「ブッルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルアァ~~~~~~~ッボ~~~~~!!!」
ピーピーピーピーッ!!ジャカボコジャカボコドンドコドコドコ…
「アラララララ!!!アラララララ!!アラララララ!!」
ズンドコドドコドコ…シャンシャンピーピーピーピーッ!!
褐色肌に学ラン、セーラー服姿の男女が数十人、太鼓を叩き、笛を吹き、鈴を鳴らしながらスタジオ内を踊り狂う。
「ブッルルルルアァ~~~~アァ~~ボォウ~~~!!」「ルルルルァ~~~~ボ~~~!!」
どこの民族の踊りなのか分からないその踊りを、唖然と見つめる黒崎潮…と、その彼を支えるスタッフ達。
「ヒョ~~~~~ッ!!」「ハッ!!」「ルアァ~~~~~~~ッ!!」
妙な叫び声と、リズミカルな笛と鈴と太鼓の音。踊り狂う女は腰を高速に振り回し、太鼓を叩き、鈴をならし、笛を吹く男達は見事なリズムを刻む。
そしてスタッフ達の視線を一身に受けた彼らは、その勢いを維持したまま、くるりと反回転した。
「ブッルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルアァ~~~~~~~ッボ~~~~~!!!」
ピーピーピーピーッ!!ジャカボコジャカボコドンドコドコドコ…
そして、そのままスタジオの外へと消えて行った……。
「……なんだ、ありゃあ……。」
茫然と、その謎の団体がフェードアウトしていく様を見つめる黒崎と、スタッフ達。
「あっ、あの…。…おはようございます。」
「おっ、おはようございます。」
そして、踊る彼らの中央に黒崎達と同じように茫然と立っていた二人の青年が、綺麗なお辞儀とともにあいさつをする。
「なんだったんだ?あれは。」
「…えっと…。…あの、『恋愛戦隊♪ドキ☆ラブ♡レンジャー』のコスプレ…だ、そうです。」
「はぁ?」
「え、えぇと。あの、今、秋葉原で人気絶頂の美少女戦士達…の、コスプレ…です。」
社の説明に対し、黒崎は「わかんねぇ…」と呟き、スタッフ達を見回した。
「おう、じゃあ撮影の準備するぞ。」
「「「はい。」」」
返事をしたスタッフ達は、散り散りになり、撮影の準備へと向かう。
「ピンクのセーラー服ばっかじゃねぇか…あれで『戦士』ってどういうことだ?」
「はぁ…。あの、あれは『桃レンジャー』『さくらレンジャー』など、色々ありまして…ピンクとだけ言ったらその手の方の怒りをかってしまうんですよ…。」
「…何が違うのかわかんねぇ…。」
「えぇ。俺もさっぱり……。」
先ほどの褐色肌のセーラー服集団達の話題をする黒崎と社。そんな二人の横で、蓮はしばらく迷ったような表情をした後、再び黒崎に頭を下げた。
「あの…。申し訳ございません。…監督やスタッフの皆様にも、ご迷惑をおかけしましたよね…?」
深々と頭を下げる蓮。それに対し、黒崎はにかりと笑ってみせた。
「いんや。君がうまく『お忍び』できてくれたから、マスコミに騒がれることもなかったし、信用のおけるスタッフっつ~のがどういうもんかが良く分かった、実にいい時間をすごさせてもらったよ。」
「…そういえば…スタッフの姿が…」
黒崎の意味深な発言を受け、社はスタジオ内の様子を見る。…CM撮影とはいえ、現場を走りまわる人数がかなり少ない。
「おう。君と『京子』のことを一言でも噂しやがった奴らは全員切り捨てたからな。」
「!!え!?」
「プロ意識のねぇミーハーな人間がいくらいたって、いいCMなんざ作れねぇ。もちろん、それは出演者にも言えることだが…。君は、その点『プロ』としての見込みがある。よく来てくれた。」
黒崎はニヤリと笑ってみせると、「こっちだ。」と二人をスタジオ内へ誘う。