09) 祖父の思い出 | BIG BLUE SKY -around the world-

09) 祖父の思い出

09) 祖父の思い出  Memories of Her Grandfather

お祖父さんは、ผู้ใหญ่บ้าน (プーヤイバーン) でした。
横浜橋のタイ料理屋で、鶏肉を指で骨からむしり取って食べながら、Erika が言った。
プーヤイバーンって何? フライドチキンのように骨を持って鶏肉を食べながら聞く。
Erika の泰日辞典には、村長,区長,町内会長と記されていた。
母語と異なる言語で、自国の語彙を説明することは難しい。
村長,区長,町内会長と書かれていること自体、翻訳のしようがないことを表している。

10代前半の頃、バンコクからバスでヤソートーンへ行って、暗くなってから着いたことがありました。
灯りも無いガタガタの道で、とても寂しいところでした。
どうしようかと迷っていた時に、通りかかったバイクの人にお祖父さんの名前を言うと、プーヤイバーンの孫だねと直ぐ分かってくれて、お祖父さんの家までバイクに乗せてくれました。
暗い道をトットットッ... とバイクで走ってお祖父さんの家に着いた時には、嬉しくて嬉しくて、バイクの人に何回もありがとうと言いました。
お祖父さんも、バイクの人に何回もありがとうと言いました。


BIG BLUE SKY -around the world--0901_叔父の家
[幼い頃の祖父母宅を思わせる叔父の家,ヤソートーン] (2012)


ひらひらと舞い飛ぶコウモリ、油断すると正面から飛び込んでしまう蚊柱、音もなく忍び寄る野犬、軒先に水を打つ主婦、縁台で涼む若い衆.....
一昔前のイサーンの村の夕暮れが目に浮かんだが、気が着くとそれは自分が幼い頃の祖父母の住む集落の風景だった。
Erika と自分の思い出が交錯する。
いつかイサーンへ行きたいね。
そうですね。

5年前の会話が現実になった今、幼い頃の夏休みを祖父母と過ごした家を再訪した感覚に囚われる。
ここで Erika の祖父は、農業を本業としながら路地何本かの代表を務め、一種の直接民主制による会合を主催していた。
それは村長とも、区長とも、町内会長とも取れる役職で、横浜橋で鶏の脂が光っていた泰日辞典の翻訳は、的を得ていたことが分かった。


⇒§10) 竹と炭の家


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