10番を背負う者たち ~あなたその服似合わないわね・・・~ | picture of player

10番を背負う者たち ~あなたその服似合わないわね・・・~

みなさん、おひさしぶりです。
とんでもないことが起こりました。
まだ安否のわからない人が近親者にいられる方の心中お察しします。

ただ、ここは通常通りの調子で、まったく関係ない更新をします。
下手なお悔やみの言葉も当事者にはあまりにも遠い。
ここを見て「しょうがねえなあ」と少しでも笑い、今を一瞬忘れられる人がいることを願います。
それが自分にできるせめてもの貢献です。

以下、更新。




10番と聞いて、どんな印象を持つだろうか? 華麗なテクニシャン? 重厚なゲームメーカー? それとも「あの人、10番でずっとベンチだけど、監督も文句言えないんだよなあ・・・」という牢獄ボス10番?

サッカーにおいて、10番は象徴的な番号だ。ペレ、プラティニ、ジーコなどチームの中心選手がつけることが多い。10番をつけた選手のキャラクターによってチームの性格が決定付けられたり、「○○のチーム」という呼ばれ方をすることもある。そのように、10番と言うのは重要視されてきた番号なのだ。
ただ、固定番号制が始まってから顕著なのだが、最近は「あれ・・・? あいつが10番なの?」って選手が10番をつけてることも多いんだ、な、ギャラス(アーセナル時代)! 「ていうか、10番タイプじゃないよね?」という選手が10番をつけることもあるんだよ、な、ラサナ・ディアラ! あと、ルパテッリ。お前なんでキーパーなのに10番つけてたんだ!

また、9番も特別な番号だ。試合を決めるストライカーとして、そのチームのエースの看板を背負う。歴代の選手を見てみても、そのゴールで幾度となく試合をひっくり返してきたスナイパーたちがそろう。
ただ、最近ではやっぱり番号の概念が希薄で、スルーパスの達人&年間ゴール数1くらいのデ・ラ・ペーニャがなぜかエスパニョールで9番を背負っていたりする。

こういう妙な状態を見ると、そこはかとない違和感で勃起困惑してしまうのだが、さて、適切に番号は今までつけられていたのだろうか?
特にワールドカップではどうだったのか。選手にとっては一生に一度の晴れ舞台。似合わない番号をつけられた選手の心中を考えると心が痛む。あたい、フリルのドレスなんて着たくないの!
そんな不幸な人が誰だったのか。近年のワールドカップ時に、特別な10番&9番を強豪国&ジャパンで誰がつけていたかというのを調べてみた。下の表をごらんあれ。


picture of player-10番


picture of player-9番




ぱっと見ると、そうそうたる面子がそろっている。ただ、中には「おや?」と思う人もけっこうな数いることがわかる。国別に見ていってみよう。


■ブラジル
9番はかなり妥当な選手がそろっている。94年のジーニョがちょっと変だが、その頃の2トップのロマーリオが11番を好み、ベベットが7番をつけていたため、こうなった。他に関しては異論がないだろう。3大会9番を背負ったロナウドはやっぱり偉大だったんだなあ。10番も割と妥当。カカ、ロナウジーニョ、リバウドなどはもちろんつけてしかるべき選手たち。ただ、94年のライーは不本意か。元々10番的な選手を作らない戦術で、ライーはひたすらベンチを暖めた。そして、90年、シーラスさん。京都にいたシーラスさんです。あのもっさりしたプレーぶりが印象に残っているわけですが、チームの早期敗退も受けて、「ブラジル史上最低の10番」と呼ばれることもあるようで。お元気ですか。


■アルゼンチン
かなりな妥当性である。10番はマラドーナ、オルテガ、リケルメ、メッシと頷かざるを得ない面子。9番バティストゥータ、クレスポ、イグアイ~ンと妥当な面子。バティも3大会9番背負ってる。唯一、デゾッティが微妙。カニーヒアがなぜか8番を背負っていたので、そういうことなのか。妥当すぎて、これ以上いうことがない。もっと面白10番をつけて欲しい。14年はまさかのマスチェラーノ10番とかで、度肝を抜いて欲しい。誰の、って話だけど。


■フランス
ジダン以外はてきとーである。特に、2010年になぜゴブが10番を背負っていたのかは謎だが、よくわからないことはドメネクのせいにしておけばいいので、フランスは楽である。9番も適当で、アンリもトレセゲも一回もつけていない。まあ、それぞれ好む番号があるからなのだろうけど。その恩恵を受けたのがシセ。2回も9番をつけている。ただ、02年は直前で骨折。10年はノーゴールと期待にはこたえられなかった。また、ゴブは06年に9番もつけている。どんだけドメネクに愛されるゆるふわキャラだったのだろうか。


