サマンサ様からのリクエスト~VSつるが(3-1)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

「……で?な~~~んでこんなギリッギリの時間になったか聞いていいか?」

「……。そこは大人として察していただくべきところではないかと……。」



 現在845分。社長から達しがあった7時集合を大幅に遅れ、俺とキョーコは8時に宝田邸を訪れた。

俺は、ミス・ウッズから文句を言われながらも手渡された衣装を手早く身につけ、身なりを整えると鏡の前で一息ついていた。そんな俺の状況を知っていたかのようなタイミングで、控室とされている部屋にノックもなく登場した社長。朝のあいさつの次にはあっさりと答えにくい質問を繰り出してきた。



「……。……蓮。」

「言われずとも分かっています!!…でも、その……。」



 諭すかのような声音で呼ばれた名前。だが、その言葉の続きを俺は聞きたくなかった。自分でも分かっていたからだ。でも…。

 やっと。やっと手に入れることができた至宝。俺の決意も理性も全てを破壊するたった一人の存在。そんな存在を、この腕に抱く幸せ。…それを手に入れて、もはや我慢なんてできるわけがない。



「言っておくが、そういう『愛』も俺は嫌いじゃねぇ。感情のコントロールさえできねぇなんて、お前にしてはいい恋愛をしているじゃねぇかと褒めてやりたいぐれぇだ。」

「…認めて、くださると?」

「おぉ。よく働くお前と最上君に、ちょっとした『甘え』くらい許すつもりではいる。…俺は天帝になるつもりはねぇから、お前らを織姫と彦星にするつもりはない。…だがなぁ…」



 そう言って、社長はちらりと視線を控室の扉の方へと向ける。その視線に不安を感じ、俺もそちらに視線をやる。



「…お前の織姫、お互いの仕事に支障があると分かると、天帝に言われる前にお前の前から姿を消すと思わねぇか?」

「……っ!!??」



『申し訳ございません。敦賀さんのことは好きですが、私、仕事も大事なんです……。』



 言われた瞬間に、耳に聞こえてくる愛しい少女の声。



『仕事に支障がでるような関係は、お互いのためになりません。私、決めました。』



 …可愛い声は、申し訳なさそうに…だが、決意固く言い放ってくる。



『敦賀さん、お別れしましょう?』 



 眉を下げ、淋しそうに…だが、絶対に曲げることのできない意思の光を宿した瞳で俺を見つめ…残酷すぎる言葉を放たれる光景が、一瞬のうちに目の前に広がる。

 俺はブルリ、と身体を震わせた。



「…容易に想像できちまうところが悲しいところだよなぁ……。」

「……はい。」



 社長の言葉に同意を示し、「はぁ~~~~…」と深く長い息を吐き出す。冷静になろう、と(どこまでできるか微妙な)決意を新たにしている俺の耳に「ひやぁぁ~~~~~っ!!!??」と叫ぶ、少女の大絶叫が飛び込んできた。



「!?キョ―コっ!?」



 その叫び声が愛しい少女のものだったので、俺は慌てて立ち上がり、扉に向かう。



「つ~~~る~~~が~~~さ~~~んっっ!!!!」



 扉を開けようと手を伸ばした俺より先に、扉は『バ~~~ンッ』と大音量で開け放たれ、綺麗に髪を整えられ、自然体に近いながらも愛らしくメイクをされたキョーコが飛び込んでくる。



「キョーコ。…うん、可愛いね。」

「そんなお世辞ふんだんの社交辞令はどうでもいいんです!!敦賀さん!!大丈夫ですか!!」

「………。…何が?」



 心の底から伝えた賛辞の言葉を綺麗さっぱり流されてしまったことにショックを受ける間もなく、キョーコは俺の両腕を掴み、揺さぶってくる。



「あっ、あの…!!どうやら昨日の晩、とっても質の悪い虫が寝室にいたみたいで…!!私、身体中にいっぱい虫さされの痕が残っているんです!!もしかして敦賀さんにも……!!」

「…………。」



 涙目になってキョーコは俺の首筋を見つめ、それからシャツの合間から見える肌をチェックしている。



「ミューズ曰く、本当に質の悪い虫なんだそうです!!ダニかと思ったんですけれどそんな生やさしいものじゃないくらいしつこい虫なんですって!!確かに痣みたいな大きな痕が残っているんです!!」

「…そ、そう……。」

「敦賀さん!!悠長に構えないでください!!私だったからよかったものの、モデルもこなす敦賀さんにこんなしつこい虫さされなんかができた日には…!!」

「………俺は大丈夫だよ……。」

「よく調べてください!!私!!本当に全身に満遍なく痕が残っているんです~~~!!」



 おのれ質の悪い虫~~!!と恨み節を唱えるキョーコに、かける言葉もなく立ちつくす俺…。



「ほうほう、全身に喰らいつくとは。本当にしつこい虫だなぁ、最上君。」

「そうなんです!!…敦賀さん、本当に大丈夫ですか?」

「はっはっは!!大丈夫だ!!その虫はな、特定の女性にしか喰らいつかん虫だからな!!」

「え!?女の人限定ですか!?そんな虫、いますか?」

「いるんだよ、これが困ったことになぁ。…いやぁ、しかし芸能人の全身に痕を残すほどの噛みつき具合とは、全くけしからん虫だ!!最上君、発見次第、相応の罰を与えてやれ!!」

「はい!!死んだほうがいいほどの罰を与える所存です!!」



 社長に敬礼をして答えるキョーコ。その勇ましい姿に、俺はヒヤリと背筋に流れる冷たい汗を感じた。…死んだほうがいいほどの罰…!!キョーコなら本気で与えかねない…!!しかも!!それは彼女であれば容易に『悪い虫』に与えることが可能だ……!!(←何せ『嫌い』の一言ですみます。)






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