かけがえのない日々~恐れるモノ(3)~ | ななちのブログ

ななちのブログ

このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「お~~い、お2人さん。」

「「はい。」」



 2人の間に続いた沈黙を破ったのは黒崎だった。



「とりあえず、20分休憩するぞ。」

「え!?」

「ちょっと気持ちを切り替えてこい。」



 黒崎は時計を確認しながら、何やらブツブツと口の中で呟きながら2人に近付いてくる。



「そんな!!私ごとき人間の不出来のために皆様にご迷惑をおかけするわけには……っ!!」

「ちょっと待った。『君ごとき』とはここの現場にいる人間は誰ひとり思っていねぇ。君は立派なタレントで女優でもあると、俺達全員は思っている。」

「っ!!」



 眉を下げ、続きそうな卑下の言葉を遮ろうと口を開いた蓮の先を越し、黒崎がきっぱりと言い切る。



「その上で、君の気持ちが落ち着くまでの時間を与えたいと俺は思った。それだけだ。20分しか与えねェのはむしろ乱暴だが、君にはそれ以上与えたところで苦痛にしかならないだろう。そう判断した。」

「監督……。」

「敦賀君の『あの男』を見て怯んで足が動かないっていうのは当然の反応だと俺は思う。それは素晴らしい感受性だ。ククッ……。むしろ面白れぇ……。」

「え?」

「いやいや、こっちの話だ。なぁ?敦賀君?」



 「ん?」と話を振られて、蓮は言葉に詰まる。それから静かに黒崎を睨みつけた。



 蓮の中に巣食う狂気を纏う『男』。

 それをCMに使うと言いだしたのは、この目の前にいるチンピラのような身なりの男だ。

 それゆえに、黒崎は決して『独』の中に生きる男をただの演技だとは思っていない。



「最上さん。よかったら、俺と監督の分のコーヒーを買いに行ってきてくれないかな?」

「え?」

「自販機があるから。場所は社さんかセバスさんに聞けばいい。」

「あ、はい!!分かりました!!黒崎監督は何のコーヒーがいいですか?」

「ん?俺?微糖のやつなら何でもいいぜ。」

「了解いたしました!!では、行ってまいります!!」



 ペコリ、と90度のお辞儀をした後、キョーコは社とセバスが待機している場所まで駆けだして行く。



「おいおい、後輩をパシリにするのか?」

「……俺が彼女を、そんな扱いするとお思いですか……。」

「すまん。思わない。だからそう睨むな。」



 少し離れた場所では、社とセバスに確認を取り、社からお金を渡されて頭を下げるキョーコがいる。

 再び駆けだした彼女がスタジオを出て行くのを見た後、社が蓮達の方へと視線を向け、手を上げてみせた。










web拍手 by FC2