ねここ様からのリクエスト~愛ある家族の大嵐(1-2)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「あははっ、そうか、根性でコントロールか……。君ならやってしまいそうだな。おじさん、別の意味で心配。」

「ご心配は無用です。私は仕事と友情を生きがいとして生きてまいります。それで充分です。」

「悟りきったような発言だなぁ……。でも、君にだって、理想の人くらいいるんじゃないのかい?」

「っ!!」



 この時、キョーコは、一瞬回答に躊躇してしまった。テンポよく会話をしてくる加藤の術中に嵌ったのだ。



「お、やっぱり理想の人がいるんだなぁ。誰?おじさんに話してごらん。」

「そ、そんな方はいません!!」



 ふと脳裏に蘇ったその人は、いつも通りキョ―コに優しい笑顔を見せてくれる。神に丹精込めて作られた寵児は、いくら脳から追い出そうとしても後光を背に負いながらキョーコの中から消えてくれない。



「またまたぁ。そんなに真っ赤になって言っても、全然説得力なんかないから。いやぁ、ク―の愛娘の理想の人って、どんな人なんだろうな?クックッ……きっとク―に妬かれて憎まれて大変になるだろうが……。」

「っそ、そんなことになるわけないじゃないですか!!」

「いやいや、あいつの愛情は重量級だから。可愛い娘の君の『理想』にまでなってみせた野郎のことを、許せるわけがないだろう?それが愛や恋の相手でなくても。」



 「ま、誰かは分かっているつもりだけれど。」と、加藤が嘯く。

 その発言で、キョーコの全身から冷や汗が吹き出した。

 ク―の親バカ加減は、付き人の経験をしたことがあるキョーコは充分すぎるほど理解している。

 その愛情の深さは、キョーコが思わずどん引きしたり、演技を忘れて泣いてしまったほどのものだった。



「わ、分かっていらっしゃるわけがありませんよ。」

「ん?じゃあ、当ててみようか?」



 にやり、と笑ってみせる顔が、何もかもを悟っている表情に見えて仕方がない。キョーコは「ゴクリ…」と唾を飲み込んだ。



「ク―が帰国してきて、君が「父さん」とあいつを呼んだ時にもいただろう?」

「!!??」



 ……バレている……!!



 そう心の中で叫ぶしかなかった。

 一癖二癖ありそうな加藤という男。



 彼のオーラは、よくよく知る人間の『それ』に似ている。



 時にエジプトのファラオとなり。

 時に海賊王になり。

 時に暴走トナカイが引くソリに乗るサンタにもなってみせるその男。



 ―――この人っ!!社長さんと同じ人種だわっ!!―――



 愛の伝道師という噂は聞いたことはなかったが、勘の鋭さと観察眼は確かなようだ。



「そ、そうです!!その通りです、加藤さん!!」

「あ、そうなの?あはは、やっぱりそうか~~~。」



 のほほんとした笑顔が逆に曲者度を増させている。

なぜ、突然こんな話題を加藤がふってきたのかは分からない。

分からないが…とにかく、このままいけば、尊敬し、崇拝している先輩俳優であり。秘めたる想いを寄せる愛しい人の危機を招いてしまうことだけは明白だ。



「そうなんです!!私の理想は、ク―・ヒズリ!!愛しい我が父であります!!」



 だからキョーコは。そう大声で宣言したのだ。



「父と娘でありますし、父は妻帯者でありますから、結婚はできませんが、しかし!!父のような方…いいえ、あの父を超えるような方でありますれば!!このワタクシ、結婚を前提にお付き合いすることも!!結婚をいたしますことも!!幸せな家庭を持つことも!!考えていいと、そう思っております!!」



 ……別に求められてもいない発言までしながら。



「ほ~~~…。ク―が、ねぇ。理想、かぁ~~~~。」

「そうなんです!!アイラブ父さん!!ブラボー父さんであります!!」



 加藤の呟きに対して、『父親激ラブ』を強調してみせるキョーコ。彼女としては嘘は一切言っていないつもりだ。ク―を超える男などそういるはずはない。ゆえに、真剣そのものだった。



―――あ~~~あぁ、この娘は……。すでに『嵐』になっていたのに、『大嵐』にしてしまったなぁ……―――



 加藤に対する『いかに父が偉大であり、理想であり、愛しい人なのか』を主張するキョーコの言葉は止まらない。そして、騒然としながらも回り続けるカメラは止まらない。



 ……生放送中の事故だというのに、誰ひとりとして、騒動を止める人は、いない……



 それらを冷静に見つめていた、『加藤』という今回の嵐の原因を作った人物は。

 嵐の目のようにただ一人、冷静に全ての現象を見守っていた。









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