第18話 業界入り (キャプテンだだお)
予想を越える反響ありがとうございます。
遊んではいたが、大学の授業もそつなくこなしていたお陰で、1996年4月大学から内部進学で関西大学大学院商学研究科会計学専攻税制論研究に進学した。
入学後、近道だと信じ最短で税理士資格を取るとの思いで勉強した2年間だった。
1997年12月、大学院M2の冬だった。税理士試験の合格発表後、すぐに専門学校で就職説明会が開催された。
スーツを会場に行く前に購入、安全ピンですそ上げし会場に飛び込んだ。
最初に、座ったブースは規模の大きい名の通った京都の公認会計士事務所だった。温和な女性の先生だった。
『いつから働ける?』
『はい!今日からでも。』
会場に入って5分就職が内定した。
入所した事務所は、全国規模の事務所のためクライアントが全国にあった。入所3日目の夕方。
『前田君、明日湘南の方に行ってくれ。今の担当は直接行くから、現地で落ち合ってくれ。前泊じゃないと行けないから。』
『湘南??ですか??』
意味が分からなかった。名前は歌か何かで聞いた事があるが関東と言うことしか分からない。とりあえず、インターネットで場所を確認し、ホテルを予約し新幹線に飛び乗った。
翌朝、現地で落ち合ったのは、先輩の会計士補の男性だった。
『大学院の坊主か。役に立たんな。』第一声だった。
クライアントの事務所に入り、巡回監査の作業が始まった。私は、先輩の言われるがままに売掛金残高のチェックを行っていた。ホントに長い一日だった。
作業が終わるころに、先輩の『役に立たんな。』の意味がよくわかった。役に立たなかった。後で聞いたが、先輩はその日で退社される日だったらしい。
役に立たないからといって、仕事は待ってくれない。出張の続く中、あっという間に3か月が過ぎた。
私の試用期間が終わった。自分の無能さを認識するのには十分な期間だった。
周りの迷惑を配慮できない甘ったれの私は、辞意を伝えた。
出張のない部署替えも所長先生から提示頂いたが、24才の世間知らずは目の前の問題から逃げ出したいだけだったのだ。
その後、自宅に戻り、茫然としたまま1月が過ぎた。
『何してんだろ?俺。そこそこ能力は高いと思い込んでいた自分。近道と言い聞かせて取った資格。何のために資格取ったんだろ。』
小さな挫折で自分を見失っていた。
その時、恩人からの電話が鳴る。
<キャプテンだだお>
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