かけがえのない日々~愛しい人(2)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「…………。」



 じわり、と視界が滲む。



 瞳から零れ落ちたその雫が、一体何の涙であるのか……。



 ―――この娘と、ひとつになることは、できない。―――



 一緒にいてくれるとさえ言ってくれた少女だけれど。

もうニ度と現れない、蓮にとって唯一無二の愛しい人だけれど。



彼女を蓮の一部にしてしまうことはできない。



 それは蓮にとってとても不安で、寂しいことだ。



 けれど……



 ―――一緒に、歩いてくれる人がいる。思い出を、刻んでくれる人がいる。―――



 身体をひとつにできないからこそ、隣を歩いてくれる人がいる。

信じるための勇気をくれる人がいる。

これから歩む道を、一緒に笑い、悩み苦しみながら、過ごしてくれる人がいる。



 しかも、それはキョーコだけではなく、もっとたくさんの人達も一緒なのだ。



「……君一人じゃ、ない……。」



 蓮には、キョーコの他にも大切な人たちがいる。そう思える人たちが、いることが今なら分かる。

 そして、キョーコにも、大切な人たちがいる。



 これからも、そんな人たちは増えていくのだろう。

蓮の人生も、キョーコの人生も。

まだきっと、先は長く、様々な方向に道は広がっている。

全ては未知の世界なのだ。



 それでも。



「……愛しているよ。」



 完全にひとつになることはできないとしても。

 大切な人がこの娘だけではないとしても。



 キョーコを見つめるだけで溢れる想いは、苦しいほどの悦びと幸福に満ちている。



 この感情は、唯一彼女だけが蓮に与えてくれるもの。



「君を、愛している。」



 ―――君のことが……好きなんだ……。―――



 オムライスに描かれた魔法によって紡いだ告白の言葉。

 ずっと秘めてきた……一生、秘めると決めていた想いを吐露するほどに高ぶった想い。



 『あの日』以上に溢れる感情は、この世にはないと思っていた。



 けれど。



「……愛している……。」



 ―――大切なのが、この娘だけではないと気付いた今の方が。彼女を一層、『愛しい』と、思う…―――



 渦巻く感情は、闇に潜む『孤独』を内に秘めながら、天にも昇るほどの喜びと愛おしさに溢れている。



「早く、目を覚まして……?」



 希望に溢れた大きな瞳が開いたその時。

 伝えたい言葉がある。



 ―――……一度目の告白よりも、ニ度目の愛の言葉よりも。大切だと伝え続けたこれまでの言葉よりも。それ以上に溢れる想いを、君に伝えたい……―――



 重苦しい愛情を向けられることは、少女にとって迷惑なものなのかもしれない。けれど、そんなことを恐れるよりも、伝えたい想いがある。



 蓮は、身の内にこもる激しい熱を逃すように息を吐きだすと、そっと瞳を閉じた。









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