著者:ローリー・リン・ドラモンド 訳:駒月 雅子
『あなたに不利な証拠として』 (ハヤカワポケットミステリ)
ルイジサナ州のバトンルージュ署に勤務する5人の女性警官たち。
警官として直面する事態は、それぞれの生き方に大きな影を与えている・・・。
本書のタイトルはアメリカの刑事ものや映画やドラマでお馴染の、犯人を逮捕する際に警官が言う“ミランダ警告”からきている。
著者自身が実際に警官だった事から、その実体験を基にしたような5人の女性警官を主人公にしたそれぞれの物語は、匂い立つようなリアルな描写で描かれており、その読了後に訪れる余韻は、時に爽快感、時に焦燥感、時に哀切感・・・実にさまざなものが胸に去来するだろう。
主人公となる5人の女性は、警官として他の職種では直面しないような“暴力”や“死”といった事柄に直面する。
それらは警官として、そして女性として、ひとりの人間として向き合って生きていかなければならず、彼女たちはその重みに押しつぶされそうな苦悩を抱えている。
その苦悩を読者により強く印象付けているのが、どの物語にも見られるリアルな描写だろう。
銃を持ち、犯罪者と対峙する瞬間。
死者の匂い。
酷暑の中で警官の装備一式を付けている様子。
交通事故現場で流れる血。
また、警官として生きる彼女たちの内面が、読んでいるこちらまでも痛みを感じるほど生々しく描かれており、それらのリアルな描写があってこそ、主人公たちが抱える重みが、より我々読者の胸を抉るのであろう。
救いのないような物語が続く中、最後に収められている「わたしがいた場所」は、著者からの救済ともいうべき物語。
これまでの物語と違い、そこに映し出されるのは“生”だ。
この最後の物語で得られる静謐感も心地よい。。。