ねここ様からのリクエスト~愛ある家族の大嵐(5-1)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「……と、いうわけで。我々は本当の親子になったんだよ。なぁ、キョーコ?」

「はいっ!!」



 テレビをつけると、満面の笑顔を浮かべるキョーコの姿と、その少女を優しく見つめる壮年の美男が映る。



「……………。」

「……………。」



 気分転換に付けたつもりのテレビ画像が、空気をどんより重くさせる。

 リモコンの電源ボタンを押したままガチン、と固まってしまった社ではあるが、次の行動に移るべく、頭の中を高速回転させはじめた。



―――ど、どうしよう!!ここはさりげなくチャンネルを変えるべきか、それとも何事もなかったかのように電源を切るか!?……いや、しかし!!どの行動をとるにしても、不自然さは拭いされない!!―――



 さながら、家族で夕飯をとっていて何気なくテレビの電源をいれたら濡れ場シーンなりキスシーンなりがあった場合の、父(40代)と娘(10代・思春期)の気まずい状況。

 次にどんな反応をしようが、お互い、不自然極まりない。



「そうなんですね!!それにしても、本当に仲良し親子、という雰囲気ですねェ~。」

「いやぁ、これはそれどころではないでしょう?親子としてはラブラブすぎる。本当の親子なら、気持ちが悪いレベルです。ク―は子煩悩…というか親バカすぎるし、京子ちゃんは目を恋する乙女みたいにうるませすぎ。歳の差カップルにしか見えないなぁ。」



 電源スイッチに指を置いたまま考え込んでいた社の耳に、危険人物の声が聞こえてきた。



―――出やがったな、加藤~~~~~~!!!!―――



 と、芸能界の大御所に向けて、心の中で呼び捨てにしてしまったのは致し方ない。

 声に出さなかっただけ、彼は立派な社会人であった。



「はっはっは!!歳の差カップルか!!相手が私のような中年では、キョーコに申し訳がないだろう?」

「なっ!?何をおっしゃいますか!!私こそ恐れ多い!!ク―パパのような素敵な方には、ジュリ様のようなこの世の方とは思えない、美の女神でなければ相応しくありませんし!!私のようなどこにでもいるような地味女など相手になんか絶対にしませんよ!!」

「いやいや、キョーコは可愛いし、天使のようだし、どこまでも美しくなれるし、根性はあるし、努力家さ「あぁ、もういいよ。お前、その子どもや妻が関わった時の流れるような褒め言葉のオンパレード、やめろ。これ、生放送なんだぞ。お前の子ども自慢大会で全ての時間を終わらせる気か?」」



 ク―の生態を理解しているらしい中年大御所司会者は、ク―が始めようとした『親バカ炸裂ト―ク』の出だしでうまく話を遮った。



「………。お前がいると、自由に話をすることができないな………。」

「そいつはお互い様だ。」



 「むむぅ…」と不機嫌に眉を潜めたク―の苦言を、さらりと交わして、加藤はキョーコに視線を向ける。



「……うん。でも、俺から見てもキョーコちゃん、可愛いな。」

「!?加藤、貴様!!厭らしい目でキョーコを見るんじゃない!!!!」

「ふぇ!?」



 その視線から庇うように、キョーコの身体を隣のソファから抱きこんだク―を見て、加藤はあからさまに呆れた顔をしてみせた。



「バッカ。俺にはカミさんがいるし、息子が2人もいるんだぞ?」

「もしやその息子を使って、私の娘を奪うつもりじゃないだろうな…?そうはさせんぞ!!キョーコが欲しくば、私の屍を越えて行け!!」

「………。いや、そりゃあ、息子の嫁さんには理想的な娘さんだとは思うが……。お前が理想だっていう娘だぞ?ムリムリ、俺の息子じゃムリだわ。」

 

 「束になってもムリ。」と言い置いて、ク―に抱きこまれるキョーコを苦笑しながら見つめる。



「京子ちゃんも大変だな。こんな自称父親ができてしまったために、理想がえらく高くなってしまったようで。」

「いえ!!そもそも私は、愛や恋だなどという、ムダな感情に振りまわされる人生を送らないでおこうと思っていたくらいですから!!それに比べましたら、その、ク―パパの愛情や、その……友情とか、信頼関係とか、真っ当な人間関係を作っていける土台をいただけた今は、とても幸せだと思っているんです!!」

「ほっほ~~……。ク―が親バカなおかげで、救われた部分があるだなんて。こんな重苦しい愛情を向けられて、煙たがらないだなんて、いい娘を持ったなぁ……。」

「ふふん、そうだろう、そうだろう!!キョーコは私の自慢の娘だからな!!」



 鼻を高くして踏ん反り返る男を見て、「いや、お前、偉そうだけど…全然お前、偉くないからな?」と切って捨てる加藤。



「………すごいな、加藤さん。ク―・ヒズリをここまでコケにするとは。同年代で仲がいいって噂は聞いていたが、これだけ言っても怒らせないとなると、かなり親しい関係なんだな。」

「………………。」



 ク―に対してここまで砕けた会話をしてみせる芸能関係者は、もはや日本では加藤くらいしかいないだろう。

 親しげであり、リズミカルな会話は、聞いていて耳に心地よい。



 むろん、その内容には全く納得していない男が、社の隣で渋面を浮かべてはいるが。











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