26) 王国への道 | BIG BLUE SKY -around the world-

26) 王国への道

26) 王国への道  The Road to Kingdom

スワンナプーム空港に着いて、いつものように3階バス乗り場横の喫煙所に向かう。
もうもうたる熱気と砂塵、どこの国の言葉か全く分からない早口の会話、タクシー運転手と警備員の怒号.....
ここで2年前に、フランスのバックパッカーに、マッチをあげたことを思い出す。
今はもうない蘇州シェラトン・ホテルのマッチだった。
その数日後、DS 夫人,AI と一緒にベンチに座って、DS夫人の "今のもう少し前" の物語を聞いた。
旅はいつもここに始まりここに終わる。
遠くまで続く道路と街路灯が、メナムの残照に見える。
数日前と寸分違わぬ展開に杜子春を思い、Erika は鉄冠子が見せる幻影かもしれないと思う。

554番バスに乗ってラーミンタ (Ram Inthra) にほど近いミンブリー (Min Buri) まで来ると、見慣れた景色に地元に帰ってきたような気がする。
ラーミンタのバス停を通り過ぎる時に、路地の見知った顔が見えた。
2年前と寸分違わぬ展開に再び杜子春を思い、Erika は鉄冠子が見せる幻影かもしれないと思う。

時計を見ると 11時、AI は小学校で授業を受けている。
このまま、チャトチャックの北側にあたるバーンケーン (Bang Khen) まで行って、ワゴン車サイズの小さいバスに乗り換えてアユタヤへ向かい、アユタヤ・テクニカル・コマーシャル・カレッジの少し手前でバスを降りて歩道橋を渡り、ゲムの路地のカウボーイ・バーへ行こうかと思う。
ゲムへ行けば、アユタヤの少し欠けた満月と Erika が待っている気がする。


BIG BLUE SKY -around the world--2601_watmahathat
[ワット・マハータート,アユタヤ] (2007)


ありがとう また来て下さいね。
ウボンラチャターニーで横浜にいた時と同じ別れの挨拶を交わし、健康と幸福を祈って手を握り合った。
慈悲深い Erika は尊敬に値する。両手から伝わる善意を感じて、Erika のように性善説で生きたいと思う。

"They say nothing lasts forever. We're only here today. Love is now or never. Bring me far away..... "

諸行無常、諸法無我 .....  まるで終わりから見た夢のようだ。
バスの中で、MLTR の "Take Me To Your Heart" の一節を繰り返すと、Erika の早口が聞きたいと思う。
歩道橋が見える度に、Erika が立っている気がした。


-完-


⇒§27) あとがき・後日談


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