「つ、敦賀さんは……後悔しませんか?」
「ん?」
「私の『愛』は、重苦しいですよ?」
ショータローとの関係を知っている、彼なら分かるはず。
その求める『愛』の重ささえも。
私と敦賀さんではバランスがとれていないのに……。
「あははっ。君の気持ちが重苦しいレベルなら、俺の想いは窒息するほどの重みがあるな。俺の『愛』はヘビー級だから。」
「そんなこと、ないです。」
だって、敦賀さんはいつだって飄々としていたもの!!私がどれだけ翻弄されたか、この人は分かっていないんだ!!
「分かっていないのは君の方だ。……俺の手を取れば、すぐ分かるよ。」
「だから。俺の手を取って?」と。
言った彼の言葉を、私は信じていなかったけれど……。
差し出された手が放つ、得も言われぬ魅力に負けて……。
******
「君の言うとおり、バランスは大事だけれど。」
フラフラと、彼の手に己の手を重ねてしまった、1年後。
「俺達は、とてもバランスがいいと思うよ。」
少し膨らんだ私のお腹に手を触れながら、嬉しそうな笑顔を浮かべる彼を見ながら、もう、私は肯くことしかできなかった。
彼の隣に立つことが当たり前になり。
彼が私に甘えることが当然のことになり。
私が怒るほど彼が私を甘やかすことが毎日のことになり。
彼が私の隣で神々スマイルを浮かべる日々が重なることで。
『敦賀蓮』、『クオン=ヒズリ』という二つの顔を持つ男性の、情けないところも、深い闇にもふれる日々で。
決して光輝くだけの存在ではない彼を知ることで、私と彼は、お互いを信じ、支え合うことを誓うことができた。
「何より身体の相性もいいことだしね?」
「~~~~~もうっ!!」
「あははっ。…はやく、一緒に遊びたいな。」
「元気に生まれておいで。」と私のお腹に語りかける、少年のような瞳をした男の人を見て、私は笑顔を浮かべた。
「バランスのいい二人の子どもなんだから、きっといい子だよ。」
「……そうとも言い切れませんよ。何せ『私達』の子どもですから。」
「…………。まぁ、大丈夫だよ。二人で育てれば。」
「………。そうですね。」
これからも続く、二人で歩む道。
不安な時もあるだろう。迷うこともあるだろう。
でも。
アンバランスな二人で支え合えば、うまく生きられる。
「「俺(私)たち、バランスだけはいいからね(ですから)。」」
(バランスが大事です FIN)