「『独り』にして、ごめんなさい。」
「…………。」
「気付いていたのに。貴方のこと。」
まだ触れているのは怖い。触れた先から、傷つけてしまうのではないかと。
そんな不安が、身体中を駆け巡る。
そんな恐怖に震えながらも触れる、少女の頬に当てた掌。その甲に、そっとキョーコの小さな手が触れる。
「嬉しい……。」
「え……?」
「貴方に会えて、嬉しい。」
「っ!!」
キョーコのその言葉を頭が理解した瞬間。
本能的に、欲した存在を掻き抱く。
―――闇に沈む『俺』に、感情なんてないはずなのに……―――
誰の手も届かない暗闇の底で、誰に触れられることも望まずに生きてきたのに……。
それなのに、触れてしまった。
欲しいと思ってしまった。
決して望んではいけないのに。
……抱きしめた存在を、身体の中に取り込みたい……
……ひとつに、なりたい……
蓮は必死になってキョーコを抱きしめる。
―――こんな大男が、力任せにか弱い女の子を抱きしめるなんて……―――
痛いだろう。
苦しいだろう。
こんなにも力の限り抱きしめたら、息もできないに違いない。
分かっている。
でも、腕を緩めてあげることができない。
―――嬉しい……。―――
少女は、そう呟いたのだ。
犯した罪を償う方法を知らず、弱って傷ついたまま、底知れぬ闇に沈んだ心。
そんな息もできない、他の誰も立ち入ることのできない心の底へ、少女はたった独りでやってきた。
そして、もはや一生、浮上することなどできない脆弱な心に手を伸ばしてくれた。
真っ白な少女を取り込もうと懸命になる細胞全てが、穢れているのに。
触れるその先から、彼女を汚していくと分かっているのに。
―――…ひとつに、なりたい…―――