赤坂ACTシアターに 「俺節」を観に行った。 | ああいえBAR 旧館・支那竹銀座より

ああいえBAR 旧館・支那竹銀座より

「支那竹銀座」はラーメンズ小林賢太郎さんに名付けてもらいました。
負け犬というよりバカ犬。飼い主には従順素直。
悪そうなヤツや知らない人には、吠えたり噛み付いたり。
エサくれたら恩は忘れません。面白いエンタメを求めて日々彷徨っています。

昨年末の頃のコンサートでだったろうか。

安田章大くんから舞台告知がされた。

 

「演歌やりますんで」

「僕、演歌うまいです」

 

まだまだ先の舞台の告知で

自分の歌をこんなに自信たっぷりに誉める

安田さんに興味を持たないわけがない。

 

ということで、

「俺節」に行ってきた。

 

ぶつかり合い、すれ違い、

傷つきながら夢をおいかける、

昭和的ド直球な人間ドラマ。

“日本の心”が あなたの魂に染みわたる!!

 

「世の中をとっくり返しに来たんだべ─」

気弱なコージの本気の唄は、あらゆる人間の魂に
捧げる綺麗ごとではない応援歌となる

(公式サイトより)

 

【『俺節』ざっくり】

「ビッグコミック・スピリッツ」で

1991年から連載された土田世紀さんの漫画。
津軽出身の高校生・海鹿耕治(あしか こうじ)が

単身上京し、演歌歌手を目指して奮闘する青春群像劇。

若者の愚直なまでの情熱、愛と友情、苦悩、焦燥感が、

それを象徴するような演歌の歌詞とともに

濃厚なタッチで描かれ、人気を博す。

(公式サイト参考)

 

【土田さんざっくり】

1969年3月・秋田県生まれ。

2012年に肝硬変で亡くなる。

東京公演では、同時開催で

原画展(入場無料)が開かれていた。

 

※後日別で行って原作の立ち読み、という贅沢をさせていただいた。

絵はダイナミックなのに、線が本当に繊細でフルでちゃん読みたい欲が↑。

オキナワとのやりとりの複雑な背景などが、

舞台では端折られていてんだな、と気づく。

舞台先行で前知識なしで飛び込んで正解だったかな。

皆さん言っていたけど、原画展のスタッフさん(多分、土田先生の

奥様も)がとってもいい方々ばかりで、ここが飲み屋なら

入り浸りたい気分に。

 

【あらすじ】

演歌歌手を目指して青森から上京したコージ。
抜群の歌唱力を持っているらしいが、気弱で

あがり症なばっかりに、いざ唄うとなると

緊張してまともに唄えない。

しかし、演歌に対する思いだけは、煮えたぎるように熱い。

その熱に感化されたのか、お調子者のギター弾き・オキナワは、

根城とするドヤ街・みれん横丁へとコージを連れて行く。


そこでコージは偶然、ヤクザに追われている

テレサと出会うことに。彼女は不法滞在中のストリッパー。

コージの演歌は、彼女への思いが募るほどに加速する。


やがて、飲み屋街で流しの演歌歌手として

修行を始めたコージとオキナワは、コンビで演歌界デビューを

果たそうと、アマチュアコンテストへの出場を繰り返す。
そんな中、デビューの話が持ち上がるが、

そこには「コージ一人で、ソロ歌手として」という条件があった…

 

【脚本・演出】 福原充則

お名前はよく聞く。

作品は見たことないかも…、なんて思ってたが

よく調べたら、2013年のブルドッキングヘッドロック

「少し静かに」…観に行ってるやん、自分。

彼の携わってきた作品には、親族代表や

小林賢太郎(ラーメンズ)の脚本、
ゴキブリコンビナートの名前も……

え……ゴキコンも……

 

【出演】

海鹿耕治〈コージ〉安田章大

演歌歌手を目指し、青森から上京。

気弱で恐ろしく不器用で、あがり症だが、

人の心を熱くする歌唱力(武器)を持っている。

とにかく熱い。


テレサ…シャーロット・ケイト・フォックス
東欧出身。偶然出会ったコージと恋に落ちる、不法滞在のストリッパー。
ふるさとの家族の生活費のために日本に出稼ぎに来て、

ストリップ小屋で働かされている。言葉はカタコト。


南風春(はえばる)太郎〈オキナワ〉…福士誠治
沖縄県出身。お調子者のギター弾きで、コージの相棒。
みれん横丁というドヤ街に住んでいる。一見明るいが、
なぜか裏の世界に足を突っ込んでしまっている。

福士くんってもっと爽やかだった気がするけど、

いつの間にか、ドヤとかヤクザ系が似合う俳優さんになってた。

流しの大野/社長…六角精児

みれん横丁のボス的存在で、北野波平の同期。新宿、四谷、
新橋と飲み屋街を流しで歌う歌手。世の中の酸いも甘いも理解した、
演歌の歌の中の登場人物を地でいくような男。


