渡り医師犬童 (祥伝社文庫)
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存亡の危機にある市民病院の産科に助っ人としてフリーの医師である犬童道也がやってくる。
五年目の産科医である神岡好乃は犬童の医師としての技術に圧倒されるが、無謀とも思えるやり方に反発を覚える。
主人公は産科医とし五年目の神岡好乃。
医師としての経験と実力を確実に重ねてきた彼女は、避けられないものであろうと医療事故からくる訴訟などが起こらないように堅実でマニュアル的な対応を信条としています。
そんな彼女の前に現れるのがもう一人の主人公である犬童道也。
フリーの医師として全国を飛び回る彼が、市民病院の助っ人として現れその技術の高さに目を見張るものの、医療事故すれすれの無謀とも思えるような手術や医療を行うのを目の当たりにして反発を覚えます。
この犬童という医師。
マイペースで豪放かと思えば、助っ人先の病院ではしっかりと周りををチェックしスタッフと良好な関係を築くためにお土産を欠かさなかったりと、意外に計算している様子やちょっとドジな部分などが見られ、そのギャップに少々違和感を覚えました。
けれども、そういったギャップもクセの強い人間性として読み進めるうちに受け入れている事に気づきます。
そしてその大胆とも思えるその医療姿勢は、彼の思う“医療”を実現する為の強い意志として、若き医師である神岡好乃の心にもいつしか届き始めます。
現代日本の産科現場が抱える問題を提起しつつ、その苛酷で厳しい現状の中で医師の成長を描いており、クセの強い登場人物たちも最後には愛おしく思えるような最後は、意外にも爽やかで印象深かったですね。
ところで著者は本書の主人公と同じく全国を飛び回っているフリーの産科医だそうです。
なので、主人公の犬童は著者そのものが強く投影されているのかなとも思え、医療への熱い想いとクセがあるものの憎めないような方なのかなと想像するのも楽しかったです。
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