- 著者: 五條 瑛
- 『蝶狩り』 (角川書店)
調査員(あくまでも探偵ではなく)である桜庭の元に、今日も人探しの依頼が舞い込む。
それはどれも探される方は、誰も自分なんか探す者なんていないと思っているような人達。
だが、ほんとは誰かに探してもらいたがっているのかも・・・。
『冬に来た依頼人』(祥伝社文庫)の続編。
家出少女・風俗嬢・キャッチガールなど、都会の甘い蜜に惹かれて舞う“蝶”を捜す桜庭。
全六話の連作短編集で、第三話以降は桜庭の前から突然消えた少女“キリエ”を捜す話が軸となり、一つの長編小説のような形になっていました。
まずはキャラクターありきですね。
オーソドックスなハードボイルドのスタイルをとっていますが、緻密な描写が無いぶん、主人公の語り口が薄い・・・といったように感じてしまう点が難点かな。
これは五條瑛が描く各登場人物は相変わらず魅力的なものの、短編という制約のせいもあるだろうが、彼等が会話する部分がもっと読みたいと思わされるように、ちょっと少ないせいもあるだろう。
主人公と友人達とのやりとりなど、面白いと思わせる会話も多いんですが、その会話をもっと突き抜けたものにすると、より主人公が生きてくるのではと思いました。
まぁ、それだと短編では収まらなくなってしまうんでしょうが(^^;
ただ、後半に入るとそれら会話も前半に比べると楽しめる部分が多くなっているので、もしかしたら作者も模索しながら作品を書いていたのか、それともキリエを大切に思っている事を自覚するようになって、主人公がより人間くさくなってきたという風に計算して描写していたのかな、なんても思いましたが、どうでしょうか。
ところで読み終わって・・・
ん?
まだ終わってないぞ、この事件。
どう収集つけんだ?
このまま終わってもいい気もしますが、やはり続きが気になりますね(^^;