こちらの作品は、以前に書いた 『チェラリー島にて』 の続編です。
今回もまた、デタラメ脳が働きました。
毎度毎度、お付き合いありがとうございます。
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チェラリー島 島長の孫娘、ユラピットがトブリンの未熟果を踏みつぶし、眠りについてから3カ月。
ユラピットは人形のように、ベッドに寝かされていた。
未熟果が落ちるトブリン畑で意識を失って以降、ユラピットは息をするだけで微動だにしない。
指先を動かすことも、睫毛を揺らすことも。
「ユラピット嬢さまの容態は?
今日もまた、目を覚ましてくださんかったのかえ?」
トブリンの失神に効くといわれる ”シクラメンの涙” を採取してきたテムテム爺さんが、島長宅のヒラリーに声をかけた。
ヒラリーは生後間もなく流行り病で両親を亡くし、島長の屋敷に引き取られた。
ユラピットはヒラリーを実の姉のように慕い、ヒラリーもユラピットを目に入れても痛くないほど可愛がっている。
今年24歳になるのだが、島長の息子夫婦、すなわちユラピットの両親が2人揃って病身のため、ヒラリーは家事に重きを置いて、寄せられる縁談に見向きもしない。
これは、島長の悩みのひとつだ。
「数日もすれば、Dark Angel号が寄港するわ。
船にはジェレミー・アキがいる。
私は彼の腕にかける」
ユラピットがトブリンの眠りに落ちて以降、ヒラリーは目に見えてやつれてきた。
艶のあるブロンドの髪が心なしかくすんで見える。
「ジェレミー・アキか… 、あ奴を信じるのかえ?
あの男は化けもんだ、カエルの目玉やイモリの卵でひぃひぃ笑いよる。
ブラッディでさえ、扱いに困っておるともっぱらの噂じゃ」
「この3カ月、何をしても効果がなかったわ。
”シクラメンの涙” でさえ、ユラピットの目を覚ましてくれなかった」
ヒラリーはテムテム爺さんの手元に目を向けた。
ユラピットのためにテムテム爺さんは毎日、”シクラメンの涙” を採取してくれる。
”シクラメンの涙” は、ノッポ岳のふもとに群生するチェラリーシクラメンにつく朝露のこと。
チェラリーシクラメンは名前の通りチェラリー島の固有種で、世間一般に知られているさくらそう科の多年生植物とは別物。
チェラリーシクラメンは、さぼてん科の常緑多年生植物。
サボテン特有の棘はなく、薄桃色の小花を咲かせる。
「テムテム爺さんの気持ちは感謝しています。
けれど… 」
「ヒラリー嬢さま、頭を上げてくんしゃいな。
わしに出来ることはこれくらいのもんじゃ。
トブリンには ”シクラメンの涙” 昔から決まっちょるんよ、絶対に効くわいな。
ジェレミー・アキに頼るんは、最後の最期じゃと言うてくんろ」
「テムテム爺さん… 」
ヒラリーは両手で顔を覆い、大粒の涙を流した。
この調子で、ゆるく続きます( ´艸`)
内容は未定。
お好きなお時間にお付き合いくださいませ。