かけがえのない日々~愛しい人(1)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「…………。」



 静まりかえった、室内。

 外からの灯りだけが唯一の光源となっている部屋の中で、蓮は暗闇の中にうっすらと捉えることができるキョーコの姿を見つめ続けていた。



 蓮の腕の中でまるで眠るように気を失った少女は、すぐさまかけつけた救急隊によって須永総合病院へと運ばれた。



―――…そうか。今日1日でいろいろあったみてぇだな。―――



 キョーコが検査を受けている間に、蓮と社から話を聞いた須永は、そう言うと、一瞬だけ目を閉じ……。



―――ま、とりあえず。嬢ちゃんはこのままウチで預かるわ。―――



 軽い口調でそう言った後、蓮に笑いかけた。



―――何なら坊主も一緒に泊って行くか?―――



 目を大きく見開く蓮に、須永は満足そうに笑ってみせたのだ。



―――成長したじゃねぇか。出入り禁止はもう、必要ねぇだろ?嬢ちゃんの、傍にいてやれ。―――



「…………。」



 2ヶ月前。

ほとんど記憶にないけれど、同じ場所で同じように、蓮はキョーコを見つめていた。



 『あの日』と同じように、キョーコは瞳を開かない。

 

それでも………。



―――大丈夫ですよ、敦賀さん。検査の結果、特に異常は見られませんでした。―――

―――色々あって、きっと疲れたんですよ。何かあれば、私たちが全力でサポートしますから。―――

―――そうだぞ、敦賀氏!!キョーコ氏はすぐに目を覚ますからな!!君がしっかりするんだぞ!!―――



 周囲の声が、今の蓮には聞えていた。

 キョーコと…そして、蓮を案ずる人々の声が、不安に揺れる心を少し、落ちつけてくれた。



 ……きっと。二ヶ月前も、同じように支えようとしてくれていたのだろう……



 それを聞こうともせずに、蓮は自身の闇に囚われてしまっていたのだ。



「……不思議だね。」



―――一緒に、います。―――



 常闇の中、独りでうずくまっていた男を、抱きしめてくれた少女。

 一緒にいるとさえ、言ってくれた……この世で誰よりも愛しい人。



 ―――身体中に広がるのは、これまで以上の愛おしさ。彼女を想うだけで、胸が潰されるほどの感情を、抱いているというのに……―――



 それなのに。



 不思議なことに、少女が目覚めない現実を、逸らすことなく受け止めることができている。



 ……ほんの2ヶ月前の自分には、できなかったことなのに……



「…………。」



 この2ヶ月間。

 少女に愛を告白した日から、蓮はキョーコに相応しい人間になりたいと、そう願ってきた。

 愛を恐れるキョーコに、愛を肯定してもらいたいと、そう思った。



 ……そのためには、蓮だけではダメだったのだ……



キョーコを大切にしている、友人達。

 キョーコが生きてきた人生を肯定することができる、恋敵。

 キョーコを守ることができる、キョーコのマネージャー。

 キョーコの身を案じる、多くの大人たち。



 世界は決して、蓮とキョーコで完結しているわけではない。

 二人だけで生きていける世界ではない。



 ―――分かって、いたのに……―――



 彼女を守りたいと本気で願った時、やっと周囲を受け入れられるようになった。

 やっと、周りの声を聞くことができるようになったのだ。



「君が目覚めないことが、不安なのに……。」



 それなのに、気が狂うほどの孤独感に襲われることはない。



 目を瞑れば、まず一番に浮かぶのは、キョーコの笑顔だけれど……。

 その後に、どれだけ手を伸ばしてくれても握り返すことができなかった、大切な人達の顔も浮かんでくる。



 ……父さん、母さん。社長、社さん。マリアちゃん、琴南さん……リック……。











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