メディア芸術祭に行って思ったことなど | 乱歩酔歩--Random Walk official blog--

メディア芸術祭に行って思ったことなど

創作サークル「Random Walk」の須々木です。

遊木も書いていましたが、僕も先日行った文化庁メディア芸術祭について素人ながら所感を書いておこうかと思います。

内容的に重複しているところとかあるかもしれませんが。。



さて、文化庁メディア芸術祭とは何か?


 「文化庁メディア芸術祭」は、メディア芸術の創造とその発展を図ることを目的として、平成9年度(1997)から始まりました。
 現在ではアート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門で世界中から作品を募り、優れた作品に文化庁メディア芸術祭賞を顕彰するとともに、これらを広く紹介するために受賞作品展を毎年2月に国立新美術館で開催しています。
 (公式サイトより)



というわけで、いわゆる「現代アート」と「サブカルチャー(本来の意味ではなく、俗に言う“おたく文化”に近い意味合いで)」の中間、もしくはその両方を取り込んだ(と個人的には解釈している)カテゴリーの芸術祭です。

応募資格なども特にないようで、プロ、アマ、国籍も何も問わない本当にボーダレスな印象を受けるイベントで、それゆえに、妙な偏りがなく、「これが“現代”なんだな」と肌で感じることができる不思議さが満ちています。

ただ、この“ボーダレス”という現代のキーワードは、「審査」「選考」という過程とミスマッチに感じる部分もあります。

審査、選考するためには、何らかの基準を設けて区切ることが必要になりますが、これだけ広く広く手を広げている芸術祭で、「いったいどう選んでいるのだろう?」というのはかなり気になっていました。

行った人はわかると思いますが、素人から見ると、“なんでもあり”な印象を受けてしまうので、それらをひとつの芸術祭で並べるとき、どういう思考が働いているのか興味があります。

それで、審査委員講評を読んでいて、個人的にすごくわかりやすかったものを引用しておきます。


 将来、ここに登場した作品群を見るだけでその時代の文化及び歴史的展開が読み取れるアーカイブとして信頼される芸術祭になればよいと願っています。
 その年の流行ではなく、何がどう未来へと繋がっていったのかを記録していく。
 例えば震災が起きたことによって、今年の表現は未来の歴史家が必ず調べるものになるでしょう。
 震災は文化にどう影響を与え、また文化はそれにどう応えたのか、これは現在を生きる私たちにも関心のある事柄です。
 メディアアートはメディアである以上、その表現には、それを観る人とその反応が必ず含まれます。
 その意味でメディアアートは歴史の成立そのものを示す力がある。
 「自立したアート」としてのメディアアートはあり得ない。
 これが「ジャンルの越境」を意味するのだとすれば、ようやくメディアアートの状況は整ったともいえるのではないでしょうか。
 (岡﨑乾二郎氏の講評。公式サイトより)



メディア芸術祭は、優れたメディアアート作品を広く伝えると同時に、メディア芸術祭そのものが、一種のメディアとして、後世に“今”を伝えるタイムカプセルの役割を果たす。

メディアと名がつくからには、それは何かと何かをつなぐということが大事になってくる。

人と人をつないだり、異なる時代をつないだり、異なる文化をつないだり。

だから、例えば、何も知らずにいきなり行くと「なんだこれ?」という作品もあったりします。

でも、そもそもメディアアートは、単体として意味をなすものではないから、当たり前なのかもしれません。

それは、長編漫画の途中のセリフだけ読んで「なんだこれ?」と似たような感じで、全体の文脈を踏まえれば「名言」として人の心を揺さぶるものであっても、一部を切り抜いたら大した印象を受けないのと同じ感じです。

だから、この芸術祭も、時代という文脈にてらして初めて意味をなすんだな、ということがすごく直感的に伝わってきました。

そして、そういうものに気軽に触れられるというのは、なかなか幸運な環境だな、と思います。



あと、見ていて「あ、こういうのやってみたいな」という感覚がふつふつと沸いてくるのが少し快感だったりもします。

本当に自由な作品が多く、それでいて“現代”という文脈を無視せず、“伝える”という立場を無視していないので、発想のヒントがいっぱい転がっていたりします。

できれば、そのうち、そういう感覚を与える側の人間にもなってみたいと思ったりもしますが、まずは軸を持ちつつも型にはまらずに、いろいろ吸収し、吐き出し、壊し、構築していきたいです。



そして、Random Walkはその可能性を十分に持っている…はずだと思っています。

ざっくりと「サブカルチャー」と呼ばれる分野ももちろんやりたいですし、同時により「アート」な方向もやってみたい。

ひとつのサイコロがあって、見る方向によってその数字がかわるように、いろんな側面を持ったサークルにしていきたいです。

そんなわけで、まずは、「Random Walk」という作品の制作を進めていくこととしましょう。



sho