ある若いDFの決断 | picture of player

ある若いDFの決断

京都、水本の加入を発表=Jリーグ

Jリーグ1部(J1)の京都は22日、京都府城陽市内のクラブハウスで、G大阪からDF水本裕貴(22)の移籍加入を発表した。

えー、遂に決まってしまいました、水本君。千葉→G大阪→京都という見事な移籍金ロンダリング。育ての親である千葉から出奔し、シジクレイが抜けてレギュラー確実!と思われたG大阪では中澤別人にあっさりとポジションを奪われ、オリンピックまでに試合勘欲しい!ということでの掟破りのシーズン2回移籍。あと一回でハットトリックだねってやかましいわ!

さて、この義理人情も全くない、とりあえずのご都合主義的移籍に関しては、当然のごとく非難轟々。高い移籍金を積んで獲得したG大阪の方々はもちろんのこと、「ACLに出て成長してくれ!」と泣く泣く送り出した千葉の方々も釈然としない思い。G大阪からは負け犬呼ばわりされ、千葉からは裏切り者扱い。まあ、それもそうだよね。お世話になったところに後ろ足で砂を引っ掛けるような行為だから。

ただ、そんなに責めるようなことかいな、と思う。確かに、在籍3ヶ月での移籍は早い。もう少し踏ん張ってもよかったかもしれない。責める人の気持ちもわからないではない。ただ、現状でのG大阪でのCBのレギュラーは中澤別人と山口だ。ほとんどの試合では彼らがファーストチョイスで、水本の出場試合はたった6試合。しかも先発はそのうち最初の2試合だけ。次のチャンスはいつ来るかわからない。

また、オリンピックがある。世界的に見ればオリンピックは端役も端役だが、日本ではそうじゃない。マスコミの煽りとサッカー協会の力の入れようからもわかるとおり、一つのイベントとして確立されている。選手もここで活躍することが、A代表や海外への近道だと思っている(本当かどうかは別として)。まあ、若い選手がそういうふうに考えるのは当然だよね。だって、そういう風に煽ってるんだもん。で、試合に出られないことで、その若い選手が大会にベストコンディションで臨むことができない。しかも、その選手はオリンピック代表の監督から信頼され、大会でキャプテンマークを巻かなくてはいけない・・・。そりゃあ、焦るだろう。枕に顔を埋めて、ぬわーとか言いながら足をばたばたさせるくらい焦る。そして、彼は眠れない夜に考える。自分に残された選択肢の中で、もっとも試合に出る可能性が高い方法はなにか、と。おのずと答えは出てくるだろう。

おそらく、どれくらい非難されるかわかっていてやったはずだ。水本は常識のない若者ではないし、頭の足りない人間でもない。だから、今回の移籍でどれほどのものを自分が背負うのか、わからないわけがない。ていうか、わかれ。わかっててくれ。でも、それでいて、なおのこと試合への出場機会を求めた。そういうことでいいんじゃないかな。非難だとか、落ちたイメージは結局自分で背負うしかないんだし。要は結果だよ。北京でマカーイを完封すりゃ、そんな悪評も吹っ飛んじまう。今回のドタバタも美談にさえなるかもしれない。重要なのは、水本は自分を追い込んだってこと。たとえばオリンピックで無様なプレーをしても、「出場機会があんまりなかったから、すんません」っていう言い訳はできる。でも、水本はそれを拒否した。アスリートとして、そこは賞賛できると思う。それは中々出来ることじゃないし、俺はポジティブに捉えてるよ。

あと、ちょっと気になったのは、今度の件で水本を叩いてる人たち。もちろん、叩かれてしかるべきことをしたと思うし、その非難は水本も承知の上だと思う。ただ、義理とか人情とかそういう観点からの非難は、ちょっと違うでしょ。そういうことじゃないと思うんだよな。彼らの思考方法ってそうじゃないよ。彼らは一般人からしたら頭おかしいんだよ。試合に出て、相手を叩き潰すことが彼らの第一目標。試合に出れないってことは、死んだも同然なんだよ。そこをわからないで「耐える根性がない~」とか「代理人に踊らされて~」とか、そういう批判ってすごくナンセンスだな、と思う。以上、歌丸でした。