■イタリア
かなり謎が多い国である。90年には10番に守備的な潰し屋のベルティ、94年には9番にDFタソッティ、98年にはアルベルティーニが9番をつけている。といっても、この国の番号のつけ方はかなり特殊。ポジションごとにアルファベット順で機械的につけていく、というやる気がさっぱりないつけ方。だから、試合に出ていた94年シニョーリが20番だったり、98年ヴィエリが21番だったりする。94年の例外でバッジョが10番、バレージが6番になったあと、02年から普通のつけ方にしたっぽい。あと、10年のディ・ナターレ10番は今頃気づきました。ねーよ。不思議な国だ。


■スペイン
イタリアとは違った意味でやる気が感じられない国である。まず10番が適当すぎる。94年のバケーロ、98年のラウル、02年のトリスタン、06年のレジェスといずれも「見当違い」としか言いようがない。そして、10年セスクはレギュラーじゃなかった。また、9番も適当で、94年にはなぜかグアルディオラが背負っている。なんだこれ。ただ、9番は最近フェルナンド・トーレスに背負わせているので、改善しようという気はあるのだろうか。ただ、背負ってからポンコツになってしまいましたが。呪いだ!


■ポルトガル
彼らの場合は意図はわかるのだが、結果が伴わないという不幸な話である。10番の06年ウーゴ・ヴィアナ、9番の02、06年のパウレタなどに期待したのだが、さっぱり鳴かず飛ばず。「あれ?魔の番号なの?」と逡巡しているうちに、なぜか10年にはダニーに10番をあげてしまった。結果が伴わないと迷走するという典型的な悲しいパターンである。


■オランダ
ロジカルな戦術をとる国であるがゆえに、番号もかなりロジカルである。ベルカンプ、セードルフ、スナイデルなど攻撃のキーマンに10番を与え、ファン・バステン、クライファート、ニステルローイ、ペルシーなどのストライカーに9番を任せている。唯一の例外は94年のロナルド・デブールくらいか。この間フォーメーションがウイング+ワントップ+シャドーでほぼ固定しているのも大きいかもしれない。意外とまじめだなあ、オランダ人。


■ドイツ(90年は西ドイツ)
お堅いお国柄からは想像も及ばないほど適当である。10番は「俺が、俺が」のマテウスが抜けて以来、迷走中。98年のヘスラーはともかく、リッケン、ノイビル、ポドルスキーと「誰が考えたんだ、この番号の振り方」というレベル。この間10番をつけるべきだったバラックが好んで13番をつけ続けたということも大きいのかもしれない。ただ、9番については適当すぎる。リードレ、ヤンカー、ハンケ、キースリングなど、「お前ら元々ほぼ構想に入ってないじゃないか」という選手になぜ9番をつける。ただ、「番号なんて飾り」というゲルマン民族の鉄の合理性がいかんなく発揮されてると言えなくもない。だから、嫌われんのよ。


■イングランド
このチームはフォーメーションが大きく影響している。ほぼすべての大会で4-4-2フラットなので、元々10番的な選手を置くポジションがない。なので、10番がストライカータイプというきわだった特異性を持ったチームである。ルーニーが10番と9番をつけているのも、単に2トップで割り振られた番号をつけただけのような印象。本来なら、ガスコインとかジェラードとかつけるべき選手はいたんだろうけどね。


■日本
わが国日本は異常なまでの律儀さである。10番にはゲームメーカータイプを、9番にはストライカーを必ず置いている。サッカー後進国だった日本が「サッカーとはこうあるべき」という理想があり、細部まで非常に律儀に先進国のしきたりを遵守しているように見えて面白い。例外は02年の中山。本来10番をつけるべき中田英が「まじ10番とかありえないっしょ」と言ったかどうかは定かではないが、7番をつけていたため、宴会部長盛り上げ役の彼に白羽の矢が立ったということだろう。この人事は非常にうまかったと思う。


さて、各国見てきたわけだが、ワールドカップ時の様々な悲喜こもごもが想像できて非常に面白かった。ほとんどの国がびっくりするほど妥当な面子が多かったのだが、イタリアの機械的な振り方、スペインの予想通りの適当さ、ドイツの予想に反した適当さなど、見るべきところが多い。分類すると、ジダンやロナウドのような1.妥当型、アルベルティーニ、ラウルのようなチーム特有の2.お国柄型、中山のような3.チーム事情型の3つに分けられるのだろうか。14年にブラジルのピッチに誰が10番&9番をつけているのかということを見るのも面白いだろう。

個人的には、この中で最も不適当(不幸)な10番と9番を上げるとすれば、ゴブではないか。チーム事情に翻弄、すさまじい混乱の中で両方の番号をつけられ、そしてどちらの大会でもさほど目立った活躍はできていない、ということで、大河のようなワールドカップ歴史に翻弄されたと言えるだろう。逆説的に言えば、ここ近年のワールドカップの最大の主役がゴブと言えないこともない。ドイツと南アのワールドカップは、ゴブのためにあった!あとドメネクのために!


そんなわけはない。