♪まぁるい月が~ | ■RED AND BLACK■レ・ミゼラブル2015日記

♪まぁるい月が~

大阪公演、わたしが観た限りでは、テナルディエの印象がもうひとつ弱かったのが気になりました。いえ、佐藤さんもコングさんも、歌はお芝居は上手なのです。観客を楽しませよう、一生懸命演じようという誠実さも伝わってきます。特段悪いところがあるわけではないのに、なんでだろう。


何となく腑に落ちなくて、テナルディエの見せ場ってどこかなと改めて考え直してみました。うーん、自分にとってはやっぱり「下水道」でのソロナンバーだな。テナルディエの気持ちが最も見えてくる、大事なシーンです。


♪ 天国見上げても まぁるい月が 見下ろすだけ…


帝劇では、ここで時々拍手が起きることがありました。もちろん、わたしもしたことがあります。というより、できれば毎回、そんなふうに称賛したくなる「下水道」シーンであってほしい…。


わたしがこの歌でぞくっとしたことがあるのは、駒田一さんや斉藤晴彦さん(SPバージョン)が演じた回だったかな。「♪ まぁるい月が~」という声に漂う虚無感。心にぽかーんと穴があくような歌い方に、はっとさせられるのです。見上げているのは月ではなく、自分の心にある昏い穴…。なんだか、テナルディエのような小悪党も他人のような気がしなくなってきます。


斉藤テナルディエは「下水道に出て行く直前、『彼を帰して』のメロディーを奏でるオーボエを聴いているときが、自分にとってレミゼのクライマックスだ(以上、要約)」とSPバージョンのプログラムで語っています。手に汗握るような「下水道」シーン、新しいキャストも見せてくれるかな。