yununo様からのリクエスト~姫を守るは…(2)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「ふっふふっふ~~~ん♪」

「どうしたんですか?やけにご機嫌ですね。」

「そりゃ機嫌もよくなるってもんさ。見ろ!!蓮!!」



 「じゃっじゃ~~~ん!!」と自慢げに社さんが差し出したのは、彼のスケジュール帳。びっしりと『敦賀蓮』の仕事の予定が書き込まれたその手帳には、いくつもの訂正が入れられ、もはや読み取るのも不可能なほどだ。



「……。すごいですね、このスケジュール。」

「……だろ?恐ろしいよな。っていうか、これだけの仕事、お前はこなしているんだからな?」



 社さんが風邪をこじらせて最上さんが代マネとして俺を支えてくれた一件でも活躍したスケジュール帳。あの時には、まだ俺でも読み取れるだけの余裕があったのに、今ではもはや読解不可能なほどに余白がない。



「こうして見ると、本当に社さんのスケジュール管理には感服します。」

「いやいや、だからお前の仕事をこなす能力のほうがものすごいんだって。もはや化け物級。」

「…………。」



 俺は本気で社さんを尊敬したのに、彼は俺を人間認定していない発言をして、「ほら、さっさと歩けっ!!」と促してくる。言い返したいのだが、普段からその機械クラッシャーぶりとファンの女の子達を瞬時に凍らせるフリーザーぶりで人外扱いされている社さんに言える嫌味な言葉が思いつかない。

 仕方なく黙って彼の後に続いて歩くと、社さんは「ふんふん♪」と未だに機嫌よく歩を進めていた。



「それで、このスケジュール帳がどうかしたんですか?」



 読解不能の手帳を見つつ、疑問に思うことを口にする。このスケジュールの何が嬉しいのかがさっぱり分からない俺に、社さんはご機嫌のまま月間予定が事細かに書かれたページの、ある1日を指差す。



「この日なんだけれどな。よく見てくれ。」



 その指された日…来週の水曜日は、元々は現在撮影中のドラマ撮影と雑誌取材の仕事が入っていたようだ。だが、そこに修正するかのような二重線が引かれている。



「……もしかして、オフ…ですか?」

「そうっ!!半年ぶりの1日オフだっ!!」



 「いやぁ、本当によく働いたよなッ!!」と、満面の笑顔で社さんは俺の持つ手帳を見つめる。



「オフ…ですか。」



 嬉しそうにはしゃぐ社さんを横目に見ながら、俺は突然おとずれた『休み』に困惑する。

 仕事を最優先してきた『敦賀蓮』の生活。ほとんど休みなく働く日々の中…24時間の自由を与えられても何をしたらいいのか分からない。



「……。お前、もしかして、オフが嬉しくないのか?」

「いえ。…ただ、何をしたらいいのか分からなくて。」



 普段、分単位のスケジュールをこなしているから、長時間の自由をどう活用したらいいのか分からない。前から分かっていたオフであればこんなことにはならないのだが…。



「お前って奴は、本当に仕事ともう一つのこと以外には興味がないんだなぁ~~。」



 「『敦賀蓮』がオフの時間の過ごし方に迷っているなんて、お兄さんは悲しいっ!!」と、社さんは嘆いてみせる。



「…はぁ。…申し訳ありません……。」



 そう言われても、特にやりたいこともないのだから仕方がない。だが、あまりに嘆くマネージャーの姿に、とりあえず謝罪の言葉を述べた。



「まぁ、そんな事だろうと思ってだな?優秀な蓮君のマネージャーの俺は、ちゃ~~んと、蓮君の事を考えて色々調べておいてやったんだ。」

「……。」



 自分で優秀などと言ってしまえる社さんに、どう返したものかと思ったが…。確かに優秀なマネージャーである社さんに否定の言葉をぶつけることもできないし、かといって「そうですね」などと同意を示すのもなんだか癪に障る。だから無難に黙って話を聞くことにした。



「聞いて驚くな?なんとこの日はな!!オフなんだよ!!」

「……?はい。そうですね…。オフ、ですよね?」



 社さんは、普段は知的に光る瞳を、今は乙女のように大きく見開き、キラキラさせながら再びオフであることを強調する。…強調するが、それ以降は無言で…ただその視線一つで俺に声なき声を伝え続けてくる。



「……。…ありがとうございます……。」

「おっ!!伝わったみたいだなっ!!ふふ~ん、優秀な俺に感謝しろよ!!」



 その女子高生のような瞳…。それは、ある少女が関わった時だけ現れる『乙女ヤシロ』氏の瞳だ。

長年の付き合いと、これまでの経験から誰のオフの話をしているのかを理解してしまった俺は、深々とマネージャー殿に頭を下げた。



「しかもな。今から事務所に寄るだろう?」

「はい。」

「キョーコちゃん、ラブミー部の仕事で事務所にいるみたいなんだ。ちなみにお前は取材さえ済めば2時間は自由の身。」

「!!」



 優秀すぎるマネージャーは、大きく目を瞠る俺に、「いやぁ、実に一ヶ月ぶりの逢瀬だなっ!!」とニヤリと得意げな笑みを浮かべて言った。



「デートの約束、しっかり取りつけてこいよ?蓮君。」



 社さんのその言葉に、思わず『敦賀蓮』の表情を崩し、素で笑ってしまったのはここだけの話だ…。







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