かけがえのない日々~深淵(1)~ | ななちのブログ

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馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「………も、がみさん………。」



 意識を取り戻したのは、自分自身が無意識の中で呟いた、いつも呼ぶ愛しい少女の名前を耳にした瞬間だった。



 目の中に飛び込んできたのは、恐ろしい場面。



 ニ度と起こさせないと誓った、キョーコの危機。

それなのに、目の前で起こった出来事。

それは、蓮の全身を凍らせるのに充分な衝撃を与えた。



「はい、敦賀さん。」



 堕ちてくる少女。

 伸ばした手。

 全身に与えられた衝撃と、そして……確かな、温もり。



「大丈夫?最上さん。」

「はい。敦賀さんが、助けてくださいましたから。」



 問えば、返ってくる答え。

 蓮の腕の中にいる存在は、ぎゅっと抱きしめれば、その細い腕で蓮を抱きしめかえしてくれる。



 すっぽりと、身体に収まる存在のその温もりと香りを感じることができて、やっと全身の強張りがほどけていく。



 助けたはずの少女に、助けられる。



「そう……。間に合ってよかった、本当に。」

「すみません、お騒がせしました。」

「いや。無事でいてくれたなら、よかった。」



 ほっと息を吐き、キョーコを腕から解放する。

 すると、少女は蓮の腕の中で一度にっこりと微笑んでから立ち上がった。

 その姿を認めてから蓮も立ち上がり、改めてキョーコを見つめる。



「どこも、ケガをしていないね?」

「はい。敦賀さんこそ大丈夫ですか?私を受け止める時にどこか打ったり……。」

「大丈夫。どこも痛めていないし、すりむいてもいないよ。」



 互いの無事を確認しあうと、やっと蓮も笑顔を浮かべることができた。

 もしかしたら、引きつった笑みになっていたかもしれないけれど、それでもキョーコは安心したような笑顔を返してくれた。



「京子!!敦賀君!!」



 しばらくそうして見つめあっていると、複数の人間が走る足音が聞こえた。

 振り返ると、黒崎と、数名のスタッフが向かってくるところだった。



「状況は京子のマネージャーから電話で聞いた。災難だったな……。」

「大丈夫です。どこもケガをしていませんし。」

「そうか。無事で何よりだ。」



 蓮とキョーコの無事を確認すると、黒崎は「ふぅ」と安堵の溜息を吐き、それからニヤリといつも通りの余裕のある笑顔を二人に向けた。



「だが、一度病院に行ったほうがいい。今は分からんが、後から痛みが出てくるかもしれねぇからな。」

「そうですね。」

「じゃあ、今日はもう解散だ。撮り直しについてはまた日を改めて「いいえ。」」



 俳優とタレントの体調を気遣った黒崎の言葉を遮ったのは、キョーコだった。



「敦賀さんさえよろしければ。……このまま、撮らせてください。」

 










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