ギャングスター・レッスン 著:垣根涼介 | 105円読書

ギャングスター・レッスン 著:垣根涼介

105円読書-ギャングスター・レッスン ギャングスター・レッスン 

垣根涼介:著
徳間書店 ISBN:978-4-19-892554-3
2007年2月発行 定価680円(税込)









キャラクターもストーリーも非常に魅力的で、面白かった「ヒートアイランド」の続編で、チーマーのリーダーだったアキが、ギャングの仲間に加わる話。2004年に単行本化されたものの文庫版。


渋谷のチーマーを束ね、ファイトパーティーでビジネスしていたアキは、仲間が招いたトラブルを機に、チームを解散。約1年の海外放浪の後…トラブルを起こした時に知り合った強盗団の男たちに誘われ、裏の世界に足を踏み込む。犯罪のプロ、柿沢と桃井に犯罪者になるための基礎をみっちりと仕込まれるアキだったが…。

全5章+番外編的後日談からなる…連作短編っぽい構成。クライムサスペンスとしては、どれも面白い内容なんだけど、前作の長編のスリルに比べると、やや物足りない感じがするかもしれない。前みたいにバラバラのストーリーがシンクロしていくような醍醐味はこの作品にはなかった。

柿沢と桃井に、偽の戸籍の入手の仕方とか犯罪者になるための初歩を徹底的にたたきこまれるアキ、犯罪者になるための下準備なんか、自分たちの日常とは程遠そうな感じだけど、意外と庶民的なところから攻めていったりもする。何事にも勤勉さと努力、忍耐が必要…新聞読め、本を読め、考えることが大事だと…。

犯罪のプロ・柿沢の言っていることは凄く全うなことばかりであり、普通に今の若い世代へのメッセージが込められているようでもあった。だから、意外と共感できちゃったり、するわけですよ。やたら厳しい柿沢は父親、つきっきりでいろいろなことを教え、ちょっとアキに甘い感じの桃井は母親のような存在。子供を一人前に育てるには、叱る時は叱る、優しくする時は優しくする、飴と鞭は臨機応変に使い分けろと言っているみたいだったな。まだまだギャング修行中のアキ…まだまだシリーズ化できそうな気配。

各章で、ゲスト的に登場するサブキャラたちが魅力的…桃井の元カノのトラック運転手とか、アキたちのターゲットにされちゃう憎めないヤクザとか、アキたちの仕事に巻き込まれちゃう元ヤンのコンパニオンとか…最後にこうしたサブキャラのその後が、箇条書きで書かれてるんだけど…桃井の元カノが、こっちの想像を裏切る事になてったのがちょっとビックリ。けっこう好きなキャラだったのに、最後のたった二行であんなになっているとは…。

劇中で、アキたちのターゲットにされながらも、憎めないヤツだったなぁといわれていた、ヤクザの柏木さんが活躍するお話が番外編で、最後に出てきます。他のキャラも、たった1、2行で終わらせないで、こうしてじっくり後日談を書いてほしかったよ。






個人的採点:65点