02) 観念奔逸との再会 | BIG BLUE SKY -around the world-

02) 観念奔逸との再会

02) 観念奔逸との再会  Reuniting with Racing Thoughts

3階バス乗り場横の喫煙所から、チェック・イン・カウンターへ向かう。
オレンジ色の揃いのバッジを付けた華人の団体、カートに子供を三人乗せて注意されるドイツ人の親子、ホスト・ファミリーに自己紹介する日本からの留学生.....
カートを節足類のようにつなげて片付ける従業員とすれ違うと、腋臭と香油の混じった熱気が通り過ぎる。
2回鳴ってすぐに切れた携帯を取り出して見ると、Erika からの2年振りの着信だった。

Air Asia のカウンターの前に着くと、Erika が赤いユニフォームの係員と話していた。
Erika は、髪を茶色に染めて真っ赤な口紅を塗り、明るいイエローとグリーンとブルーの太い縦ストライプの襟付きシャツを来て、白いコットンのロングパンツを穿き、シルバーのペディキュアを塗った足には赤いサンダルを履いている。
2年振りに聞く Erika の早口が懐かしい。
私が搭乗手続きを済ませても、早口は止まらない。
躁状態における観念奔逸の激流を止めることは難しい。


BIG BLUE SKY -around the world--0201_漬物の壷
[魚の漬物の壷,ヤソートーン] (2012)


ポケットから煙草を出して、吸う真似をしながら Erika の視界を横切り、もう一度3階バス乗り場横の喫煙所へ行って煙草を吸うと、一本吸い終わる頃に Erika が来た。
Erika は Krong Thip に火を点けると、Air Asia の従業員の応対は Thai Airways と比べて一見丁寧ではないけれども、仕事は頑張って良くやっていることを、途切れることなく話し続ける。
二年振りに会ったことや、どうしてここにいるのかなどよりも、今は Air Asia の従業員のことが重要だと言うように話し続ける。
Erika はとても良い人柄なのだが、観念奔逸が始まると他者のことはどこかへ飛んでしまう。
こうして話し続けている彼女を止めることは難しい。

久し振りに、タイの煙草を一本吸わせてよ。
駄目を承知で少し何か言うと、数秒後に気付くことが有る。
何? 今、聞こえた。
10秒ほどして、私の問いかけに反応した。
このフレーズが出ると、彼女の話しは一旦途切れる。
Air Asia カウンター前でのニ年振りの再会から 20分後にして、ようやく挨拶を交わすことが出来た。


⇒§03) ウボンラチャターニーの上弦月


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