「いやぁ、美味しいよ、キョーコちゃん!!さすがキョーコちゃんだね!!」
「えへへ…。そうですか?よろしければたくさん食べてくださいね?」
「ありがとう!!やっぱり朝はしっかり食べないとな!!馬力が出ないからね!!」
「そうですね。 あ、これもお一つどうですか?」
「美味しそうだね、いただくよ!!」
爽やかな朝の日差しが射し込むリビングルーム。宝田邸のゲストハウスで毎日のように繰り広げられるようになった朝の食卓には。
いつもと違う顔があった。
「…………。」
「?おい、どうした?蓮。さっきから箸が止まっているぞ。」
「?どうかなさいましたか?」
蓮の右隣から眉をしかめた眼鏡のマネージャー殿が、蓮の向かいの席からは、小首を傾げた愛しい少女が箸を止めた蓮を見つめている。
二人は蓮を心配そうに見ている…のだが。
「いえ。やっぱり面白くないな、と思いまして。」
「?何がだ?」
「?何がですか?」
憮然とした表情で答えた蓮に対して、同じように眉を顰めながら尋ねてくる二人。
「……。そういうところが、ですよ。」
「「??え?」」
思い返してみれば、キョーコと再会してからの1年間。蓮はキョーコと過ごす大抵の時間を社と共に過ごしていたのである。
…そして、よくよく思い返してみると。この二人は示し合せたかのように同じような言動をしてみせていたのだ。
「そもそも最上さんは社さんには最初から愛想が良かったんだ。」
「?そうなんですか?」
「いや、普通だろ。怪我の応急手当をしてあげて、邪険にされるほうがおかしいじゃないか。」
「……。俺が抱き上げた時には拒絶されましたけれどね……。」
「あぁ、そういえばそうだったな。あれ見ただけで俺、お前とキョーコちゃんは仲悪いんだろうなぁって思ったもん。」
「……。話が見えませんが…ここは私が謝るところですか?」
「いやいや。大方蓮の奴が意地悪ばっかりしていたんだと思うよ?現にあの時のキョーコちゃんは『蓮が意地悪する』って言っていたから。」
「でも、俺と初めて会った時に俺のことを呼び捨てにした上に絶望に打ちひしがれたようになっていたのは最上さんのほうだったんです。」
「……それは申し訳ございませんでした……。」
社との初対面は覚えておらずとも、蓮との初対面はキョーコも覚えている。当時、『敦賀蓮』のことが大嫌いだった幼馴染の影響で、反射的に『敦賀蓮』への拒絶反応が出てしまった結果であった。
「でもその後の敦賀さんの対応も、『紳士』としてはどうかと思いますよ?」
「……。それは、ごめん。反省している……。」
「……あんまり素直に謝られたらこっちもどうしたらいいのか分からなくなるじゃないですか……。」
確かに、その後の反応は、『紳士』の敦賀蓮らしくなかった。なぜか『敦賀蓮』としての初対面の時から、彼女の事に関しては感情を偽りきれないところがあったのだ。
「まぁまぁ。過去のことはいいじゃないか。で?蓮君は何が面白くないんだ?」