元アイドル歌手・寺泊行代(てらどまりいくよ)/マリアン/祖母…高田聖子

かつてのアイドル。見栄や嫉妬に取り付かれ、芸能界にしがみついている。
起死回生の策として演歌歌手としての再デビューを打診されるが……。

にしても、すごい幅広い役柄を演じなさっている。すごい。

さすが、劇団☆新感線の看板女優さん。

東北出身の私が聞いても、心に沁みる津軽弁で、老婆。すごい。

すごいしか出てこない。

「ストリッパーのリーダーと寺泊さんって同一人物だよね?」

「え?まさか。違うよー。あれはさー」

なんて会話が、終演直後の私と友達の会話(笑)。


エドゥアルダ/才原(ナオ先生)/ワニ女/ヨシコ/ファン2…桑原裕子

テレサと同じく、各地を回る巡業ストリッパーで、

サンパウロ出身の日系3世から、

すごいバブリーな香りがする可愛い先生といい、

ファン役もすごいし、癖強めでコメディーセンス抜群。

好きなタイプハート「ポカポカポカ!!」


戌亥辰巳(いぬいたつみ)/金村マネージャー…中村まこと
弱小プロダクションの社長。手腕は詐欺まがいだが、
本物を見極めて業界で戦う意思を持つ。

嫌な役どころが上手いねぇ。

北野波平…西岡德馬
紅白出場連続数十年の、演歌界を代表する大物歌手。
コージとオキナワに若い頃の自分を見ている。

大御所でありながらもおごることなく
「演歌人であるかどうか」という目を常に自分自身に向けている。

いやぁ、テレビで見ると諄いと思うけど(笑)舞台は逆にそれがイイ。

 

ここからがすごい。

何役もやることは、よくあることなんだけど

ここまでやってたか、というのが正直な感想。

「あー、また出てきたよ」感が気にならない。

物語の登場人物として没頭する…というか、後から

「え?同一人物?」と気づく。

これぞ役者の技量じゃないかと

最大級に誉めたくなる情熱。いやはや。

 

執行猶予/警官(肩こり)/サラリーマン

社員/ダメ上司/盆踊り/隻眼…加瀬澤拓未

 

大橋/性病/地縛霊/主婦1/引っ越し屋/ファン1…久保貫太郎

 

陛下/先輩/ビームス/盆踊り/悪巧

通行人/警官(禁煙中)/引っ越し屋/ファン……倉沢学

 

のぞき魔/金貸し/出張中/肩にオウムの男

盆踊り/司会者/通行人/引っ越し屋/ファン6…嶋村太一

 

アイリーン/付き人1/マネージャー/盆踊り/バックダンサー…高山のえみ

 

短足/サラリーマン/社員/失踪中/

店主/盆踊り/マンボ好塚/通行人/

引っ越し屋/ファン5/横丁の住人(何人やってんねん!!(笑))

…寺井義貴

 

橋本/熟年カップルの女/売春婦/盆踊り/通行人/仲居…深澤千有紀

 

放火魔/警官(眼精疲労)/後輩/中古車屋/

盆踊り/作家志望/オカマ…松本亮

 

人殺し/運送屋/社員/盆踊り/引っ越し屋/ファン…三土幸敏

 

米村主任/助平/幻覚/課長/

学生3/盆踊り/引っ越し屋/ファン…村上航

プラネット・ギャラクティカ(紫)/盗撮魔/ヤブ/業界人/

社員/盆踊り/主婦2/メッキ工場長/

引っ越し屋/ファン…進藤ひろし

プラネット・ギャラクティカ(黒)/サラ金社長/痴漢/

歯痛/東京の学生/社員/学生4/盆踊り

引っ越し屋/ファン/横丁の住人…今國雅彦

プラネット・ギャラクティカ(黄)/警官(二日酔い)/夜逃げ

東京の学生/社員/氷室/学生1/

盆踊り/猫背/引っ越し屋/ファン…稲葉俊一

プラネット・ギャラクティカ(青)/未成年/鼻炎/東京の学生

社員/学生2/盆踊り/通行人/引っ越し屋/

ファン/横丁の住人…草彅智文
 

プロデューサー/印鑑屋/サギ

運送屋/社員/盆踊り/通行人/引っ越し屋…曽我部洋士

 

スナックのママ/当たり屋/盆踊り/通行人/仲居/ファン3…溝端育和

 

金貸しの部下/場内整理/博打/

熟年カップルの男/社員/お忍び/

猫を抱く男/盆踊り/どっか/引っ越し屋…熊谷学

 

スタッフ/置き引き/業界人/社員/

印刷屋/盆踊り/通行人/引っ越し屋/ファン…森崎健吾

 

シャオ・イェン/フリーアナウンサー/

バックダンサー/付き人3/高知出身/オツム弱子…後東ようこ

 

プラネット・ギャラクティカ(赤)/付き人2/スリ/

布袋/盆踊り/引っ越し屋/ファン…藤田宏樹

 

ねぇ、働かせすぎじゃない?(笑)

 

