サマンサ様からのリクエスト~VSつるが(6-3)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「大体ねぇ、来週金曜日のこの子のオフは私との予定で埋まってんのよ!!恋人だろうが父親だろうが、相手の都合も考えずに自分の都合のいいようにしようとするだなんて、最低男どもね!!」

「「っ!!!???」」



 俺はこれまでの22年の人生の中で、『最低男』などと呼ばれたことはない。…それはもちろん、フェミニストとして有名なヒズリ氏だって同じだろう。これまで、女性には紳士的な対応を怠ったことなどないと自負していたために、刺さった矢は致命傷だった。



「さ、キョーコ。とっととこんな茶番劇からズラかるわよ。」

「モ~子さん…。素敵…。伝説の勇者様みたい……。」

「バカなこと言わないでよ!!…あぁ、そうそう。来週の金曜日のキョーコの正式な予定ですけれど。キョーコが一番好きな『琴南奏江』という人間とのデートです。恋人より愛している親友と、ウィンドウショッピングをして、昼食を食べ、映画を見てカラオケに行き、その後、キョーコの本当の父親と母親の代わりとも言える『だるまや』の大将と女将さんと夕飯をいただく予定をしています。…自分がキョーコの中で一番だなどと思いこんでいるバカ男とのデートでも、自分が真の父親だと言い張るバカ男とのデートでもありませんので!!」



 「フンッ!!」と最後に鼻を鳴らし、琴南さんはうっとりと彼女を見つめるキョーコの手を引き、さっさと壇上から降りる。



「まっ、待ってくれ、琴南さん!!!!」

「今回の件。こんなバカ騒ぎにしたのはあなた方お二人です。来週の金曜日は、お二人でデートでもなさって、相互理解を深めるのが一番有効なオフの過ごし方だと思います。ね、キョーコ?二人が仲がいいほうがいいものね?」



 キョーコを連れ去ろうとする(キョーコ曰く)伝説の勇者に、俺は慌てて声をかける。彼女は先ほどの鬼の形相はどこへやら。美しい女神の微笑を浮かべてみせた。…だが、その『女神の微笑』には慈悲はなく、あまりにも冷ややかなものだった。



「…あの、私…。お二人とも、大好きなんです。だから、自分勝手かもしれないけれど…お二人が仲良くなる努力をしてくださったらとても嬉しいです……。」



 そんな絶対神のような女性の隣で、俺の愛と美の女神は慎ましげに願いを口にする。



「「キョーコ……」」



「と、いうわけで。あなた方お二人は○ィズニ―ランドにでも行って、仲良くなって帰ってきてくださいね☆私達は私達でデート、楽しみますので。」



 キョーコの可愛らしいおねだりに俺もヒズリ氏もほだされかける。だが、琴南さんの言葉で現実に戻った。……いやいや、ありえないから!!せっかくできたオフを、こんな中年男と『おとぎの国』で過ごすとか、地獄でしかないから!!



「ちょっと待って……!!」

「日本には中世の時代から伝わる『喧嘩両成敗』という美しい裁き方があります。…いい言葉ですよね。それでは。」



 切実な俺の呼び声は、にこりと美しく笑う『女神の微笑』で一刀両断される。そして、伝説の勇者様であり、絶対神である存在は、俺の愛と美の女神を連れて颯爽と迎賓館を去って行ってしまった。



「いやぁ、見事な大岡裁き!!」



 がくり、とその場に崩れた俺の耳に、カラカラと楽しそうに笑う社長の声が聞こえる。



「「……ボス……。」」



 どこまでも呑気な初老男は、赤ワインの入ったグラスを片手に「もっちもっち」とチーズを食べながら満身創痍の俺達の姿をご満悦で見ている。



「おう、二人とも。目つきが恐ろしいぞ?よく見ろや。ここ、記者会見の会場だぞ?」

「「……あ。」」



 思わず『地』を出した俺とヒズリ氏は、チーズごと社長が指した方向に視線を向ける。そう…色々あってうっかりすっかり忘れていたが…。今は『敦賀蓮』と『京子』の交際会見の途中だったのである。



「…あの~~。質問、いいですか?」

「おう、いいぞいいぞ!!なんでも聞いてやれ!!」



 控えめに手を上げた記者。社長が無責任に了承を示したため、主役の1人を欠いた状態のまま、会見は続行された。



……こうして。俺と、宿敵である『キョーコの父』との喧嘩は、『両成敗』という一応の終止符が打たれることとなったのである……。







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