○月×△日 午前6時 大雨
……俺は今、混乱している。
昨日、俺は最上さんに彼女と社の関係について確認をとった。彼女の答えはこうだ。
問1:社のことをどう思っている?
「?敦賀さんのマネージャーさんと思っていますけれど。」
問2:いやいや、そうじゃなくて。社とはどういう付き合いなんだ?
「??えっと。……敦賀さんのマネージャーさんと敦賀さんの不出来な後輩っていう立場でお付き合いしています。」
問3:……え~~っと…。…社のこと、好きか?
「???はい。好きですけれど??」
問4:それって、恋愛対象って意味か?
「????何をおっしゃっているんですか??……私、もう二度と恋や愛などという愚かしい感情に振り回される人生は送らないと決めたんですけれど……」(背後からシャバダバシャバダバ~~っと怨キョ登場)
問5:ヒッ……ヒ~~~~ッ!!ごっ、ごめんなさい、許して~~~!!(大絶叫)じゃ、じゃあ社と付き合っているわけじゃないんだな!?そうなんだよな!?
「…(おドロおドロしいオーラを撒き散らし中)当然です。そもそも社さんのような素敵な殿方と、私のような地味で色気のない女がお付き合いしているなどと想像するだけでも失礼ですよ(怒)」
よ(怒)」 …ラブミー部、健在!!
と、いうわけで。二人の関係は全く甘ったるいものではないことが判明した。……混乱する俺の頭から導き出された結論。それは……こう!!
社→→→最上君
…驚くべき事実だ。いや、確かに最上君は最近この業界で磨かれてきたのか、時々えらく美人に大変身なんかをしているわけだが、あの恋愛への拒否っぷりは常軌を逸している。そんな女の子をわざわざ選ぶ理由が社にあるんだろうか?
…いや!!今はそんな分析はどうでもいい!!それはとりあえず横に置いておくとして!!
今!!解決せねばならんのは、これから育てねばならないタレントがあろうことかLME社員にその貞操を狙われているということだ!!
同意の上ならばまだしも、陰で姑息な手段を使い、彼女の個人情報を盗み(俺が漏らしていたわけだが…)、ストーカーのごとく付きまとっているこの現実!!
本来は警察に相談すべきところだが、そんなことをしてしまったら『敦賀蓮』にとっても『京子』にとってもマイナスにしかならない!!蓮だって、信頼しているマネージャーが自分の可愛がっている後輩に陰でストーカー行為をしていたなんて知ったら、ショックだろうしな…。最上さんだって女の子なんだから、むやみに怯えさせることもない。ただでさえ愛を拒絶している彼女に、歪んだ愛の存在を知って、より男性不審に陥られても困る。
ここは!!俺がなんとしても、社を説得する!!
この決意は固い!!俺だってタレント部主任だ!!大切なタレントを守ってみせる!!
ぐっと握り拳をつくり、「よしっ!!」と気合をいれる俺。椹 武憲42歳。まだまだ働き盛りだ!!
「おはようございます、椹主任。」
そんな俺の決意のもとに現れる男・社 倖一(25歳)。昨晩電話があって、俺はこの男と話をするために、誰も出勤していないこの時間帯を指定した。社ももうすぐしたら蓮と事務所で合流して仕事にでかけるから、丁度いいらしい。
さぁ、男・武憲42歳。今こそ勝負の時!!中年と呼ばれる俺だが、体力以外なら俺はこんな若造なんかに負けない!!
「おう、おはよう、社。今日はどうした?」
「えぇ。キョーコちゃんの来月のスケジュールがそろそろ出るころじゃないかと思って。また教えていただきたいん…「そのことなんだがな!!社!!」」
俺は社の言葉に自分の言葉を重ねた。
「?はい。どうかされましたか?」
その俺の普段とは違う態度を訝しんだのだろう。若干首をかしげながら、社は訪ねてきた。
「社。お前、こんな方法で最上さんの情報を得るのは正攻法じゃないって分かっているだろう?」
「え?」
「いくらラブミー部のあの子が相手だからって、姑息に予定を確認して、夕飯を作らせたり、偶然を装って会うタイミングを作るとか…。お前、それってちょっと犯罪っぽいって思わないか?」
「うっ……。やっぱりそうですかね……。」
意外なほどに社はすぐに自分の非を認めはじめた。正直、拍子抜けだ。
「う~~ん、でもな~~……。こうでもしないと、いつまでたっても進展しないというか…」
前言撤回!!全く非を認めていない!!