『彼女はたぶん魔法を使う』 樋口有介 | 固ゆで卵で行こう!

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彼女はたぶん魔法を使う

著者:樋口有介

『彼女はたぶん魔法を使う』(講談社文庫)



38歳のルポライターの柚木草平の元に刑事時代の同僚の吉島冴子から持ち込まれた依頼、それは警察では交通事故として処理されている女子大生の死の真相を探る事。

柚木はその調査の過程で出会う、魅力的な女達に振り回されながらも真相に迫る。




本書はある事件がきっかけで警察を辞めてルポライターをしながら、警察時代の同僚で不倫の関係を続けている吉島冴子が持ち込んでくる事件を独自に調査して生計を立てていて、現在妻とは別居中で10歳になる娘がいる柚木草平を主人公としたシリーズの第1作。


とにかくまず魅力的なのはその主人公である柚木草平。

うだつの上がらない中年男と思いきや、その口から出る減らず口の数々は、ちょっと気障でユーモラス。

草平さんに出会う女性達も、どうしてか心憎からず思ってしまう・・・そんな主人公で、正直言うと身近にこんな男がいたら鬱陶しいかも知れないが、自分なんかは「こんな台詞を言ってみたい」「こんな男になってみたい」と思わされ、この作品で初めて樋口有介に接したのだが、それ以降はすっかり樋口ワールドにハマってしまった(笑)。


で、本書だが、不倫相手の冴子を筆頭にいい女揃い。

依頼人のOL・エリートキャリアウーマン・現役女子大生・加害者に容疑者、それに10歳になる娘までいい女だ(笑)。

それぞれが魅力的であり、いい女と見ると軽口を叩かずにはいられない草平さんとの会話にニヤニヤしながら読んでしまう。

この辺はある種、男の願望が詰まっってると言えるかも(笑)。


シャレた会話と小気味良く進む展開で読みやすく、ハードボイルドでありながら謎解きのミステリーとしても、ハードボイルドファンは勿論、そうでないハードボイルド初心者なような方でも楽しめる作品であろう。



とにかく一度樋口さんの作品に触れて欲しい。

樋口さん独特の、どこか暖かく、どこか切ない雰囲気漂う作風に一度ハマってしまえば、例え他の作品が同じようなものが多くてワンパターンなんて言われても、二度と抜け出せないかも(笑)。

(残念ながら本書を始め、絶版になっているものも多いので、興味を持たれた方は古本屋さんで探して下さい)





追記(2007/9/6):現在は東京創元社、創元推理文庫にて“柚木草平”シリーズをはじめとして樋口さんの作品が続々復刊中です。

これを機会に樋口さんに触れる人が増えると嬉しいなぁ。


彼女はたぶん魔法を使う (創元推理文庫) 彼女はたぶん魔法を使う (創元推理文庫)
樋口 有介

東京創元社 2006-07-22
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