「敦賀さんは190センチメートル以上の長身ですから、彼女さんが170センチメートル以上あっても全く問題ありません。むしろ175センチくらいあるほうが、迫力があってお似合いだと思うんですよ!!」
「いや、だから俺は162センチメートルの君がいいんだって。」
腕の中にすっぽり収まってしまう可愛い君。その君こそが理想だと言っているのに……。
「えっ、そうなんですか!?いや…でも、ほら、画的にあまり相応しくないですよ?」
「画的とかそんなことじゃなくて。俺は君だけが好「分かりました、162センチメートルですね?私の美的感覚としては認められないところがありますので、優先順位としては低くなると思いますが、それも彼女さん候補の選定基準にいれておきます。」」
『君だけが好きなんだ』と続けるはずの言葉に被さって、彼女は大変不服そうに『敦賀さんの彼女リスト』と題された、謎のファイルに書き込みを入れる。
……っていうか、不服に思うところのポイントがずれているっ!!
「最上さん。」
「はい、何ですか?」
「むむっ、でもこの項目を付け足すと探すのがより一層難しいわね。」と、謎の言葉を呟く俺の憎らしくも愛おしい存在。
「君、俺のことが好きなんだよね?」
「ふぇっ!?」
そんな彼女に、恨めしげに尋ねた。
「好きなんだよね!?」
あの日。一世一代の大告白をした日に返してくれた言葉。夢にまで見た至福の言の葉が、本当に夢であっただなんて思いたくない!!
「あ、あの…その……。」
「うん。好きだよね?」
「あっ、あう……。」
目の前の少女は、俺の問いかけに全身から湯気が出そうなほど真っ赤に発熱して、モジモジと手を組み合わせ、視線を彷徨わせ始めた。
「俺のこと、愛しているよね?」
「へぅっ!!……あっあの……。そっ、そのぉ……。」
俺の畳みかけるような言葉に、少女は一通り動揺した後。
「ハイ……。その、好き、です……。」
「ぽっ」と音が出るほど頬を染めて、まさしく恋する乙女の表情をしてみせた。
「俺も君が大好きで、愛しているんだ。だからこれから恋人同士になって、愛し合っていくんだろう?」
「いいえ、恋人にはなりません!!お付き合いなんて言語道断です!!」
お互いが想い合う「両想い」。恋の順路としては、片想いが成就して、両想いになり、その先は。
「お付き合いが始まって当然だろう!?」
「いいえ!!敦賀さんは貴方自身のことを全っ然理解していないんですね!!あなたはこの業界で『抱かれたい男№1』で『芸能界1イイ男』の殿堂入りをしているようなすごい方なんですよ!?」
「この均整のとれた美貌をご覧くださいっ!!」と突き付けられたのは確かに俺自身(約30センチメートルに縮小されたもの)。毎日毎日嫌でも目にするよく見慣れた姿だ。
「この美しい方には、絶対にそれに似合う、素敵な女性がいなければならないんです!!」
「だから、それは君のことだろう?」
「いいえ!!こんな呪われたどピンク繋ぎの女なんて、誰も認めません!!というより、私が絶対に認めません!!」
続いて突き付けられたのは、俺の大切な大切なお姫様の人形。俺の人形と彼女の人形が並んでいる姿は、至極当然のことでこれほどお似合いのカップルはいないと断言できるのだが。
「敦賀さん!!王子様の横にはお姫様…。いいえ、王様の横には王妃様がいなければならないんです!!」
「そうだね、だから俺の横には最上さん。君だろう?」
「いいえ!!敦賀さんのようなさながら王様のような雰囲気をお持ちの方には、私のような一般庶民など全く似合いません。月とスッポンどころか、月とミジンコレベルです!!」
「王子様の横にお姫様なら、俺の横に君でいいじゃないか!!」