サマンサ様からのリクエスト~VSつるが(4‐2)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

その人物が扉を開け放ち、大音量を響かせて登場した時。俺の目線の先にいた少女は、そちらに視線を向け、目を大きく見開いた。



「お~~。お前、本当に来たのか。」

「来ないわけがないだろう!!丁度中国にいたから間に合ったようなものの……!!全く、色々信じられん!!」



 のんびりと手をあげながら、社長は登場した人物に手を振ってみせた。そんな社長に憤然としながら、静まり返った室内を完全無視して靴音高く俺達に近付いてくる長身の男…。



「せっ、先生……。」



 俺達が座る会見用にと作られた壇上に、許可なく上がり込んできたその人物は、本来ならアメリカにいるはずの男だ。その人物を、掠れた声でキョ―コが呼ぶ。



「こら、違うだろう!!」

「ほっ、ほぇ?」



 キョーコが大きな瞳を瞠りながら見つめる先の人物は、キョーコのその呼びかけに、瞬時に眉をしかめた。



「…ほら、呼び直しなさい。」



 世界を舞台に芝居に生きるその男は、慈愛の笑みを浮かべ、キョーコに促す。キョーコは、その促しに対し顔を真っ赤にして目を泳がせた。それから「お…おぉ……」と小さな唸りのような声を発しながらみるみる小さくなっていく。



「ん?どうした?ほら、呼びなさい。」



 ハリウッドスターはクスクスと楽しそうに笑いながらさらに促す。キョーコは、その促しに意を決したように顔をあげた。



「おっ…!!お父さん!!」

「よし!!…久しぶりだな、キョーコ。元気にしていたか?」

「はっ…!!はい!!」



 父親らしい笑顔を浮かべて彼女の髪に触れる『彼』。なでなでと頭をなでられて、キョーコは幼子のように笑み崩れる。それを見つめる『彼』も目の前の少女を愛おしげに見つめていた。…その二人の様子は、本当に仲がいい親子にしか見えなかった。



「さて。…ボス、電話でも聞いたが。…これは何のための会見なのかな?」



 微笑ましげに二人の様子を見ていた俺。…だが、ハリウッド・スターはにこやかな笑顔を浮かべながら俺とキョーコの間に無理やりスペースを作ると、SPの持ってきた椅子をねじ込み、社長に問いかける。



「おぉ。お前の『娘』とそこの男が交際するって言うんで、会見開いたんだが…。それがどうした?」

「あぁ、そうだったな。…やぁ、敦賀君。久しぶりだな。君も元気にしていたかい?」

「はい。お久しぶりです。Mr.ヒズリ。」



 彼が手を差し出してきたので、俺も手を差し出す。

だが、俺達の手が握り交わされることはなかった。…彼が差し出したのが左手だったからだ。



「……。…ミスター。出される手をお間違えでは?」

「敦賀君。私はね、キョーコの父親なんだよ。生みの親ではないが、それ以上に彼女を想い、彼女を愛しているつもりだ。」



 俺の非難を含んだ問いかけを無視し、ヒズリ氏は笑顔で言った。…だが、俺には分かる。他人の目には実に爽やかな笑顔に見えるのだろう。しかし…!!目の奥が笑っていない…!!



「はい…。それは、キョーコさんから伺っていますが…。」

「その私の許しを受けずに付き合うというのはどういうことかな?ん?」

「……。彼女も今年には18歳になります。結婚ならともかく、付き合うのに親の承諾が必要ということもないでしょう?」



 今時中学生だって親の承諾などとりはしないだろう。もはや国が認める立派なレディーに仲間入りしているキョーコにそんなものが必要だとは思わない。



「ほう…?結婚も考えずにうちのキョーコと付き合っていると?そんな軽い気持ちでうちの娘に手を出そうっていうことなのか!?」

「!!違います!!もちろん、キョーコさんとは結婚を前提にお付き合いさせていただき…「許さん!!」」



 ヒズリ氏に誘導されたかのように飛び出た『結婚前提のお付き合い』発言。だが、これは俺の中では当然のことで、彼女が20歳になったら正式に申し込む予定をしていた。このことは付き合う前からの大前提。



 …しかし。その言葉は、言い切る前に彼女の父親を名乗る男によって一刀両断される。



「お…お父さん……。」

「どこの馬の骨とも知れん奴に、私の大事な娘がやれるか!!」



 ヒズリ氏の背後で、キョーコが困ったように彼の服の裾を引く。だが、この親バカ発言に頬を染め、嬉しそうに口元を緩めた。

 …うん。いいんだ。君には親の愛情を感じて欲しい。嫌がるほど大事にされて、鬱陶しいほど構い倒されて…そしてたくさんの愛を知ってほしい。

 

だが。



「大体、何だ?聞いていたら。こんなに可愛いキョーコを前にして、『優しくて芯が強いところ』で『京女』だから好きだと?はっ!!そんな程度でキョーコを選んだっていうのなら、即刻別れろ!!」

「!!おっ、落ちついてください、ミスター!!」

「キョーコもほら、言ってやれ!!『お別れしましょ?敦賀さん。』!!この一言ですむから!!な!?」

「おっ、お父さん…。」



 何故ここまで毛嫌いされ…!!やっとのことで幸せを手に入れた俺からその『幸せ』を奪い去ろうとするのか…!!



「お前には、私を超える男と幸せになって欲しいんだ。私の大事な大事な娘だからな。」

「!!お言葉ですが…。あなたの主演した『月籠り』の視聴率を塗り替えたのは…「ハッ!!いいか?ああいうものはな、最高のスタッフと最高の役者が揃えば必ず塗り替えることができるものなんだ!!『ダークムーン』には私のキョーコ含め、最高のメンバーが揃っていた!!ただそれだけのことなのに、それを自分の手柄にしようとするとは…。思った以上に小さい男だなぁ…。ん~~?」」



 憐れみと嘲笑の合わさったような表情で見られる。…俺は『父』からこんな表情で見られたことは一度だってない…!!だからこそ、だろうか。とにかく沸々と湧き上がるこの怒りの感情が止めようがないところまで膨れあがろうとしているのは…。



「敦賀君。そんなに『京女』が好きなら、紹介くらいいくらでもしてあげよう。なぁに、『優しくて芯が強い京女』なんて、キョーコじゃなくても山ほどいるさ。」

「ふざけるな!!」



 とうとう俺は、大声で目の前の男を怒鳴りつけてしまった。



「つ、敦賀さん……!!」

「ほほぅ…。温厚紳士と名高い敦賀君が怒鳴るとはなぁ…。キョーコ、こんな怒りやすい男はやめておきなさい。」

「…!!いい加減にしてください!!キョーコは俺の彼女です!!あなたが何と言おうと、俺は彼女と別れるつもりは全くありませんからね!!」



 勢いのままに叫ぶと、ヒズリ氏は「ほほう…」と呟き、俺とキョーコを順に見た。…実に、挑戦的な眼差しで。



「そこまで言うならテストしようじゃないか。」

「テスト…?」

「そうだ。お前達がどれだけお互いを愛しているかを確認するテストだ。…敦賀君。これで私が満足のいく結果を出せるなら、この交際、認めてやらないこともない。」

「望むところです……!!」



 彼の向こう側で、キョーコが不安げな表情をしている。だが、ここまで言われて引くわけにはいかない。

 …彼女の父親と名乗るこの目の前のでかい障害物。必ず乗り越えてやろうじゃないか……!!





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