「……お二人は、両想いなんですか?」
私はクリスマスイブに出会った京子ちゃんを思い浮かべる。
―――私。…好きな人が、います。―――
雑誌取材の仕事であった彼女は。本来ならば律義に答える必要もないのだろう、恋愛の話について、真摯に答えてくれた。
全身を真っ赤にしながら、とても綺麗な笑顔を浮かべて言った彼女。まだ10代の女の子がかみしめるように言ったその言葉は、その恋が決して簡単なものではないことを感じさせた。
「はい。」
「その点に関しては肯定しておこう。」
「そう…ですか。」
どんな相手か気になったけれど、まさかLMEの看板俳優とはあの時には思いもよらなかったわ。…てっきり、叶わない恋をしているのかと思っていたし…。
「では、なぜお付き合いをされないのですか?事務所が止めていらっしゃる…とか?」
「そんな野暮なことするわけねぇだろ。俺は京子の変化が物凄く嬉しいのに。どっちかっつぅ~と、今すぐにでも付き合わせて、記者会見を開きたいぐらいだ。」
『愛の伝道師』として業界内でも有名な宝田社長は、私の発言に対して不本意そうな表情をしている。
「では、なぜ?事務所が反対していないのなら、何も障害なんてないでしょう?」
宝田社長に向けていた視線を、敦賀蓮に向ける。すると、彼は眉を寄せ、困ったように笑ってみせた。
二人が両想いであり、あの濃厚なキスが互いの同意の上での行為であるとしたら、噂をたてられる前に公表してしまったほうがいい。今回の件は私が撮ったスクープだからよかったが、LMEを恐れもしない、妙な雑誌社に撮られていたら取り返しのつかないことになっていたかもしれないのに。
「…俺も、本当はすぐにでも彼女と付き合って、交際会見を開きたいんですよ。彼女には、妙な虫が山ほど群がりますからね。」
「…あぁ。そうでしょうね……。」
あの取材の時の悩殺スマイルには女の私でもグラリときたものね…。思わず世の男どもの恐ろしさを伝えて身の安全を守るように諭してしまったけれど、あんまり分かっていなかったみたいだし。敦賀蓮も苦労しているんでしょうね……。
「では、なぜお付き合いをなさらないんです?」
「彼女にとって、時期尚早のようだから、です。」
私の問いに、静かに答える敦賀蓮。
「時期尚早の『ようだから』…ですか。」
「はい。」