尾木直樹の教育事件簿―フツーの子が事件を起こす時代に/尾木 直樹

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最近、「いじめによる自殺問題」で
テレビに良くコメントしている尾木さんの最新刊です。
教育再生会議の緊急提言が出された翌日、
テレビで、「いじめ問題は人権問題という観点が大切。」と
発言されたのを聞き、共感したので、この本を読みました。

2006年8月の初版なので、
まだ「いじめによる自殺問題」が
今のように顕在化していなかった時の本ですが、
教育関係者の間では、
1980年代からずっと「いじめ」、「いじめによる自殺」が
問題になっていたことがわかります。

それなのに、何故この教育基本法改正の時期に・・・
については、過去の記事を参考ください。

さて、教育再生会議の緊急提言で「いじめる生徒の出席停止」を
入れるかどうかで議論があり、結局は見送られましたが、
実は1983年にいじめる子どもへの懲戒としてではなく、
他の子どもが授業を受ける権利として「出席停止」が
初めて認められたそうです。

当初は出席停止が多く出されたそうですが、
次第に少なくなりました。
初年度137件で、次年度から半減。
これは出席停止の通達とともに
いじめを無くすことも文科省から学校に出されたためと
考えられます。
すなわち、出席停止=いじめがあることになるから
学校側は、文科省の統計に反映される
市町村の教育委員会による出席停止を使わず、
学校独自の判断による出席停止(統計に載らない出席停止)を
大幅に増やしたそうです。
その理由も子どもを守るのではなく、
先生の指導力不足が原因で
問題行動を起こす子どもを排除することによって
先生を守るためが多いそうです。

1994年の大河内君事件の際にも
再び「出席停止」を有効に活用することが
文科省から各教育委員会に通達があったそうですが、
やはり出席停止をおこうなうことは、
学校にいじめがあることを認めることとなるため、
教育委員会による出席停止はほとんど出ていないそうです。
最近、94年以降、文科省の統計では出席停止はほとんど
出されていないとの報道がありましたが、
ルールによらない言わば私刑としての出席停止は
逆に増えているそうです。
従って、今回の教育再生会議の緊急提言が
この私刑としての出席停止を明らかにするだけで
実質上は何も効果がないことになります。

また出席停止にした子どものフォローも
十分にしていなかったことも指摘されています。

一方で、いじめの質も集団による暴力から
心理的虐待が中心となり、より陰湿化していっているそうです。

どおりで、現場の先生や生徒が、今回の教育再生会議の
提言に懐疑的であった訳です。

なんだかなぁ・・・ですね。