かけがえのない日々~浮上の時(2)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

……『それ』は決して、他人に見せたくないものなのかもしれない……



 心に巣食う、醜い感情。

 目を背けたい、己の過去。

 犯した罪を、償うことができない穢れた手。



 『己』を守るためにも、他人に見せたくはないもの。



 ……本当は、見ないふりをしてあげるのが、優しさなのかもしれない……



 それでも。

闇に沈む蓮はキョーコに触れてくれた。

 震える冷たい身体全てで、キョーコを必要としてくれた。

 キョーコとひとつになりたいと、その内なる想いを行動で示してくれた。



―――キョーコはキョーコであって、蓮にはなれない。―――



 どれほどお互いを必要としても。



心も身体も、過去も今も未来も、全てを一緒にすることはできない。



 でも、だからこそ。



「ひとりになんて、絶対にしません。」



 冷たい身体を、抱きしめることができる。

 蓮自身が嫌う『彼』を、愛することができる。

 全てを諦めて沈みこもうとするその手を、掴むことができる。



―――ひとつじゃないからこそ、独りにはしない。―――



 彼が望む感情かは分からない。

 孤独を望む彼を、独りにしないことは残酷なことなのかもしれない。

 それでも……。



―――私の『愛』は重苦しくて……。粘着質なんだもの。―――



 愛した相手の、全てを知る事を望んでしまう。

 振り払われようとも、その手をつなぎ止めようと、必死に追い縋ろうとする。



 愛した人を、一番理解できる人間でありたいと、思ってしまう。



 昔から、そうだったのだ。



「敦賀さん……。」



 蓮の耳元で、囁く『彼』の名前。



 彼を呼ぶ声が、キョーコの声でいいのか分からない。

 彼の手を掴むのが、キョーコでいいのか分からない。

 彼を抱きしめる腕が、キョーコの腕でいいのか分からない。



 本当は、もっと相応しい声も手も、腕もあるのかもしれない。



 けれど。



―――…君のことが……好きなんだ……。―――



 掠れた声で、伝えてくれた告白。



―――俺も、君を愛してくれた人と、話がしたい。―――

―――君の話を、たくさんしたいよ。―――



 穏やかな声で伝えてくれた、キョーコへの溢れるほどの優しさが詰まった想い。



―――貴方もまた、私の『孤独』に手を伸ばしてくれたから……―――



 勝手にキョーコが抱える『孤独』に触れてきたくせに。

 自分は触れさせないだなんて、不公平だと思うのだ。










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