Sei様罠リク~バランスが大事です(5-1)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「見てくださいよ、敦賀さんっ!!ステキでしょ!?美しいでしょ!?完璧でしょう!?このお方こそが『敦賀蓮』に相応しい方ですよ!!」

「…………。」



 キラキラと瞳を輝かせ、熱弁する愛しい少女。その手に握られている雑誌を見ながら。



「……勘弁してくれ……。」



 小さな声で呟いてしまったのは、仕方のない事だと思う。







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『もしもし、敦賀さんですか!?』



 最上さんの声を聞いたのは、実に3日ぶりだった。



 心が通じ合った相手と、想いが通じ合っていなかったことを知った3日前。その日から俺は、彼女へのラブコールを欠かさないことから始めた。

 地道な策ではあるが、何をするにもまずは捕まえておかなければ意味はない。

 彼女の方から一切返信はないが、期待はしていなかった。とにかく暇があれば電話をし、『愛している』というメッセージを残したし、メールをしては『君だけだ』と伝え続けた。暇を惜しんで囁き続けることで、とにかく俺の気持ちに一切の迷いや曇りはないことを訴え続けた。



『付き合っていない』状況ではあるけれど、嫌われてはいない。…むしろ、好かれているわけで……。何か難しい状況なわけだがっ!!(彼は今、混乱しています)



 そして3日間無視され続けたこの日。俺は最後の『泣き落とし』をする気で携帯電話を握っていたのだ。

…最上さんは、俺の泣き落としに弱い。

カインの時だってワガママを聞かせるためにちょっと悲しい顔をしたら折れてしまったような可愛い娘だ。



本気で俺が泣きながら会いたいと言えば、絶対に会ってくれるはず。…というより、俺は本当に泣きたい!!何これ、本当に何なんだ、この状況!!(彼は今、悲嘆にくれています)



 そうしてすでに涙ぐみながら電話をかけようとした時。なぜか、3日間無反応だった最上さんの方から電話がかかってきたのだ。



『あのですね!!よろしければ、これからお会いできませんでしょうか!?』

「うん、もちろんだよ、最上さん。俺、今、自宅なんだ。よければ来てくれるかな?」

『はい、もちろんです!!』



 あまりに明るい声で『会いたい』と言ってくるものだから、俺は彼女を俺のマンションに誘った。

 

 ここなら彼女は籠の中の小鳥のようなものだ。

俺の思う通りの応えを出してくれるなら結構。そのまま甘い世界へ一緒に旅立って、ニ度と離れられないようにするだけだし。

…俺の思い通りじゃないならば……『是』というまで閉じ込めておくだけだ……(彼は今、完全なるブラックヒーローです)。



 そうしてやってきた、俺の可愛い可愛い小鳥。

 俺が何を思ってこのテリトリーに呼んだのかを露とも知らない俺の天使。

 

頬を紅潮させ、幸せそうに微笑む愛らしい存在に、手を伸ばしたいのを堪えてとりあえずリビングルームへ案内したその先で……



「ほら、見てください!!この方こそが、敦賀さんに相応しいお方ですよ!?」



 座ってそうそうに鞄から取り出した雑誌。それをババ~~ンッと広げられて視界いっぱいに飛び込んできた人の顔。

 それを見て。

 俺は、石のように固まった。







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