休みもないまま夏からのシーズンに突入ということになる。まあ、だいじょうぶそうなんだけどね、岡崎とかは。ただ、その疲労によって所属クラブでポジションを失う可能性もある。それは日本サッカー界にとってプラスになるのか。

と、ここまでデメリットばかりあげてきたのだが、障害が大きい分、メリットも大きい。まずは代表強化。この機会を逃すと、次のワールドカップ予選まで、まともに代表を強化できる機会はほとんどない。最強のチームを招集できるということで、強化の期待値は最も高くなる。また、アルゼンチンは日本での親善試合も割と本気面子で来てくれるので、今回で恩を売る&面子を保ってあげれば、また親善試合の機会が期待できる。まあ、それまでグロンドーナの首がつながってるかどうかは知らんけど。

そして、対外的なアピール面でも効果が期待できる。「おい、知ってるか? 日本では、NINJAが街を支配していて、SAMURAIが原発を刀で真っ二つにして、本田は放射能を浴びてあんな髪の色になっちまったらしい!」「ワオ!エコノミックアニマルならぬパンデミックアニマルだね!」と本気で思ってそうなカリフォルニア在住のミック・マコーミックくん(25歳、無職)あたりの誤解を解くためにも、「日本は強い国!」(東京在住の目がでかくて、歌のうまいおっさん)ということをアピールしていかなければならない。いや、冗談抜きでこれくらい思ってる奴ら絶対いるから。俺だっていまだにインド人は手が伸びると思ってるし、志村けんは死んでると思ってる。風評ってのは、無知が源泉。ヘビが怖いのは生活が想像できないから。そういうのを払拭するいい機会になる。

最後の対内的なアピールは言わずもがな。国の代表がめっちゃ好きな日本にとって、サッカー日本代表は大好物。これで事態が好転するとかではないけど、避難する人たちが少しでも誇りと元気を取り戻す一因になれるかもしれない。


②欧州組のみ

○阻害要因
・別大陸大会なので、欧州所属選手の出場義務なし
・欧州組の休暇があぼーん

○メリット
・本気の場で、代表を一部ではあるが強化できる
・震災で落ちた日本イメージの回復(対外向け)
・震災で漂う沈滞ムードの払拭(対内向け)
・とりあえずグロンドーナの顔を潰さない

○デメリット
・拘束力のない欧州所属選手を強制徴収することによる、欧州クラブとの関係悪化
・長期的なスパンでの選手の摩耗
・欧州組だけで出ることで本当に強化になるのかという疑問

一見、やりやすそうなで、実際そうなりそうな道筋が出てきているこの案。欧州組への負担は大きいが、それはフル代表でも一緒。グロンドーナの面子も一応保てて、国内・海外組なんか知ったことではない外国の連中に対するアピールにもなる。もちろん、対内的な発奮要因にもなりえるだろう。

ただし、欧州組だけでどれだけチームを作れるのかが疑問。以下はサンスポに載っていた欧州組。(馬場も入っていたが、テストで落ちたはずなので外した。いるの? 焼肉食べてるの?)

GK
川島永嗣、林彰洋

DF
相馬崇人、長友佑都、槙野智章、内田篤人、安田理大、吉田麻也

MF
松井大輔、阿部勇樹、長谷部誠、細貝萌、家長昭博、本田圭佑、香川真司、赤星貴文、瀬戸貴幸、佐藤穣、和久井秀俊、満山浩之

FW
坂田大輔、矢野貴章、カレン・ロバート、岡崎慎司、森本貴幸、宮市亮、本間和生

全部で27人。ほかにもいるかもしれんが、知らん。ここから23人となると、かなり選択肢が狭まる。まず、赤星、瀬戸、佐藤、和久井、満山、本間という、普通の人だったら「誰それ?」という知名度の人たちが、代表でプレーできるレベルなのかわからない。俺も赤星と瀬戸くらいは知ってるが、他のひとたちはしりましぇん。まず、彼らを除外すると22人。足りません。選択肢ゼロ。内訳も、まずキーパーが1人足りない。そして、DFも足りない。阿部をセンターバックとしてかうんとすればぎりぎり3人センターバックがいるが、なぜか左サイドバックは3人。うっちーが!俺のうっちーが過労死してラストギグしちゃうよ!MFはそれなりか。ただ、FWは組み合わせに苦労しそう。

