チェラリー島にて | AKI 's ミステリー           

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これまでに書きためた作品を紹介します。

ブログネタを利用したお遊びstory〈梅と愉快な仲間たち〉も毎日更新♪

こちらの作品は、先日更新した『Dark Angel号にて』のおまけ的、ストーリーです。

またまた私のデタラメ脳が目を覚ましまして。。。

お暇な時にお付き合いくださいませ。◠‿◠。♥




『Dark Angel号にて』は、こちら







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 クワァー、クワァー、ピーィ~~~


「テムテム爺さん、こっちもよ」


 今年12歳になるチェラリー島のユラピット。


ユラピットは腰まで伸びた黒髪が似合う、可愛い少女。


豊かな海に囲まれたチェラリー島の島長の孫娘だ。


黄色いハイビスカスの花を髪に挿し、チェラリー島の民族衣装、バラリッツアに身を包む。


 バラリッツアとは、チェラリー島にしか自生しないトブリンと呼ばれる植物の木の皮で染め上げた木綿を使用した男女共通のワンピース。


トブリンの木皮で染められた布は、着る者によって色が変わる。


ユラピットが着るのは、太陽と仲良くなれるオレンジ色。


ちなみに、染色中は全てが色鮮やかな緑色をしているらしい。


 このトブリンの果実から作られるのが、知る者ぞ知るチェラー酒。 


トブリンは摩訶不思議な植物で、果実は年中収穫できる。


デリケートな果実に傷をつけると、南国果実特有の臭気を発し、目も開けていられなくなる。

チェラー酒は無色透明の蒸留酒だが、暗闇で見ると七色に輝く。

これもまたトブリンが見せるマジックだ。


「1000年に1度やって来る、トブリンの大不作じゃわい。

我らの力では、どうしようもないのう」


 トブリン農園のテムテム爺さんは、真っ赤に熟すことなく地に落ちた紫色のトブリンの果実を拾い上げた。


辺り一帯に紫色のトブリンが落ちてしまっている。


「次に”Dark Angel号”が寄港するのは、3ヶ月後よ。

ブラッディに差し出すチェラー酒は、底をついてしまったというのに… 。

トブリンが実らないと、チェラー酒が作れない。

どうしましょ」


「こればかりはのう。

この道100年のわしにも、解決策は浮かばんわ」


 ユラピットは両手を胸に重ね、目を閉じた。


世界を震撼させる海賊船”Dark Angel号”のキャプテン『ブラッディ オッド アイ』に差し出すチェラー酒がなければ、このチェラリー島はたちまち野蛮な輩に乗っ取られてしまう。


チェラリー島はトブリンに代表される通り、世界でも珍しい植物や動物が生存する神秘の島。


その故、チェラリー島を狙う者は多い。


これら侵略者からチェラリー島を守ってくれているのが、”Dark Angel号”だ。


彼ら海賊にチェラー酒を提供する代わりに、島の安全を委ねている。


それなのに… 、彼らに提供するチェラー酒が作れない。


「ユラピット嬢さまよぉ、焦らんでもええ。

ブラッディはああ見えて、心根の優しい海賊じゃ。

我らチェラリー島が存続せねば、彼らもまた生き抜けんことは承知のはず。

1000年に1度きりの大不作ぐらい、辛抱するのじゃよ。

1年も経てば、トブリンは機嫌を直して真っ赤な実をつけるじゃろぉのう」


 テムテム爺さんはユラピットの心内を見透かすように、穏やかに話した。


元から細くなった目をより細め、山羊のような真っ白の髭を右手で撫でている。


「ブラッディなら、わかってくれる」


 ユラピットは首に提げたシャークの骨のペンダントを握り締めた。


幼い頃、ブラッディから貰った海のお守り。


「海の男は簡単に弱音を吐かない。嬢ちゃんも逞しく生きねぇとな」 坂道で転び泣きやまないユラピットに手を差し伸べてくれたブラッディの言葉。


そうよ… ブラッディなら分かってくれる。


 ユラピットは急に気持ちが楽になった。


嬉しくなった。


全ては心の持ちようだ。


あと3カ月もすれば、ブラッディたち海の男たちがチェラリー島に来てくれる。


彼らが逗留する数週間は、チェラリー島も大賑わい。


子供たちは海賊たちの陽気な歌が大好き。


ユラピットも。


ユラピットはその場でステップを踏み始めた。


 ルーンララ、ルーンララ、ブンチャッチャ、ブンチャッチャ、


「う… あいやいや… ユラピット嬢さま… 」


 テムテム爺さんが唇をわなわなさせた。


「― ん? どうかした?」


 天使の笑顔を浮かべるユラピットがテムテム爺さんへ振り向いた。


今はブラッディの到着が待ち遠しくてならない。


「ちょ、ちょいとの間、その状態で動かんでくんさいよ」


 テムテム爺さんは背を曲げ、首をすくめた。


「え?」


「ああ、あぁのですな、わしが1キロ先の、あの柵を超えるまで、ユラピット嬢さまは1歩たりとも動かんでくんさいな。

絶対ですぞ。

嬢さま、わしの言うことをお守りくださいな。

頼みますぞい」


「テムテム爺さんたら、おかしな事を言うのね。

わかったわ」


「絶対ですぞ~~!!」


 ユラピットが承知した瞬間、テムテム爺さんは100歳越えの老体とは思えぬ俊足で、1キロ先の柵に向かって駆けて行った。


何か叫んでいるようだが、ユラピットの耳には届かない。


。。。

。。。

。。。


「イッヤーァァァ!!!!!」


 上機嫌になったユラピットの失態。


チェラリー島で生まれ、チェラリー島で育った者なら、トブリンの怖さを身に染みて知っている。


トブリンの果実に傷をつけてはならぬ。


針先ほどの傷でもつければ、辺りはたちまち悪魔の世界。


2時間は失神するであろう。


 ユラピットの足が、紫色のトブリンの未熟果を複数、踏みしめている。


この後、ユラピットがどうなるか… 。


 ユラピットは真っ青な顔になり、生唾をのんだ。


唾が咽に引っかかる。


「テムテム爺((╬☉Д⊙ฺ)」






※またまた、書いちゃった( ´艸`)

 優しいお心で、お読みくださいませ。

 ありがとうございました。




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