【音楽監督】門司肇
【美術】二村周作
【照明】斎藤真一郎
【音響】藤森直樹
【衣裳】髙木阿友子
【ヘアメイク】大宝みゆき
【映像】石田肇
【振付】小林顕作
【アクション】渥美博
【方言指導】草野とおる
【演出助手】相田剛志
【舞台監督】幸光順平
【制作】笠原健一/重田知子
【宣伝】ディップス・プラネット
【宣伝美術・写真・映像】トリプル・オー
【プロデューサー】熊谷信也

【企画製作】TBS
【東京主催】TBS/キョードー東京/イープラス
【大阪主催】MBS/サンライズプロモーション大阪

 

漫画の作中に出てくる「俺節」は
歌:小林ひさし
作詞・土田世紀
作曲・原譲二

劇中の「俺節」は
歌:海鹿耕治
作詞:福原充則
作曲:門司肇

 

5/28~6/18が東京公演(赤坂ACTシアター)

6/24~6/30が大阪公演(オリックス劇場)

「俺節」上演時間は3時間30分(休憩時間20分含)

 

・安のコメント(公式から引用)

今回のお話をいただいて初めて原作を読みました。
不器用だけど一途で、何度つまずいても

必死に喰らいついていくコージの姿が素敵で
カッコよくて、土田さんの熱量と思いを感じました。


あがいても上手くいかないことって、誰にでもあると思うんです。
そこで必死にもがく姿、諦めずに貫き通す心の清らかさや強さは、
人の心を打つ美しさを持っていると思う。
そんな世界観を、まだまだもがいている僕が

コージを演じることで伝えられたら、ものすごく嬉しい。

関ジャニ∞のデビュー曲が「浪花いろは節」で、
もともと演歌には縁があります。

その演歌に気持ちを乗せて、

舞台で目一杯唄えることも楽しみです。

毎ステージ惜しみなく全力を出し切って、
感情が爆発しているような舞台になればと思います。

 

安。すごいさー。

 

・福原さんの公式サイトでのあいさつ言葉。

「リングに上がろうとすらしない人が増えている気がする今、

この作品を通して、お客さんに

「あなたにもSOULとLOVEはありますよね?」と

問うてみたいと思います。」まさしく、それ。問われた。

 

・パンフの高田さんのコメントの中で

「演歌って不思議で、歳をとると、

昔ぼんやり聞いていた曲がすごい応援歌に

聴こえてきたりする」 少しわかった!!

 

・みれん横丁の、いわゆるドヤ街で普通の人生から

はじき出された登場人物ばかりが集うんだけど、

みんな主張があって愛おしいダメ人間(笑)。

とんでもなくダメなのに、やけっぱちになっているような人がいない。

「悪い人のいない、観ていて気持ちが楽なドラマ」のような。

泥臭さ、田舎臭さ、いい意味でもクソもないけど、

きっと臭いんだろうなぁ…というイメージの膨らみ方。

セットもとてもいい。

 

・プロジェクションマッピングもすごい。

 

・憑依、とも違う。感情を沿わせようとするやり方なのか、

コージが痛そうなら、ヤスも痛そう。

とはいえ、演じている時には気づかない。

テレビで観る、安田章大がゲッソリこけてて

安田が魂削られて、コージの世界に持って行かれる、という

別にコージ死んでないけど、心霊なんかである「連れてかないで…」

みたいな気持ちになるから不思議。

 

・通路に降りてきて歌われたら、死ぬ(いい意味で)。

 

・安の舞台は2年ぶりらしい。今まで観た役では

一番、私好みの安田さんでした。

倒れちゃうんじゃ、死んじゃうんじゃないかと(痩せてたし)

心配になるぐらい熱くコージになっていて、

あと10歳若かったら、開始10分で泣いていたと思う(笑)。

 

・シャーロット・ケイト・フォックス。マッサンの人。

カタコトがどこまで本当のカタコトか(笑)謎でした。

原作とは、国が違う。肌の色も違う。

 

・西岡德馬さん、美味しいところ持っていきすぎ問題(笑)。

 

・猫ホテ系役者さんもいっぱいいるのね。

 

・最後の雨のシーン。降ってきた…まだ降らすんだ…

…結構…降らすね……一列目とか大丈夫??(笑)

ってぐらいの雨。

あれだけ歌って、あれだけ感情動かして

あんなに雨当たって…、安、身体だけは…。

 

・場内のACTカフェでは公演中のオリジナルメニュー

 

・方言指導にあたった草野とおるさん。

 

・全員歌が上手い。心にもちゃんと届く魂の歌い方。

「歌は心の叫びである」その作品の本筋が実現されている。

 

・本作オリジナルの「みれん横丁のテーマ」も

「俺節」も耳に…というか、心にものすごい残って抜けない!

抜けたら抜けたで寂しくて仕方ない…

 

ああ、6月末には、コージはいなくなってしまうんだ…寂しい。

 

三時間は長い。と思っていた。

なのに、なんでだろう。

夢中になってた。おかわりしたくなる。

映像化されないなんて、どうかしてる。

一年に一度、繰り返しみたい作品。

 

2017年№.1としちゃいます。