かけがえのない日々~SweetHoney2(2)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

 何も映すことのなかった世界が白一色に変化する。

 何も聞こえなかった世界に、囁きのような声が聞こえてくる。



 そして。



「……キョ―コ……ちゃん……。」



 凍える闇の世界に広がる、ぬくもり。

 頭を包みこんでくれる、細い腕。

 左耳に響く、少女の生きる鼓動の音。



 ……その全てが、少しずつ、闇に沈む『男』の身体を、温めていく……



「………聞こえますか……?」

「…………。」



 蓮にしか聞えないほどの、小さな声。その声で、問われたこと。

 彼女の柔らかな胸に頭を抱かれながら、瞳を閉じる。



―――聞こえる。確かに、彼女の生きている証の音が……―――



 トク、トク、トクと刻まれる、愛しい命の音。

 少女を生かす、脈動が。

 蓮のものとは違う、脈打つ音が、聞こえる。



「……触れて……。」

「え?」

「君に、触れても……いい?」



 掠れた声で、問うた言葉に。



「……どうぞ。」



 穏やかな少女の了承の答えが得られる。



「…………。」



 ゆっくりと瞳を開けて、少女の腕の中から顔を上げる。



 眩しい光が射し込む世界の中で。泣きそうな顔で微笑む真っ白な少女がいた。



「……こんなところまで、手を伸ばして……。」



 深い深い、闇の底。心の底にある『その場所』までは、計り知れない距離があるというのに。



「何かあったら、どうするの……?」



 触れたら最期、切刻まれる可能性だってあるというのに。

 闇に潜む狂気は、愛しい人にも簡単に牙を剥いてみせるのに。



 それなのに、真っ白な少女は、闇に沈む男の傍に、たった一人でやってきた。



「何があっても構いませんよ。」



 そして少女は、慈愛に満ちた聖女のような微笑みを蓮に向けてくる。



「貴方のもとに辿り着けるのなら。」

「…………。」



 眩しい、光のような娘。

 彼女の笑顔に、彼女の言葉に、彼女の香りに、彼女の温もりに…彼女の、存在に。

 沈んだ闇の底にはいつも、光が射し込んだ。

 何度も何度も、彼女に救われて、光の世界で歩む『男』は、息をすることができたのだ。



 でも、闇の底で沈黙をしていた『男』は……。



 光の世界を歩む男の中で、ずっと息を殺して…。だが、誰にも見られないその場所に『独り』、『存在』し続けた。



 だが、今。



「…………温かい……。」



 焦がれた、光に。

 唯一求めた少女に。

 いつも『敦賀蓮』という光の中に立つ男の奥底で『独り』、見つめていた存在の頬に今、触れている。









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