■戦評■2010年W杯アジア最終予選 バーレーン-日本 「中澤JAPAN」 | picture of player

■戦評■2010年W杯アジア最終予選 バーレーン-日本 「中澤JAPAN」

■バーレーン2-3日本
■短評

さあ、色々な不安を抱えてついにやってきました最終予選。日本はここ最近岡ちゃんお気に入りの4-2-3-1。杉山茂樹が鼻血を出して大喜び。キーパーが楢崎、DFが右から内田、中澤、トゥーリオ、ショウヘイヘイじゃない阿部。中盤の底に遠藤と長谷部、二列目に右から中村初号機、田中達也、松井。1トップが玉ちゃん。対するバーレーンは三次予選と同じ3-5-2。噂のナイジェリア人はベンチ。

立ち上がりは完全に日本ペース。頭から飛ばしていった日本は遠藤を経由して次々にボールを散らし、あまり統制の取れてないバーレーンDFのプレスを簡単にいなす。さすがにこのレベルだと遠藤はシャビになれる。左からの攻めが多かったのは意図的なのか単なる偶然なのか知らないが、松井にボールが入ったときがスイッチとなって、阿部、長谷部、達也がサポートし、起点を作っていた。特に達也の大きな動きにバーレーンのうすのろDFはまるでついていけず、思うままにボールを持つことができた。すてき!

守備でも「ボールを取り返せ、ボールを取り返せ」と念仏のように岡ちゃんに言われ続けたせいか、選手の反応はよかった。お世辞にも統制が取れていたとは言えないが、個人能力の差で中盤の高い位置で何度かボールをとることができた。ていうか、バーレーンは普通にボールを回す技術がない。たぶん、流通経済大以下。パスコースもキープ力もなければ、そりゃそうだ。誰だよ、つなぐサッカーするって言ってたの。

だが、問題は最後までいくことはできないこと。阿部のオーバーラップがそれほど期待できないこともあってサイドをえぐるシーンは少なく、中央、中央へと入っていくのがこのチームの悪癖。長谷部もがんがん上がって完全に中央は交通渋滞。まあそんなのは中盤の面子を見ればどうなるかはわかりそうなものだが、それがうまく整理できてないのがこのチームの問題。そんな即興攻撃に対して、統制が取れてないと言ってもそう簡単にDFラインの前を開けるほどバーレーンの頭が悪いわけでもなく、決定的チャンスにはならない。

そうしていつものとおり、十五分過ぎに徐々にペースダウンして試合は落ち着いてく。ただ、これも想定内の展開か。「さあ、これからが勝負だぞ!」と思いきや、FKから初号機の飛び道具ずどん。これがあるから中村はやめられねえな!こうなると、バーレーンは厳しい。完全勝ちパターンに乗せた日本だったが、その後はバーレーン攻勢。遠藤&長谷部の中盤に相手の攻撃を摘む能力もカバー能力もなく、何度かいやな展開に持ち込まれる。ただ、それほどバーレーンの中盤にパターンも発想もあるわけではないので、DFラインの個人能力というか中澤とトゥーリオが弾き返して無問題。さらに、困ったときには、バーレーンは前線にどっかんどっかん放り込むものの、フィードの技術が未熟なため、トゥーリオ&中澤にばしばし叩き落とされるのみ。もっとさー、内田のところとかで競らせたほうがいいと思うんだ、と余計なおせっかいをかけたくなるほど、拙い。そして、攻勢を受け続けたが、前半終了間際には相手のハンドでPKゲット。遠藤が例のルーティンワークで落ち着いて決めて、余裕綽々左団扇の願ってもない展開で後半へ。

