「でも、敦賀さんは………。」
「ん?」
「さっき、『今は、まだ』って、おっしゃいました。」
「………………。」
「『今』の先に、何かがあるんですよね?」
聡い少女は、可哀想なほど動揺していたのに、きちんと蓮の言葉を聞き、それを汲んでいた。
「確かに、『今』の先に欲しいものはある。君に望んでいることが、たくさんある。」
同じように寝台に沈む行為であっても、名前の呼び方でもめたり、告白しあうだけではない交わり方があることを、すでに知っている身だ。その行為を、本当の意味で愛した人としてみたいという欲求はもちろん、ある。
そして、これから続く人生を、共に歩む永遠の約束をしたいとも考えている。
「だったらっ!!」
「うん、でも。今、全てを叶えてしまったら、楽しくないじゃないか。」
「ふぇ……?」
きっと、今。
彼女の心も身体も全てを手に入れて。
未成年の少女の将来を左右する約束さえも結ばせて。
欲しいものを全て『欲しい』と強請り、それらを全て、手に入れることもできる。
だけど、蓮は知っているから。
「キョーコ。」
「うぇ!?は、ははは、はい!!」
人とは、欲深い生き物だから。
だから、未だ名前で呼ばれることだけで可哀想なほど動揺する女の子の名前を、懲りもせず呼び続ける。
「俺のこと、好き?」
「ひぇっ!!??」
そして、間接的に伝え続けてくれた愛さえも、直接的な言葉で聞かせて欲しいと、逃げられないような質問をする。
「はっははは、はい!!」
「うん。……好き?」
「え?あ、は、はいっ……あの、あの……!!好きです!!!!ぅぐっ!?」
全身を真っ赤にさせ、動揺することで息を荒くさせながらも潔く言い切った言葉を受け取るとともに、少女の唇さえも無断で奪ってみせる。
「んっ……。うぅぅんぅ!!んんんんん~~~~~~~~!!!!」
寝台へ沈められた少女は、蓮の唇から逃げることなどできず。
しかし、わずかな抵抗として、何度も何度も、蓮の胸を叩き、左右に顔を振ろうとする。
だが、それら全ての小さな抗いは、圧倒的な体格差があり、覆いかぶさってくる男の前では無に等しく。
全ての抵抗を失くし、キョーコが脱力するまで続けられた、長い長い口付けは、互いをつなぐ銀糸が切れるとともにやっと終わりを迎えた。
「はっ、はぁっ、はぁっ、はぁ…………」
息をすることもできず、翻弄されたキョーコは、涙を流しながら一生懸命呼吸をしている。
………まだ、こんなにも。こんなにも、幼くて可愛らしい女の子なのだから………
自分が欲深い生き物であることを自覚しているからこそ、これ以上を叶えてはいけない。
彼女を自分のテリトリーに囲い込み、美しい華を開花させることに成功し、「好きだ」という告白を受けて……。
そして。
「ファースト・キスは、『コーン』に譲ってしまったけれど……。」
「…………?」
「これからの全ては、『俺』が貰ってもいいよね?」
「っ!?」
そして、これからの彼女の全ての口付けを。
蓮と、蓮の中に息づく『彼』だけが、独占する権利をもらうことさえできれば。
「……貰って、いい?」
「っっ~~~~~~!!」
「キョ「はっはい!!ど、どどどど、どうぞ!!!!わ、わわわわ、ワタクシのようなものの唇でよろしければ~~~~~~!!!!」」
………今、ある『欲』は全て、満たされる………