「だからと言って、諦められる、わけでもない……よな……。」
どれほどの政敵に囲まれても。
どれだけ人間不信に陥りそうな危機に陥っても。
自分自身を毛嫌いしたくなるような非道な決断を下した時も。
―――レンッ!!―――
頬を染め、満面の笑みを浮かべて駆けよって来る少女を思い出せば、心は浮上した。
味方になってくれる人達への信頼の情も、むろんクオンを支えるひとつにはなったけれど。
それ以上に、満面の笑顔を浮かべてくれる少女の思い出がクオンの心を守ってくれたのだ。
「………ムリだ。」
あの娘を諦めることなんて、絶対にできない。
愛しい娘なのだ。
例えそれが、数日の逢瀬であったとしても。
幼い少女に向けるにしては、異常な感情であったのだとしても。
好意の質が彼女と全く違ったとしても。
それでも、絶対に。
あの可愛らしい少女の隣に立つのは、クオンでなければ。
他の誰かが立つなど、許すことなんてできない。
プッ……キュ~~~~~~~~~~~~~~…………
「…………?」
どこまでも堕ちて行きそうな闇の中。
突如として聞えた、間抜けな音。
あまりにも甲高く、場にそぐわぬ音に意識が浮上する。
そして、視線を音のした方に向ければ。
……そこには。
何やら、真っ白でずんぐりむっくりな物体が、立っていた。