(side蓮)
「ですから!!私、決めたんです!!」
「ちょっと待ってくれ、どうしてそうなるんだ!?」
キラキラと目を輝かせる愛しい少女。大きなこげ茶色の瞳は、星を散らしたかのような輝きを放って本当に美しい。頬が紅潮した愛らしい表情は、誰にも見せたくないほどの可愛らしさだ。
今日の最上さんも可愛い。本当に可愛い。「どうしてくれようか、この娘は」と思ってしまうくらいには絶好調な可愛らしさだ。本音を言うと、抱きしめて腕から離したくない。
「どうしてそうなるもなにも。だって、おかしいと思いませんか?『この御方』と『これ』ですよ!?」
愛しい少女のその声も、また鈴が鳴るような可愛らしさだ。耳に馴染むその声は、聞くだけで幸せになれる。朝からこんな声で起こされた日にはたまらないなと妄想……いやいや、想像してしまうような愛しい声なのに。
「……。この二人のどこがおかしいっていうの?全然おかしくないじゃないか。」
「おかしいです!!だって、『世界で一番美しい男』の横に、『呪いのどピンク繋ぎ女』ですよ!?」
紡ぐ言葉は残酷で。…彼女のその手の中には……。
「それにしても、そっくりだね。この『最上さん人形』。」
「もちろんです。スリーサイズから何から何まで完璧に模写していますから。」
「……。そう。」
いつ見ても引いてしまいそうになる俺そっくりの人形と。こんな状況なのに「欲しい」と思ってしまうくらいに可愛らしい、ラブミー繋ぎを着た最上さん人形が握りこまれていた。
*****
俺の恋人だと信じてやまなかった少女とすれ違うことすらできなくなって1ヶ月と18日。
「最上さんっ!!」
「ふぅえぃ!!??」
「え!?え、ど、どこ!?キョーコちゃん、どこにいるの!!??」
再会は偶然だった。俺はもちろん、彼女や社さんだって予想だにしていなかっただろう。
出会ったのは、LMEのロビー。突然ドラマの相手役の予定で仕事がキャンセルになり、社さんが事務処理に一度事務所に戻りたいと言いだした事から起きた奇跡だった。
彼女は目に痛いどピンク繋ぎを着ていなかった。しかも、廊下の角を曲がる途中だったため、俺の目には髪の一房が一瞬だけ視界に入っただけだった。
彼女の髪の色は別に珍しい色じゃない。今の日本にはどこにでもいる、茶色い髪だ。
だが、俺の皮膚…というか、身体全体が反応したのだ。
彼女がいる、と。
『敦賀蓮』の優雅な歩行すら忘れて必死に走って追いかけた俺は、なぜか潜在能力フル活用で逃げまくる愛しい少女を5分後、無事に腕の中に確保することができて。
俺は彼女を抱き上げたまま、ラブミー部へと直行した。
部室の中には琴南さんと天宮さんがお茶を飲みながらくつろいでいたけれど、俺の姿を見た瞬間になぜか青ざめ、そそくさとその場を退散してくれた。
そして無事、彼女と二人の空間を確保した俺は、手を離した瞬間に飛ぶように部室の隅っこまで避難した少女を追い詰めて……。
*****
そしてなぜか今、俺の彼女になったはずの最上さんが、キラキラした瞳で彼女以外の女性達と俺の相性について語り始めたのである。