(side蓮)
俺の目の前には、バラの妖精が立っていた。
「やぁ、最上さん。」
彼女のために準備した、深紅のベアドレス。スカート部分にバラのモチーフがついたドレスは、彼女の曲線美を惜しげもなく見せつけるミニ丈だ。
まるで最上さんのためだけにデザインされたかのようによく似合っている。
「え、えと……。あ、あの……????」
「あぁ……可愛いね。うん、やっぱり俺の見立ては間違いなかった。」
階下にいる愛しい少女に、腕に抱えた深紅のバラを持って近付いていく。
君の前ではこんなバラ、霞んでしまうけれど……。
「さぁ、俺の女神様。俺からのプレゼント、受け取ってくれるよね?」
今日が俺達二人の記念日になる。そんな記憶に残るべき日に、何も渡せないようなことでは格好がつかない。
「さぁ、受け取って?」
傅き、差し出したバラは、いつまでたっても受け取られる気配がない。だから無理やり少女の腕へと押し付けると、慌てた様子でバラの花束を受け取ってくれた。
……うん。確かに贈った花は、美しすぎる最上さんの前では霞んで見えるけれど…彼女自身が倍の輝きを放ってくれる。
「あぁ……綺麗だよ。」
思わず、溜息が口から零れ出る。
バラを抱えて茫然とたたずみ、美しい人。
何も分かっていない、俺の穢れなき女神。
どれだけ閉じ込めようとしても、独占しようとしても、するりと俺の腕をすり抜けて、どうしてそんな方向にいくのだと訴えたくなるほど、俺の気持ちを曲げに曲げて理解する憎らしい存在。
でもね?最上さん。
俺は君を逃がすつもりはないんだ。
君がどれだけ俺の腕から逃げようとしても、俺は君を腕から離すつもりはないし、例え逃げ出したとしても、追いかけて捕まえる。
これまではうまく俺をかわしてきたつもりなんだろうけれど……。
今日こそは。
「今日こそ、俺の女神を捕まえる。」
だから、覚悟して。ね?