後半もバーレーンは特に策を練ってきたわけでもない。どちらのペースと言えないまま同じような展開で試合は進み、67分には相手のDFが二枚目のイエローで退場。怪しい判定だったとは言え、まああれだけボール持たれて走り回らされたら、そりゃファウルもしたくなるよね。これで完全にゲームオーバー。その後、前掛かりになったまま戻って来れない前輪駆動にバーレーンはなってしまい、すっかすかのDF相手にざる三杯ほどのチャンスを迎えるが、佐藤寿人を投入した日本はどうしても点を決めることができず。ポストに当てた直後にクロスバーってどんだけだよ。「ポストとクロスバーをあわせると畳一枚ぶんなんですよ by 加茂周」。ただ、攻め続けた結果、中村Zがようやく終了5分前にミドルを決め、終戦。やれやれ。と思いきや、わけわからないグラウンダーのアーリークロスをDF陣が脳死してしまったとしか思えない対応でスルーしてしまい、失点。その二分後にはトゥーリオが芸術的ループヘッドで自陣ゴールにゲット。むやみに場を緊迫させ、終了間際には何度かシュートチャンスを与えて、90分を無駄にしかねない展開だったが、なんとか守りきって勝ち点3ゲット。なんだこりゃ。

終盤のぐだぐだはともかく敵地で勝ったのは大きい。予選は結果が重要だからね。内容面では、アジアではやはり日本はポゼッションしてなんぼ。ただ、それを連携ではなく個人依存している状態。そういう意味で、遠藤、初号機の重要性は今後どんどん増していくだろう。そしてDF面でも中澤、トゥーリオがいればそう簡単に崩されることは少ない。ただ、中盤の面子については一考する余地があると思う。長谷部がのそのそ上がっていってしまうので、残っているのは遠藤だけという場面が結構あった。いや、そりゃ100%前につなげるならそれでもいいんだろうけど、サッカーはそういうわけにはいかない。ボールを奪われたときに遠藤一人が残っていて何かできるのかどうか。それに折角ツインハンマーがロングボールを叩き落としても、そのセカンドボールが拾えない。この試合でもそこから何度か攻撃に繋げられていた。バーレーンがとんちきな攻めしかしてこなかったので助かったが、たぶん駄目でしょ。そもそも、カウンターじゃなくてもこの二人の守備面での能力はそれほど期待できない。多少ポゼッションの精度は落ちるにしても、啓太なり今野なり阿部なりを入れていたほうが安心は安心。というか、もうちょっと強いチームとやったら確実にやられる。予選でそれができるのがオーストラリアくらいだというのが幸なのか不幸なのかはわからないが、ポゼッション優位のアジア前提仕様というつもりでもないのがなあ。

また、前線もほんとにあれでいいのか。ショートパス&中央突破がコンセプト(?)なのかは知らないが、コンビネーションもなく、バーレーンにさえ通用していない。というか、よっぽどのことがない限り、そんなのは点に繋がらない。この試合でもサイドチェンジは少なかった。それだと先が詰まってもしまうので、ポゼッションの意味があまりない。奇策ではあるけどうまくいってないよね。片サイドに寄せてそっからオープンの逆サイドで勝負、という常道を取らないのは、意図的なのかできないのか。たぶん、後者なんだろうなあ。この戦術(と呼べるのかどうか)の熟成した先に何があるのかは皆目検討もつかないが、たぶん首脳陣もわからないんだと思う。ただ、オープンに振ってクロスを上げても中があのちびっ子たちじゃあどうしようもないんだけどね。「日本人は高さで世界に勝てない」と言っているが、せめてでかぶつに競らせてボールをイーブンにするしてそのこぼれ球を狙うとか、あるいは囮にしてその背後を狙う、という展開があるはずなのだが、そういう発想にはならないんだろうか。というか、そういう意図を気にしちゃだめな代表なんだろうな、これは。

勝ち点3ゲットしたものの、組織としての練度がまるで感じられず個人の能力に頼り切ってる場面が多いといういつもの岡田JAPANでしえええ、ウズベク3-0で負けてんの?笑


■picture of player 中澤佑二
三次予選に引き続き、この試合でも圧巻のパフォーマンス。ロングボールはほぼ無敵、カバーリングも上出来。フィルターが効かない中盤中央もなんのその、鬼の能力で防ぎきる。普通に中盤で守備できる選手を入れればぐっと楽になるんだろうが、いかんせん岡ちゃんが現在の中盤に手応えを感じてしまっているので望み薄。そうなると、怪我がちの隣のちょんまげに頼ることもできないので、彼が頼りになる。怪我しないで頑張ってください。しかし、オシム時代を除くと、本当にここ数年の代表は中澤と中村初号機のチームなんだなあと思う。それがいいことだとは思ってないんだけどね。笑