20) 母の赦し 路地の見送り | BIG BLUE SKY -around the world-

20) 母の赦し 路地の見送り

20) 母の赦し 路地の見送り  Make up with Mother, Farewell to the Alley

ヤソートーンでの最終日。
お祖父さんが葬られたワットに、従妹と一緒に出かけた Erika が戻るのを待って、白タクを呼ぶ。
数日前に乗って来た、ウボンラチャターニーの白タクのドライバー氏は、2時間で着きますと応じた。
私が荷物をまとめたところで、Erika と母親の仲直りを後押しするために、叔母さん、従弟妹、従妹の子、一堂皆で Erika の母と義父の家へ向かう。
何十年振りかで会った Erika は、たとえ血のつながりは無くても身内なのだろう。

従妹の子に、今度はいつ来るのと聞かれて、結婚式には呼んでくれよと応じると、背中を叩かれた。
それを見ていた従弟が、บั้งไฟ (ロケット祭り) に来たらいいでしょうねと笑う。
ヤソートーンのロケット祭りは、東南アジアを代表する祭りとして、世界中に知られている。
タイの片田舎のヤソートーンの方が、自分が住む日本の市よりも、世界的には有名なのだ。
従妹の子にそう言っても、日本の方が有名でしょと言って、俄かには理解し難いようだ。


BIG BLUE SKY -around the world--2001_炭火で煮炊き
[炭火で煮炊き,ヤソートーン] (2012)


母の家の前で一堂が見守る中、Erika は玄関を開けて屋内に入る。
玄関先のソファに、初めて見る婦人が座っていた。
従妹によると、Erika の母親の妹に当たる叔母さんだそうだ。
Erika は叔母さんと抱き合って、再会を喜ぶ。
そこに、家の奥から母親が現れて、Erika に声をかけて抱き合った。
二人が和解出来たことに、叔母さん、従弟妹、従妹の子、一堂安堵の表情を浮かべる。

Erika の義父はどうしているのだろう。
周りを見回すと、バイクで帰って来たところと思われる、義父の姿が見えた。
私は Erika の義父に歩み寄り、先日の歓待の礼を言ってお別れの挨拶をした。
義父は穏やかな表情で、別れの挨拶をして握手を交わす。
おそらく義父は、Erika と顔を会わせたくないのだろう、そのまま何処かへ去っていった。

いよいよ、ウボンラチャターニーの白タクが到着する。
โชคดี! (お元気で、幸運を)
Erika の母親、叔母さん一家、近所の Erika の幼馴染のお姉さんと、胸の前で合掌して別れの挨拶を交わす。

皆さんの合掌を見て、掌をぴったりと合わせずに、少し膨らませていることに気が付いた。
イサーンだからかと思ったが、Erika もそうしている。
何度もタイに来ていながら、気付いていなかったことに苦笑する。

白タクが路地を離れるまで、皆さんは手を振って見送ってくれた。
路地の野次馬一堂も、一緒に手を振って見送っていた。


⇒§21 幾分か満ち足りぬ月


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