というわけで、人数としてはそれなりに揃うのだが、組み合わせがだいぶしっちゃかめっちゃかになる。これにアメリカ、アジアを加えても、焼け石に水か。そもそも、FIFAとの交渉のテーブルに乗ってないので、勘定に入れてない可能性が高い。

こういう状態でチームを組んで、果たして強化になるのだろうか? 4年後の南米での大会のシミュレーションということで、個人としては「いい経験」になるのだろうけれども、チームとしてまとまったトライが行えるかというと、それは中々難しそう。


③若手のみ

○阻害要因
・U-22の日程と重複??
・J1で主力の選手の徴用

○メリット
・ロンドン五輪に向けての強化
・震災で落ちた日本イメージの回復(対外向け)
・震災で漂う沈滞ムードの払拭(対内向け)

○デメリット
・五輪代表を強化することにはたして意味があるか
・惨敗によるサッカー熱の低下
・グロンドーナの顔を潰す

最も障害がなさそうなのが、この案。メキシコもU-22を検討してるというし、あながち的外れでもないのでは。
ただ、デメリットのところにあげる五輪代表の強化という面はどうなのか。そもそも論的な話も多少含む。俺は短期的に五輪に出場して結果を残すという目標をかなり疑問視している。現代表においても、五輪経験者は多数いるが、その経験がプラスになっているかというとかなり疑わしい。A代表にあげるべき人物が五輪で使い倒されていたり、特異な人間力戦術のもとでその後の方向性を見失っていたりと、路頭に迷う人多数。また、近年ではアテネ、ペキンとふがいない成績で、出る意味があるのか、と。

また、J1で主力になりつつある選手を呼ぶのも困難。宇佐美、永井、東、オードリー若林などはチームの背骨を担う人材になりつつあるので、そういった選手を呼ぶことが出来るのか。そして、香川。エースと呼べる選手だが、怪我明けで五輪に出ることをドルトムントは承諾するのか?

最後に、グロンドーナが納得しないというのが大きな障害になる。工藤さんの記事にあるように、高値でアジアに放映権を売却した経緯があり、おいそれと若手のBチームを出せる状況でもない。アルゼンチンサッカー協会との今後とグロンドーナの懐具合を考えると、簡単に出せる結論でもない。


■不参加

○阻害要因
・とくになし

○メリット
・J1チームに影響なし

○デメリット
・代表の強化の場を失う
・震災で落ちた日本イメージ回復の機会を失う(対外向け)
・震災で漂う沈滞ムードに拍車(対内向け)
・グロンドーナ大激怒&良好なアルゼンチンサッカー協会との関係にひび

一番軟着陸できそうに見える案。震災があったということで世間の同情が引けるし、あのマラドーナでも「ま、しゃーないドーナ」と納得するかもしれない。J1とのバッティングも避けられるし、一番無難な対応といえる。

ただ、内向き的にはしゃんしゃんで終わるこの案も、対外的にはかなり波乱を含む。まず、グロンドーナが完全に面子を潰される。上で書いたように、それは今後の日本サッカー協会を見ると、なかなか取れる選択肢ではない。FIFA内で地位を保つためには、南米を味方につけるというのは重要なロビー活動の一つである。

そして、この不参加決定による日本の沈滞はかなり深刻だ。対外的にも「やっぱりダメか」という印象を与えてしまうし、対内的にも発奮の機会を失う。今の日本に必要なのは祝祭なのだ。我を忘れられる一秒、二秒が、とても重要なのだ。「またか」という自粛ムードが広がることが与える影響は、決して限定的なものではないだろう。



○まとめ

進むも地獄、引くも地獄という状況に置かれた日本だが、上に書いた事情から見ると、おそらく参加すると思う。参加の①フル代表と②欧州組の折衷案のところに落ち着くのが妥当なのではないか。ていうか、どうもその方向っぽくなったね 。落ち着くところに落ち着くもんだ。各チーム1人ずつとかになるのかね。とりあえず、この選手権に参加することで、代表の強化機会をえられたのはとてもよいこと。また、日本人が夢中になれる材料が増えたのもすごくいいこと。過度な自粛はただの保身でしかない。外部的要因がメインだったにせよ、こういうことになったのは喜ばしいね。

つーか、どうせだから、とっちゃおうよ、南米選手権。めったに見られない二大陸チャンピオンになったら、原発なんて軽く吹っ飛んじまうぜ?(吹っ飛んだらまずい)