『卵をめぐる祖父の戦争』 デイヴィッド・ベニオフ | 固ゆで卵で行こう!

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卵をめぐる祖父の戦争 ((ハヤカワ・ポケット・ミステリ1838)) 卵をめぐる祖父の戦争 ((ハヤカワ・ポケット・ミステリ1838))
デイヴィッド・ベニオフ 田口俊樹

早川書房 2010-08-06
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作家のデイヴィッドは祖父のレフが戦時下に体験した冒険を取材する事に。

その冒険とはドイツ包囲下のレニングラードで暮らしていた17歳の時の祖父が、軍の大佐に命じられ、大佐の娘の結婚式に使用する卵を一ダース調達するというものだった。





ドイツ軍によるロシアのレニングラード包囲戦のさなか、ひょんな事から卵を探し求める事になる17歳のレフと20歳のコーリャ。


卵を探し出さないと殺されるという理不尽で無意味な冒険に向かわざる得ない二人。

偉大な詩人を父にもち、鼻が大きく、童貞で自分に自信を持てないレフと、文学に精通し陽気で機智に富み更に容姿端麗なコーリャ。

まるで正反対の二人が協力し合って卵を求めて食糧難にあえぐ戦時下を彷徨う様子は、その正反対な性格と相まって二人は卵をめぐる行程にも意見が対立しがち。


けれども戦時下で異常とも言えるような状況や危機を乗り越えるうちに、二人は互いに認め合うようになり友情を深めていきます。


極限状態の中でもユーモアと下ネタを失わず、ウィットに富んだ会話でレフを鼓舞するコーリャに最初はレフと同様に辟易とするものを感じるかも知れませんが、いつしかコーリャのその言葉にレフと同様に鼓舞されるものを感じ取ってしまいます。


物語は四人の少女が暮らす小屋に辿りついた頃から加速。

パルチザンが登場と、そのメンバーである天才的狙撃手である少女ヴィカの存在。

そしてヴィカたちパルチザンが狙うドイツ軍の少佐アーベントロートとの対決と、冒険小説の王道をいくような展開を見せます。


ラストは予想通り切なくもさせられるけれども、最後の最後で思わずニヤリとさせらえるセリフもうまい。

ジョークと下ネタで彩りながら、卵を探し出すという無意味な命令を受けた二人の冒険を通じて、戦争という悲惨で残酷でそして理不尽で愚かなものである事を実にうまく描き出しながらも、どこか一服の清涼剤のような印象さえも受ける青春戦争小説でした。





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