少年テングサのしょっぱい呪文 著:牧野修 | 105円読書

少年テングサのしょっぱい呪文 著:牧野修


105円読書-少年テングサのしょっぱい呪文 少年テングサのしょっぱい呪文

著:牧野修
アスキーメディアワークス
ISBN:978-4-04-868080-6
2009年10月発行 定価662円(税込)









電撃文庫のライトノベル…萌え萌え要素たっぷりな表紙なので、いつもならちょっと購入を控えそうだが、なんとホラー作家の牧野修が書いてるではないですか!これはちょっと気になる…ということで、勇気をふりしぼって購入!

邪神ジゴ・マゴに憑依された少年、テングサこと柳原心太は、鈴木地球、通称あっちゃん、佐藤流星愛、通称サトルとつるんでいつもバカ話に華を咲かせる。その日も、行きつけの喫茶店“不眠症”たむろっていると…邪神の生み出した仮想人格の小津ゲスチエと木村ネチカが果し合いの申し込みに現れた!さらに「人を殺してほしい」と訴えるおばさんが、ジゴ・マゴに呪殺の申請にやってきた…。

正直に言うと、よく意味がわからない話…というか設定があまり理解できない。邪神に憑依された高校生の話なんだけど…そもそもその邪神が、なんで人類と遭遇したのかとか、そういった点の説明をまるっきりするつもりがないらしい。いや、説明らしきものはあるんだけど、邪神と人間が遭遇し、色々あって現在の共存関係みたいな世界ができたよって、たった数行で強引に納得させ終わり。

ぜんぜん世界観が理解できないまま、さらに邪神が作りだす仮想人格なるものまで登場するんだけど、これは一応、人のような容姿をしているものもいれば、化け物みたいな場合があったりと…で、普通に人間の社会、高校生の日常に、そういうものが脈絡なく登場し、事件が色々と起きる。

どこにでもいるボンクラ高校生が、邪神の力で、人助けをするとんだと納得すれば、深く追求せずに楽しめるようにはなるんだけど…単純にヒーローものになるんじゃなくて、相手を呪い殺すとかそういう方向にいくのが、普段はホラーを書いてる牧野らしい展開かなと。

イジメを苦に自殺した子供の親が、相手を呪い殺してくれっていうんだけど…実際に女子中学生がとんでもない死に方を。ここで何かに気付いた主人公が事件を調べ始め、あっと驚く新事実がと、ちょっとミステリータッチな展開。バカっぽい文章なのに、唐突に残酷エログロ描写がドーンと出てくるのが妙な味わい。牧野らしくブラックで面白い。

設定がろくに理解できないまま暴走しまくるので、しばし置いてきぼりをくう場面もあるが、後半は、仮想人格の殺し屋とのバトルなどが中心になっていき、物語や設定の核となる秘密も関わってくる。最終的にSFファンタジーっぽいオチが用意されていて、そこはそれでちょっと感動的だったりもする。

わけわかんない作品なんだけど、三バカトリオのバカな駄弁りなんかは、著者自身の高校時代の思い出が色濃く反映されているのではないかと推測。ネタが微妙に古臭く、なんだか親近感がわいてしまい…自分の学生時代なども思い出してしまう。そこが一番、読んでいて面白かったかなぁと。ライトノベルの皮をかぶってますが、牧野作品に親しんでいる人なら、けっこう楽しめるのでは?





個人的採点:65点