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祭りの後

はい、帰ってきましたよ。いやー、負けちゃったね。当日のがっくり感というものはもうひどかったわけだが、まあ、こんなものかな、という感じ。


まだビデオは見返してない。なので、現地から見た今大会の日本代表の戦いぶりで気になったことを箇条書きでまとめてみる。まだ終わってないけど。


1.意図的なポゼッション?
完全な暑熱対策。現地は夕方でも30度を超える日がほとんどで、湿度もすさまじい。まともなスポーツをやる環境ではない。こういう状況で「走るサッカー」は絶対に無理。帰ってきて「ボールを追い越してない」とか「動きが少ない」とかそういう意見を結構目にしたが、走ったその瞬間だけはいいだろうが、すぐにグロッキーになってサンドバッグにされるだろう。では、走らないためにどうするか。ということで、「ポゼッション」を重視した。「ボールは疲れない」だの「ボールを持っていれば点は取られない」だの、なんかそんな格言があったかと思うが、中村1号、2号、遠藤など、とにかく中盤にテクニカルな選手を多く置き、ボールを極力失わないようにした。
この効用は2つ。1つは上記のように守備の局面を少なくすることで体力の消耗を防いだ。2つ目は、相手を著しく消耗させることができた。あの元気のいいベトナムでさえ、散々に振り回されて、後半にはすっかり足が止まってしまった。これはオーストラリアのような屈強なチーム相手にも有効な戦術だった。ただ、サウジアラビア戦では、涼しかったせいで思ったほど体力を削ることができず、また疲労からポゼッション自体がうまくいかず、瓦解した。
チームとしてどこまで意図したのかは推測するしかないのだが、選手はともかくとして、このメンバーの選び方を見ると相当オシムはこのやり方を練っていたことが伺える。


2.選手たちはロボット?
「オシムを恐れるあまり、選手が自主性を放棄してパスを回し続け、まるでロボットのようだった」。結構この手の意見を目にするが、本当にそうなのか?たとえば、サウジ戦でシュート数は増えなかったが、傍目にもシュートコースがない場合も多く、シュートを撃ってはブロックされたりで、シュート自体の数にカウントされないチャレンジも結構あった。確かに消極的だったことは事実だが、「ロボット」とわかりやすい修辞でお茶を濁し、問題をメンタル面に矮小化することのほうが問題だと思う。サウジ戦で無理な状況からシュートを撃つことも大事かもしれない。しかし、それ以前にいい状況でシュートを撃てる組み立てが出来ていなかったほうが問題であり、簡単にパスを奪われて速攻を許したこと、更には集中を切らして失点したことのほうがはるかに大きな問題。そういったチーム全体の機能不全を無視して、「選手の自主性が~」というところだけを見るのははっきり言ってナンセンス。
負けの原因を探すときに、こういう話ってたまに出てくるね。「貧困からのし上がったものじゃないとハングリー精神が~」とか、「日本人の我が弱いところが~」とか。それってなんか文化論とかですげえそれっぽいんだけど、単純なこじつけの場合がほとんど。もしかしたら正しい場合もあるのかもしれないけど、スポーツなんだから競技中の原因をまずは探そうよ。ポエムは詠んでもいいけど、記事にするなっつうの。


3.ポゼッションは継続?
1.の「大いなるポゼッション」がアジアカップ限定なのか、それ以後も続く傾向なのかは今の時点ではわからない。ただ、おそらく無印中村と中村Z、さらに遠藤を併用する形は今後はもうないのではないか。ぱっと見にもバランス悪そうだが、アジア中堅相手だと、攻撃機会そのものを減らすために、それほどの脆さを見せなかった。ただし、疲労もあったせいか、サウジクラスには脆くも打ち砕かれた。中村Zが前に上がり、啓太がボールにチェックに行ってる時に、少なくともバイタルを埋められる人材がもう一人はいないと強豪相手にはきつそうだ。ただし、これがゾーンの4バックを継続するという問題も絡んできているのだが、次に書くようにそれについても非常に微妙。


4.マンマークからゾーンへの進化??
前の親善試合あたりから、ゾーン4を採用しているわけだが、これは今後も継続するのかどうか。「4バックならご飯3杯は軽いぜ!」という4バック信奉者からすれば、勃起ものの展開(失礼)ではあるのだが、果たしてこれは進化なのか。ゾーン4バック>マンマーク+リベロという方程式は成り立たない。どちらにも短所はあり、長所はある。
これはアジアカップの暑熱対策でもあることなのだが、もう一つの要因としてリベロ不在という要因もあるだろう。これはhumeさん とメッセンジャーで話していて示唆を受けたのだが、リベロとなる適当な人材もいないためリベロを置いていないのではないか、ということだった。「リベロの攻め上がりをカバーするためにはゾーンよりもマンマーク」という理由も納得がいくし、そのリベロがいないのならばあえてマンマークを敷く意味も半減する。今大会は暑さもあるし、トゥーリオもいないし、他に適任も見つからないのでゾーンでいこうというのは非常に論理的な判断だと思う。ただ、トゥーリオがイマイチ攻撃面でのセンスが悪いためリベロとして使えないのも確かで、彼が戻ってきたとしても、リベロシステムに戻るかどうかはわからない。おそらく、後方にフリーマンを置くか、前線にフリーマンを置くか、という選択肢でどちらが有効か、という選択になるのだろうが、無印中村もイマイチだったので、今のところどっちも大して有効ではありませんでした、姉さん。なので、保留。


5.日本代表は進歩してる?
間違いなく進歩している。マッチポンプ・場当たり的だった前回のアジアカップの代表と比べると、チームとしての統一的な意思、数的優位の作り方、DF方法の選択(ゾーンorマンマーク)などの面で長足の進歩を遂げている。チーム結成1年未満でこれだけできれば上出来。特に数的優位の作り方についてはだいぶ染み込んで来たようで、攻撃では常に中と外に二つの選択肢を持っているのがよかった。この国にシステムブレイカー(C・ロナウド、ドログバ、ロナウジーニョ、カンナバーロ)は出現する気配はないので、こういった地味なサポートの動きを徹底させ、そのスピードと精度を極限まで高めることで世界と伍していくしかないのだろう。


6.アジアカップは勝つ気だった?
勝つ気はあった。ただし、トレーニングをして向上させながら 、という二兎を追いながらのものではあった。なので、オシムはこの敗戦をそれほど残念には思ってないだろう(口ではいろいろ言うかもしれないが 笑)。最大の試合数戦うことができて、100%とはいえないが、ある程度満足のはずだ。



と、あんまりまとまってないですが、とりあえず、みなさんただいまです。
今日の韓国戦はフレッシュな選手で戦って欲しいなあ。